カテゴリ:森田理論の基本的な考え方
「新版 神経質問答」に、平常心是道についての説明がある。
森田先生が、弁護士をしている心悸亢進発作の患者を診察された。 その人は10余年来禅をやり、公案を100も通過したとの事である。 「平常心是道」というのは、この人からはじめて聞きました。 この人がいうのに、家で座禅をするときには、すぐ「平常心是道」になるが、電車の中で発作の起こった時にはどうしても平常心にはなれないとのことである。 この人に対して森田先生は次のように説明されました。 「平常心」という文字から察すれば、それは「自然の心」という意味ではなかろうか。 死は恐ろしい、電車の中で今にも死にはしないかと思うときは、当然不安である。 そのあるがままの心が、すなわち平常心ではあるまいか。 電車の中でその恐怖心そのままになりきって、逃げだしたり、交番や病院に駆け込んだりしないで、ジッと忍受していれば、そのまま発作は経過して苦悩は霧散霧消する。 これが「平常心是道」であって、そのとき心悸亢進発作はたちまちに全治すると教えましたけれども、その人は残念ながら私のいうことがよく理解できなかったのであります。 神経症は器質的な病気ではない。 不安、恐怖、違和感、不快感にとらわれて、精神交互作用により蟻地獄に陥った状態である。 精神的な葛藤や苦痛は相当なものである。ある意味器質的な病気よりもきつい。 薬物は不安を軽減する効果はあるが、不安などを根こそぎ取り去ることはできない。 神経症に陥ると前後不覚となりあわてふためく。 私は神経症を治すためには森田理論の学習をお勧めしたい。 森田理論は、基本的に仲間とともに学習していく。 一人で学習していても、どこで認識の誤りを起こしているのか自覚することは難しい。 仲間と学習することで、認識の誤りに気付くことができる。 次に森田理論は系統立てて学習することが有効です。 まずは基礎的な学習です。これに1年ぐらいかける。 神経症とは何か、神経症の成り立ち、神経質の性格特徴、感情の法則、行動の原則、認識の誤りです。 基礎的な学習が終わりましたら、森田理論を俯瞰する学習に取り組みます。 私の学習経験から言えることは、森田の考え方を十分に理解するためには、森田理論の全体像、森田理論の枠組みを理解することが有効でした。 これは遊園地などの巨大迷路に入るときに、丘の上からおおよその脱出ルートを把握しておくようなものです。 森田理論は大きな4つの柱から成り立っています。 「生の欲望の発揮」「欲望と不安の関係」「かくあるべしの発生と苦悩の始まり」「事実本位の生活態度の養成」です。 本格的な学習に取り組む前に、4つの相互の関係性を理解しておくということです。 その関係性を図示したものがありますから、それを手元に置いて、学習しているところを絶えず認識していることが大切です。そうしないと森に入って、個々の木のことはよく知っているが、森田理論で症状を治すということはどういうことなのか、あるいは神経質性格を活かして生活するとはどういうことなのかが全く見えてこない。 つまり森田のキーワードはよく分かっても応用や活用ができないという弊害が現れてくるのです。実にもったいないことになるのです。 森田理論全体像が理解できれば、次は本格的に4つの柱を深耕していきます。 また森田にはキーワードがたくさんありますので、それらを学習して肉付けしていく。 これらは応用編の学習という位置づけに当たります。 応用編は2年目に取り組む課題として推奨しています。 ポップ、ステップ、ジャンプのステップに当たります。 そして3年目は、森田理論を生活面に応用・活用するという課題に取り組むようにするのです。私はおおむね3年計画で取り組むことを推奨しております。 3年というのは長いようですが、人生90年時代といわれていますから、わずかな期間だと思います。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2020.07.17 06:47:56
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