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2020.08.21
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テーマ:読書(8206)
カテゴリ:【読書】未分類

本のタイトル・作者



たゆたえども沈まず [ 原田マハ ]
"FLUCTUAT NEC MERGITUR" by Maha Harada

本の目次・あらすじ


1886年―――華の都・パリ。
開成学校の諸芸科でフランス語を学び、首席で卒業した加納重吉は、夢にまで見た憧れの地に降り立った。
彼を呼び寄せたのは、パリを席捲しているジャポニズムを発信し、浮世絵などを扱う「若井・林商会」の林忠正。
重吉は、忠正のもと、恋焦がれた地で画商を始める。
やがて彼は、フランス芸術アカデミーの画家たちの絵を扱う「グービル商会」の若き支配人、テオドルス・ファン・ゴッホと出会う。
異端の「印象派」に心奪われ、日本の浮世絵に魅入られた彼は、ある日、みすぼらしい身なりの兄を連れ若井・林商会を訪れた。
フィンセント・ファン・ゴッホ。
―――絵を描くことしかできず、絵を描くことさえ叶わない画家。

引用


忘れないで。―――僕がひとりでないのと同じく、兄さんはひとりじゃないんだ。
僕には、兄さんがいる。兄さんには、僕がいる。
どうか、それを忘れないで―――。


感想


2020年読書:138冊目
おすすめ度:★★★★

読み始めて、18世紀末のフランスを舞台にした話と知り、「あー、日本人が海外で苦労した系か…」と分厚さも相まって数ページで放置していたのだけれど。
その後腹をくくって読み始めたら、引き込まれて息もつかず2時間で読破。

日本人も出てくるけど、メインはフィンセントとテオの兄弟の話。
タイトルの「たゆたえども沈まず」は、何度も氾濫を繰り返してきたセーヌ川とパリの街、またそれを描こうとしたフィンセントのことを指す。

私はもともと、ゴッホの絵があんまり好きじゃなかった。
美術の資料集に載っていた「星月夜」はわりかし好きだったけれど、どれも田舎臭くて、陰気で。
でも、オランダでゴッホ美術館に行って、一気にファンになってしまった。
暗い。めちゃくちゃ暗い。
でもそれは、明るさの影。
痛い。苦しい。助けて。泣きたい。悲しい。寂しい。
とても明るい絵でも、そんな声が閉じ込められて聞こえてくる。

ゴッホ美術館で一番心を奪われたのは、作中にも出てきたこの絵。



本物はもっと鮮やかで、透き通るように青い。
すこんと抜けた、4月の終わりから5月にかけての、透明な空みたい。
はじめ、桜の花かと思って近寄って行って、アーモンドの花だと知る。



オーディオガイド(ゴッホ美術館には日本語もあるのだ)で、この絵は生まれたばかりの甥―――同じくフィンセントという名の―――のために描かれたのだと知る。
それなのに、なぜだろう。
誰かが死んだ日の朝の空を思い出した。

何かが終わっても、まるで無関係に花は咲いて、世界が続いていく。
生まれたばかりの命が、時の流れの中、瞬きの間に消えることを知っている。
この世界が美しいばかりではないことも。苦しみに満ちていることも。
それでも、ようこそ、この世界へ。
花の咲き誇るその瞬間を切り取って、その空の明るさを、澄んだ空気を閉じ込めて。
世界の美しさに目を見張った、そのことを覚えていて。

オーディオガイドを聞いていて、弟テオの献身と深い愛、彼らが分かちがたく果実の半分ずつであったことを知る。
彼のことをもっと知りたいと思っていたのに、すっかり忘れていた。

この本は、フィクション。
でもだからこそ、テオに思いを寄せられる。
彼が幼い息子を残しこの世を去っていたことを、兄の後を追うようにいなくなったことを、はじめて知った。
巻末にたくさん載せられていた参考文献。これも読んでみたいな。

原田マハさん、はじめて読んだ気がする。
美術館で勤務されていたのですね。そして1962年生まれで、私が想像していた「30代のボヘミアンなねーちゃん」というイメージが誤りであったと気付く。
ほかの作品も読んでみたくなりました。


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最終更新日  2020.08.21 12:15:10
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