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2008年10月17日
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カテゴリ:外国映画 あ行
映画のテーマは「家族回帰」なんだと、思います。

アメリカが今まで売りにしてきた、物質文明とセックスを否定する映画。

大学を卒業した息子クリスにポンと車を買い与える親。車も服も家も食べ物も豊富にあるけれど、いごこちのよい家庭だけはなかった。
夫婦のセックスを中心にして出来ているアメリカの家族構成は、子供にとっては楽しいものではないのではないでしょうか。

          into the wild

大学を卒業したクリスは、家を出て、クルマもすて、お金も燃やし、行方をくらませてしまう。消息不明の息子を探してはらはらする両親とはうらはらにバックパッカーとなってアメリカ中を旅していくクリス。けれど、二年後、アラスカの荒野で死体となって発見されたのでした。

いつも夫婦喧嘩ばかりしている両親と家庭にいやでいやでしょうがなかった主人公クリス。

日本ではアメリカのヒッピーなんかは有名なんだけど、その他にもそういう脱物質文明、脱キャリア社会という意識の人たちが群れて暮らす村があって、映画の中でクリスは、アメリカのそういういろんなところを旅して訪れていきます。

物が豊かなこと、セックスすること、アメリカではメジャーなこういうことを嫌だなと思うアメリカ人もまたいるのではないかと思うのです。でも、そういう人たちはアメリカの中では、マイノリティーなわけです。そういう人たちが、集まって住んでいる村や、放浪者たちが、アメリカには、ある程度いるようで、クリスは旅の途中でそういう人たちに何人も出会い、知り合い、仲良くなったりします。

途中なかよくなった中年の夫婦としばらく旅するクリス。けれど、テントの中でセックスしている夫婦の声を外で聞いていたクリスは、次の朝旅立ってしまいます。

しりあった16歳の少女からセックスを求められるのだけれど、クリスは、拒否するのです。

今までのアメリカの若者の映画なら、旅に出た少年は、いろんな人と出会いながら成長し、少女と知り合ってメイクラブをして、放浪生活をし、バイトをし、荒野でキャンプをしたのち、故郷の我が家に戻ってくる。そういうストーリーだったと思うのです。

けれど、この映画の中で、クリスは、アメリカの物質文明もセックス文化も否定しています。

幼い日けんかばかりしていた両親。結婚しているのにクリスの母と同棲し、自分たち兄弟を生んで暮らす父。実は私生児だったとしらされるクリス。そこには、セックスをする夫婦を核としたアメリカの代表的な家族のあり方があります。

実は、親のけんかも親のセックスも子供はいやなんですよね。

日本では逆に夫婦よりも子供を中心とした家族構成があるわけで、アメリカとは逆に子供を大事にするあまり夫をないがしろにする奥さんたちがいます。それはそれで、やっぱり、よろしくないとは思いますが、まあ、どっちもどっち。

親中心でもなく、子供中心でもなく、バランスのとれた家族のあり方って難しいです。

父は大学をでて、キャリアも積んだし、ビジネスでも成功して、アメリカ人としては普通だと思いますが、夫婦喧嘩の耐えない家庭であったことで、クリスにとって、ビジネスで成功しても、お金持ちになって、幸せににはれないのだと実感させてしまったのでしょう。

こんな家庭で育ったために、セックスにも、ものの豊かさにも、働くこと、出世することにも、希望を見出すことの出来ないクリスは、放浪の末にアラスカの荒野に行き着きます。嫌なものを全部排除した生活はアラスカの荒野で暮らすことしかなかったということです。

私も若い頃、嫌なことがあると、「砂漠に行きたい」とよく思ったことがあるので、なんとなく分からないでもないのです。

アメリカにはたぶん、こんな風に破天荒な冒険の旅に出て、のたれ死んでしまって結局親の元に帰ってこなかつた青年たちが、結構いるのかもしれません。

クリスが途中で知り合った中年の夫婦もやはりたった一人いた息子が旅に出たまま帰らなかったのです。その息子もまた両親の勝手気ままな暮らしぶりや、子供への配慮のない夫婦関係に嫌気がさしたのではないのかなと思います。

日本であれば、子供にきずかれるような夫婦での交渉などしないものです。それに、日本では16世紀に既に「わび」、「さび」という文化が生まれていて、あまりにも豪華であることにも、ものの豊かさにも、逆に「むなしさ」を感じるという意識があり、過渡の贅沢をきらうという考え方があります。これは、日本の社会では、結構メジャーの思想です。

けれど、それは、アメリカ社会ではマイナーな意識であり、そういうことを感じ取ってしまう人たちはマイノリティーとして、生きづらいのかもしれません。だから、都会や企業社会を抜け出して、同じ考え方のひとたちで、脱文明的な暮らしをする村があるのでしょう。

大学を出て、大成し、経済的には豊かに暮らしながら、妻をすてて、愛人とくらす父、喧嘩ばかりしている両親を見て育ったクリスは、それらのもの全てを否定するしかなく、全てを否定した先に荒野の暮らししかなかった。

クリスが目指したのは、アジアでいえば、仙人の暮らしなのだと思います。

けれど、荒野で暮らすことのリスクにまで考えがおよばなかったクリスは、荒野で衰弱し、けんかばかりしていたはずの両親のもとへ戻ることを夢見つつ、餓死してしまいました。

彼が望んだのは、夫婦仲良くくらす両親と、穏やかで幸せな家庭。

わが子をしあわせにしたいなら、まず自分たちが幸せに暮らさないとだめなんだなと、つくづく思いました。
そして、家族が家族一人ひとりを大切にすることも。



ところで、荒野をでて、文明社会に戻ろうとしたクリスは、ものすごい濁流の河を目の前にして、渡ることを断念して、バスに戻ってしまいますが、河ぞいをずっと下っていけば、どこかで、橋か民家か道路に出会えたのではないのかと思います。

巨大な鹿を食糧として、捕獲しますが、冷蔵庫もないのに、彼一人であれを腐る前に食べつくすのは不可能であることくらい分かりそうなもの。とも思います。

野生の動物を捕獲して焼いて食べていますが、未開拓の土地に住む生き物は、いまだ発見されていないウィルスや病原菌を持っている可能性もあります。つまり、それすらとても、危ないのです。

原野でのワイルドな生活というのは、文明社会で暮らすよりよっぽど体力と知識と、計画性が必要だと思うのに、彼は、そのあたりの周到な準備が足りなすぎる気がします。原始的な生活をなめています。食料が尽きる前に戻るとか、もっともっと情報収集してから、荒野で暮らし始めるべきだったのではと、疑問が残ります。あんなに頭よさそうなのに。

最初この映画のあらすじを聞いた時は、せっかく苦労して育ててるのに、大学出たとたん、親元を飛び出してその挙句荒野で死んじゃうなんてけしからんと思ったのですが、子供がでていく理由が親にあるのだとすると、つくづく親の立場として考えさせられてしまいます。何が子供にとっていいのか、常に自問し続けていても、やっぱり難しいです。
子供が親に対して厳しいのも事実ですし、私も親に対して厳しいし、わが子も私に対してきびしいです。どこまでが許容範囲なのでしょうねえ。



           



イントゥ・ザ・ワイルド@映画生活
   





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最終更新日  2009年09月14日 09時10分47秒
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