カテゴリ:人間関係、不即不離
藤崎達宏氏のお話です。
幼稚園の年長さんの頃です。 戦車のプラモデルをもらった私は、喜んで組み立てていましたが、すこし難しい作りだったので父親に手伝ってほしいと頼みました。 しかし、「設計図をちゃんと見ればできるはずだ」とガンとして断られました。 私は不貞腐れながら自分で組み立てましたが、やはりモーターのスイッチがうまく接着できなくて動かない戦車ができあがりました。 しかし、翌日、父親がまったく同じプラモデルを買ってきてくれたんです。 そして、「もう一度設計図をよく見て組み立ててみろ」と言って渡されました。 私はもう一度チャレンジし、見事成功。 モーターで戦車が動いた時の感動は今でも忘れられません。 技術屋の父親からすれば、手伝うことは、いとも簡単だったと思います。 しかし、それをせずに、自分で組みあげた喜びを私に勝ち取らせたのです。 (モンテッソーリ教育で自信とやる気を伸ばす 藤崎達宏 三笠書房 38ページ) 相手がすぐに解決できないような問題を抱えているとき、周りで見ている人がお助けマンとして加勢することがあります。 これは一見親切なことをしているように見えますが、相手の成功体験の目を刈り取っていることになります。つまり親切の押し売りをしていることになります。 小さい子どもは服を着る時ボタンをすぐに取り付けられないことがあります。 その時親が「もたもたしないで早くしなさい。時間がないのよ」と言って急かすと成功体験という楽しみを逃してしまうことになります。 入院中の河原宗次郎さんのお話です。 庭におられた森田先生が、「河原君、その植木鉢をのけなさい」と言われた。 河原さんは、「ハイ」と、すぐ大きなしゅろ竹の植木鉢を抱えて、すこし離れた処へ置きかえた。 ところがまた、「河原君そこはいけない」と言われたから、再び「ハイ」といって、重いその植木鉢を、反対側に置きかえた。 私は力を入れつづけたので、汗ばんできた。呼吸もはげしくなった。 それでよいといわれるかと思ったら、叱るようにそこはダメだと指摘されてしまった。 また「ハイ」といって、植木鉢を抱きかかえたもののどこに置いてよいかわからず、そのまま立ち往生し、頭の中が混乱してしまった。 しばらくの間は、恐ろしい先生の前に、棒の如く立ったまま、のぼせてしまったのである。 森田先生は、そのまま奥へ行ってしまわれた。 私ははっきりと指示を出して下さらない先生を恨めしく思った。 河原さんは、今にして思えば、しゅろ竹は日陰に強く青々とした葉を鑑賞するものであるから、玄関先とか、事務所とか、喫茶室の片隅などに置くのがふさわしいことが分かった。 それを、日本式の庭園の真ん中であっちこっちに移動してみても、森田先生の気に入るはずもなかったといわれている。 森田先生にしてみれば、置き場所を指示すれば訳もないことだが、その人から自分で答えを見つけるという楽しみ、成功体験を奪ってしまうということを考えられていたのだろう。 過保護や小さな親切の押し売りは、相手の成長を妨げるということだ。 (形外先生言行録 51ページより要旨引用) ![]() 道後温泉 からくり時計 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2023.07.04 06:20:08
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