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2021.09.25
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テーマ:読書(8208)
カテゴリ:【読書】未分類

本のタイトル・作者



戦場の秘密図書館~シリアに残された希望 [ マイク・トムソン ]

"SYRIA'S SECRET LIBRARY
The true story of how a besieged Syrian town found hope"
by Mike Thomson (2019)

本の目次・あらすじ


アムジャド
シリアの「アラブの春」
バーシトとアナス
ダラヤに残った若者たち
本の救出作戦
シハーダと「評議会」
図書館、開かれる
サーラと子どもたち
希望の壁画家、アブー=マーリク
歯学生、アイハームの挑戦
本を愛する兵士ウマル
図書館、爆撃される
どんな本が好きですか
アーイシャの夢は
限界
ウマルの死
図書館との別れ
イドリブ県
図書館の最後

引用


あと数時間もすれば、街の人々がやってくるだろう。破壊された街並みをぬけ、狙撃兵の攻撃や爆弾で命を落とす危険をおかしながら。
それでも人々はここにやってくる。
本を読むために。
なぜならここは、シリアの街ダラヤの“秘密の地下図書館”だから。


感想


2021年読書:208冊目
おすすめ度:★★★★★

すごかった。
すごかった。
すごかった。

もう、それしか言葉がない。
元は、BBCの特派員記者によるドキュメンタリーラジオ番組の書籍化。


シリアの秘密図書館 瓦礫から取り出した本で図書館を作った人々 [ デルフィーヌ・ミヌーイ ]

大人向けの本はこちら。
私はたまたま、児童書版を手に取った。
主な漢字にはふりがなが振ってあり、解説も丁寧で良かったです。
児童書版でも、大人が読んでもまったく違和感ない。

シリア。
名前だけは聞いたことがある。何かもめていることも知っている。
ただ、それだけ。

本の冒頭に、できごとのまとめがあった。

2010年に北アフリカ・チュニジアの反政府デモをきっかけとした独裁政権への抗議活動が始まる(アラブの春)。
2011年、シリアの南部の街ダルアーで、少年たちが政権批判の落書き。
その後、シリア全土でアサド政権に対する抗議デモが始まる。政権側が弾圧し、内戦が始まる。
2012年、政府軍にダラヤの街が攻撃され、補給路を断った包囲が始まる。
2016年、市民は政府から48時間以内の退去を求められる。

この本の舞台であるダラヤは、4年もの間、ライフラインをずたずたにされ、食料補給路を断たれ、無差別爆撃を受けていた。
そこにいたのは、市民。逃げなかった人たち。

彼らは自治組織を作り、公共サービスを自ら提供運営しながら、瓦礫からの本の救出と、知識の普及を始めるのだ。
1日に1杯、薄い豆のスープを飲むことが精いっぱいの環境で、命を懸けて、本を収集する。
なぜそんなことができるの?そんな最悪な状況で。

彼らは街中で作物を育て、同時に本を集めた。
体に栄養が必要なように、頭や心にも栄養が必要であるから。
体には食べ物を、魂には本を。

逃げた人々の家から持ってくる際は、収集場所と名前を記載し、通し番号を振って管理。
高価で貴重な本を、いつか持ち主のもとへ返せるように。
本のジャンルも題材も問わない。キリスト教すら禁止しない。
検閲にさらされてきた政権のもと育った彼らは、その必要性を理解している。
違う意見の本を除外することは、無知を助長するから。
大切なことは、異なる意見に触れ、自分の頭で考えることだから。

本は雨のようなものだ、と本に登場するバーシトは言う。
すべての者に分け隔てなく降り注ぎ、その土地に知恵が花開く。

本にあふれた日本の日常で、読もうと思えばいくらでも読めるこの環境で、多くの人は本を読まない。
それがどれほど恵まれたことであるか。
そしてどれほど、土地を枯らしていることか。

本を読む。本を読む。本を読む。
雨が降る。土を耕す。種が運ばれる。鳥が訪れる。
その芽が育つことを楽しみに。
本を読む。本を読む。本を、読む。

彼らは街を退去し、難民キャンプに居を移す。
そしてそこで、移動図書館をはじめるのだ。
彼らは自分たちの街の人だけでなく、移住先の皆に本を届ける。
よそ者、が歓迎される。
コミュニティーが出来る。

本を読む。雨を降らせる。種をまく。
そのために必要なこと。
表現の自由、言論の自由。
読み書きができること。蓄積された知識にアクセスできること。
自分の頭で考えられること。

知識を得るとは何か、それを守るとはどういうことか。
すごく考えさせられた本だった。

著者は脆弱な現地のインターネットを通じ、スカイプやワッツアップで取材を重ねる。
本について語る人々。後ろから爆撃の音が聞こえる。窓の外に切り取られた世界。
回線が切れると世界は消える。
そのことに著者は違和感を覚える。

あとがきで訳者がKnK(認定NPO法人「国境なき子どもたち)の広報者にたずねる。
「遠い日本で、わたしたちにできることは?」
答えはこうだ。

「『シリア難民』という言葉でひとくくりにしたとたん、見えなくなるものがあります。どうか、自分と同世代の、大切な名前を持つ一人ひとりのシリアの子どもたちの顔を思いうかべ、もしも自分だったら……と想像してみてください」


私は大人だから、その先に行くことができる。
そのことを考えている。
何もしていない、ということをどうしようもない債務を抱えているように思いながら。

これまでの関連レビュー


海にはワニがいる [ ファビオ・ジェーダ ]
西への出口 [ モーシン・ハミッド ]


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最終更新日  2021.09.25 00:00:17
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