ジミー・スミス 『ザ・キャット(The Cat)』
こってり系オルガン盤(その2)~ひと捻りが効いたジミー・スミスの代表盤 前回の『クレイジー・ベイビー』に続いて、オルガン・ジャズの第一人者の典型作としてお勧めの盤がこの『ザ・キャット(The Cat)』である。1956年からブルーノートで多数の録音をこなし、数々のアルバムおよびシングル盤を発表したジミー・スミスだったが、売れっ子となった彼は、やがて大手レコード会社からのオファーを受ける。結果、1963年からはヴァーヴへと活動の場を移すことになった。以上のような移籍の経緯(“Incredible”というニックネームがそのまま引き継がれていることからして、この「引き抜き」は、ある種円満だったのではないかとの見方がなされている)を経て、メジャーなレーベルで録音され、彼の代表作として知られるようになったのが、本盤というわけである。 『ザ・キャット』の特徴は、何といってもラロ・シフリンのアレンジと指揮である。このアレンジのためにホーン・セクションは総勢15名ほどが集められた(ちなみに、その中にはサド・ジョーンズも含まれている)。確かに、弱小のブルーノートではできなかった芸当である。とにかく、管楽器に人をたくさん集め、非常に厚みのあるサウンドに仕上げられている。オルガン演奏がただでさえ音的に厚い上に、これだけのホーンを重ねたら、どうなるか。結果は、一層“こってり”になることは容易に予想がつくであろう。とはいっても、落ち着いてオルガンを聴かせたい部分ではホーンを抑え気味にし、盛り上げる部分では巧妙に両者を重ねるといったアレンジの工夫が随所でこらされている。 実は、この企画の仕掛人は、当時ヴァーヴにいた大物プロデューサー、クリード・テイラー(Creed Taylor)という人物である。彼は、ベツレヘム、インパルスなどを渡り歩き、この当時はヴァーヴで仕事をしていた。また、後にCTIレーベルを興すことになった人物でもある。テイラーの発案は明確なコンセプトで、“オルガンとビッグ・バンドでブルースをやる”というものであった。それゆえ、曲目を見てもわかるように、ブルースと名のついた曲が複数収録されている。 以上のように、編成としてはイレギュラーな性質を持つアルバムで、どのジミー・スミスのアルバムを聴いても同じ調子というわけではない。無論、他のジミー・スミスのアルバムを聴けばこのようなホーン・セクションがいつも盛りたてているわけではないが、それにもかかわらず、本盤がしばしばジミー・スミスの代表作として捉えられてきたのは、何よりも演奏の素晴らしさと曲のよさにあるのだろう。とどのつまり、本盤は、ストレートなオルガン・ジャズの王道に、ホーン・セクション導入という“ひと捻り”が加えられた1枚といったものというわけである。 個人的な好みでいくつか曲に言及しておくと、2.「ザ・キャット」は、これぞ王道のファンキーでグルーヴの利いたオルガン演奏を楽しむことができる。3.「ベイジン・ストリート・ブルース」、7.「ドロンのブルース」、8.「ブルース・イン・ザ・ナイト」は、いずれもホーンのアレンジとオルガンの聴かせどころをしっかりと組みたてたもので、腰を落ち着けてじっくり楽しみたい向きには最適だろう。何よりも勢いを楽しみたい人には、6.「セント・ルイス・ブルース」がいい。あまり注目されない曲だけれど、本盤の一つの聴きどころだと思う。[収録曲]1. Theme from “Joy House”2. The Cat (from MGM Motion Picture “Joy House”)3. Basin Street Blues4. Main Title from “The Carpetbaggers”5. Chicago Serenade6. St. Louis Blues7. Delon’s Blues8. Blues in the NightJimmy Smith (org)Lalo Schifrin (arr)Ernie Royal, Bernie Grow, Jimmy Maxwell, Marky Markowits, Snooky Young, Thad Jones (tp)Billy Byers, Jimmy Cleveland, Urbie Green (tb)Tony Studd (b-tb)Ray Alonge, Jimmy Buffington, Earl Chapin, Bill Correa (flh)Don Butterfield (tu)Kenny Burrell (g)George Duvivier (b)Grady Tate (ds)Phil Kraus (perc)1964年4月27・29日録音参考記事リンク(ジミー・スミスの他のアルバム): 『ミッドナイト・スペシャル(Midnight Special)』(2009年8月2日の記事) 『クレイジー・ベイビー(Crazy! Baby)』(2010年2月27日の記事) [枚数限定][限定盤]ザ・キャット/ジミー・スミス[CD]【返品種別A】↓ ランキング(3サイト)に参加しています。どれか一つでもありがたいですので、“ぽちっと”クリックで応援ください。よろしくお願いします! ↓