カテゴリ:洋ロック・ポップス
『ミスフィッツ』と双璧を成すアリスタ時代の秀逸盤 ザ・キンクス(The Kinks)は、ビートルズ、ローリング・ストーンズ、ザ・フーと並ぶ英ロックの4大バンド。とはいえ、ザ・キンクスとザ・フーはどうも日本での受容度が低く、「キンクスと言えば、ユー・リアリー・ガット・ミー」、「ザ・フーと言えば、マイ・ジェネレーション」みたいな安直な図式のイメージが強い(それはそれで一つの典型を表してはいるが、これがすべてかと言うと実際にはまったく違う)。その一方で、少数のコアなファンによってキンクスのコンセプト・アルバム群(過去記事(1) 、過去記事(2))が高く評価されている。結果、コンセプト作群以降の諸作は、なおのこと忘れ去られがちになる。 キンクス(というかレイ・デイヴィス)は、1960年代後半から10年ほどコンセプト・アルバム群を作り続けたが、それらは1975年の『不良少年のメロディ~愛の鞭への傾向と対策(原題:Schoolboys in Disgrace)』によって終わるとされる。同作品のリリース後、キンクスはRCAレーベルからアリスタへと移籍し、アリスタで最初にリリースしたのが本作『スリープウォーカー(Sleepwalker)』(1977年)である。こうした経緯から、本盤とこれに続く『ミスフィッツ(歪んだ映像)』(1978年)は、“キンクスのロックン・ロールへの回帰のアルバム”という位置付けが一般的になされる。 確かに、アルバムとしての明確なコンセプトというかストーリー性は、それまでの諸作のようではない。けれども、それは以前のコンセプト・アルバム群を支配していた“音の色彩”がなくなったという意味ではない。“ロック・サウンドに回帰”と言われると、何か初期(「ユー・リアリー・ガット・ミー」に代表される)の音に戻ったかのようなイメージを与えてしまうが、実際のところはまったくそうではない。むしろ、サウンド的にはコンセプト・アルバム群の時代の流れを引き継ぎ、その時代に熟成された抒情性がそのまま継承されていると筆者は感じている。 例えば、1.「ライフ・オン・ザ・ロード」からもそのことはよくわかる。ギター・サウンドが小気味よく、ノリのいいナンバーではあるが、イントロ部分(曲の終盤にも同じような箇所がある)の抒情的な雰囲気を醸し出す盛り上げ方は、やっぱり“真っ直ぐにはロックしていない”ことを示している。つまりは、コンセプト・アルバム時代の上に成立した“発展型キンクス”の音がこのアルバムにはある。その音の核となっているのは、憂いを湛えたギター・フレーズと表情豊かなヴォーカルだと思う。 他に表題曲の3.「スリープウォーカー」や4.「ブラザー」など、いずれかのコンセプト・アルバムのストーリーの中に組み込まれていたとしても違和感のない曲が多い。『ミスフィッツ』の項でも書いたように、この時期のキンクスはぱっとしないイメージで捉えられてしまっているけれども、個人的には結構好きで、特に本作『スリープウォーカー』と次作に当たる『ミスフィッツ』はもっと広く聴かれてしかるべきキンクス作品だと思う。 [収録曲] 1. Life on the Road 2. Mr. Big Man 3. Sleepwalker 4. Brother 5. Juke Box Music 6. Sleepless Night 7. Stormy Sky 8. Full Moon 9. Life Goes On ~以下、現行CD(『スリープウォーカー +5』所収のボーナス・トラック) 10. Artificial Light 11. Prince of the Punks 12. The Poseur 13. On the Outside -1977 mix- 14. On the Outside -1994 mix- 1977年リリース。 ![]() スリープウォーカー +5/ザ・キンクス[SHM-CD]【返品種別A】 下記3つのランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、ひとつでも“ぽちっと”応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓ ↓ ![]() ![]() ![]() お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2016年01月24日 22時59分18秒
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