テーマ:Jazz(1961)
カテゴリ:ジャズ
10人編成で聴くソニーのアルト演奏 『クールの誕生(Birth Of The Cool)』といえば、マイルス・デイヴィスが40年代末に吹き込んだ有名な9重奏団による作品である。プレスティッジ盤の本作『ソニーズ・ドリーム』には副題がついていて、正確には『ソニーズ・ドリーム(新クールの誕生)(原題: Sonny's Dream (Birth Of The New Cool))』とある。録音は1968年だから、マイルスから20年近く経過しており、二番煎じにしては遅すぎる。しかも、マイルス盤『クールの誕生』を期待して聴くならば、見事に裏切られる演奏内容なので、これから聴くという人はこの副題は無視した方がいいかもしれない。 ロサンゼルスで録音された本作は、全曲がホレス・タプスコットによる作編曲で、10人編成のオーケストラ形式で演奏されている(詳しいパーソネルは下記のデータを参照)。要するに、『クールの誕生』との共通点はこのオーケストラルな部分ということになる。つまり、大人数編成で編曲モノをやっているというだけの共通性。演奏内容はほとんどがソニー・クリスのソロを中心としたもので、そのプレイは"クール"というよりむしろ"ホット"だといった方がいい。 以前、『ゴー・マン』の項でも書いたように、ソニー・クリスのアルト・サックスはいわゆる"パーカー(チャーリー・パーカー)系"で、軽妙で時に甲高い音も出すが、実はその音の中に憂いを湛えた"揺れ"を含むものである。1950年代に名作を多く残した彼にとって、1968年の本盤はやや遅い時期(1977年に死去、ピストル自殺とされる)の録音だが、上記の音の特徴は基本的に変わりない。 この音がオーケストラ・サウンドの間で響くのはなかなか聴いていて心地よい。この観点からして最高なのは、1.「ソニーズ・ドリーム(ソニーの夢)」であり、さらには3.「ブラック・アポスルズ(黒い使徒たち)」(この曲ではテナーのテディ・エドワーズもソロをとる)、6.「サンディ・アンド・ナイルス」(こちらはトランペットのコンテ・カンドリのソロも含む)にも同様の心地よさがある。 意外に面白いのは2.「バラッド・フォー・サミュエル(サミュエルのためのバラード)」や5.「ドーター・オブ・コーチャイス(コーチャイスの娘)」で、これらではソニー・クリスはソプラノ・サックスを吹いている。アルトをソプラノに持ち替えても、やはりソニー・クリスはソニー・クリスなのだということがよくわかる。もっとも、筆者はアルトを吹いたときの彼の方が自由に吹けていて、ソプラノの時は少し無理している感じが拭えないという気がしないでもないが、それにしても、単なるパーカーのコピーではない独自色がソニー・クリスにあるのだということがよくわかる。 [収録曲] 1. Sonny's Dream 2. Ballad For Samuel 3. The Black Apostles 4. The Golden Pearl 5. Daughter Of Cochise 6. Sandy And Niles Sonny Criss (as, ss) David Sherr (as) Teddy Edwards (ts) Pete Christlieb (bs) Conte Candoli (tp) Dick Nash (tb) Ray Draper (tuba) Tommy Flanagan (p) Al McKibbon (b) Everett Brown Jr. (ds) Horace Tapscott (arr.) 録音: 1968年5月8日 【メール便送料無料】Sonny Criss / Sonny's Dream (輸入盤CD) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2016年02月04日 22時37分48秒
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