カテゴリ:神経症の成り立ち
バイ菌がついたのではないかと何回も手を洗う。
鍵がきちんとかかっていないのではないかと何回も確認する。 ガスの元栓や電気のスイッチを間違いなく切っているのが気になって何回も確認に戻る。 これらは強迫性障害といわれるものです。強迫神経症の中の強迫行為ともいいます。 この症状に対して一般的には、薬物療法と認知行動療法が主流になっています。 薬物療法はSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害剤)などの薬を使う。 脳内の神経伝達物質セロトニンを増やして、強迫観念と強迫行為が軽減されるとされている。 副作用が比較的少なく、長期間服用できるといわれている。 認知行動療法では、その中の「曝露反応妨害法」が使われている。 曝露法とは、不安や苦痛をもたらすものに敢えて立ち向かわせる。 汚いものに敢えて触らせてみる。つまり恐怖突入させるのである。 反応妨害法とは、強迫衝動が起こっても強迫行為をしないように我慢させる訓練をさせるのです。森田先生の入院森田療法でもそういうことをされていた。 その例を11月30日の投稿で紹介している。でもこれはかなりの抵抗がありそうです。 最近では、長期間入院して、付きっきりで治療することは物理的に難しくなっている。 したがって反応妨害法は実質難しい療法である。 他には何があるか。私は森田療法が役に立つと思っている。 詳しくは「強迫神経症の世界を生きて」(明念倫子 白揚社)を参考にしていただきたい。 それに加えて、最新の脳科学の知識も強迫性障害に役立つと考えている。 それによると、五感で感じた感覚は、まず体性感覚野、聴覚野、視覚野になどに送られる。 その情報は大脳皮質の運動野、感覚野に送られて、その時、その場に対応した適切な動きを行うようになっている。 その時の行動、物の認知には側頭連合野が大きくかかわっている。 側頭連合野は鍵が閉まっているか、電気のスイッチが切れているか、ガスの元栓が閉まっているか。手がきれいになったかどうかを瞬時に判断している。 そういう順序でスムーズに流れてゆけば確認行為で悩むことはない。 ところが強迫行為をする人の脳の活動部所はそれとは少し異なっている。 前頭眼窩面、背外側部などの部位が、活発に働いていることが分かっています。 脳に電極をあてて脳波を調べると分かるのである。 これらは前頭前野といわれる部分にある。これがクセものなのである。 もともと前頭前野は、目標を設定して、計画を立て、論理的で順序だった建設的、生産的、創造的な思考を司っています。 理性的な判断や決定を必要とする場合に、もっとも活発に活動する部署です。 これは人間が他の動物と大きく違う部署です。 この回路に持ち込まれた案件は、今までの学習、知識、経験、体験、体得、社会規範、ルールなどを参考にして一番ふさわしい答えを出そう試行錯誤しています。 ああでもないこうでもないとさまざまに検討を加えられます。 無意識的ではなく意識的な働きになります。だから結論を出すまで少し時間がかかります。 そしていくつもある選択肢の中から、その時、その場にもっともふさわしい行動や決断を導き出しているのです。 強迫性障害の人は、普通の人が当たり前にできていることがなかなかできません。 それは五感で得た情報を前頭前野に送り込んでいるからです。 前頭前野に送られると様々な角度から検討を始めるようになります。 たとえば運転技術、クロールの泳ぎ方、箸の持ち方、自転車の乗り方、キャッチボールのやり方など思い出して下さい。一旦やり方を覚えたものは前頭前野の出番はありません。 運動野、感覚野などの部署が適切に指示を出して間違いのない動きをするようになっているのです。 その情報を前頭前野に送ると、今まで無意識に正常に行動できていたものが、改めて意識化されて、ああでもないこうでもないとやりくりするようになるのです。 それは混乱を引き起こして、日常生活に支障を起こすようになります。 強迫性障害の人はそういうことが自分の脳の中で起きているという自覚を持つことが必要だと思います。 自覚を持てるようになると、今強迫行為をする思考回路に入っていると自覚しながら強迫行為をしているということになります。客観的に見るということが大切なのです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2016.12.13 06:57:00
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