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元・経営コンサルタントの投資日記

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2008/11/26
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カテゴリ:M&A
 

昨年から追いかけていたこの案件、BHPビリトンが買収を断念したようです。

BHPビリトン、Rioティントに「First and Only Offer!」08年2月6日(この段階では条件付きの正式オファー。昨年11月頃から表面化していました)

当時の時価で15兆円を超えると目されたこの案件、結局急激な需要の衰えと欧州委員会の独禁法上の条件クリアの基準が高すぎたことが原因のようです。

欧州委員会は日を追うごとにネガティブな反応を見せており、BHP側も結構厳しい様子であったが、買収を撤回するそぶりを見せていませんでした。

委員会の直接の指示は鉄鉱石事業と石灰岩事業の一部売却とのことですが、どちらかと言えば当面の業況悪化を織り込んだ決断だということが妥当だと思います。ブラジルのヴァ-レもリオティントも鉄鉱石の生産量を20%近くカットすると言っていますし、中国にも鉄鉱石が山積のままで、生産が鈍っているとのことです。

また、高炉メーカーでも減産があいつでいます。アルセロールミタル、新日鉄、宝山鉄鋼など皆10~20%の減産体制、在庫調整に入っている、などの状況がみられ、鉄鉱石の相場交渉はメーカー有利が伝えられています。

 

何度も思うのですが、鉄鉱石の価格交渉って相対です。BHPはそれを銅やプラチナのように市場取引にすればいい、と言っていました。高炉メーカー側は原油価格が上昇していたこともあり、そんなことをすれば投機マネーに市場を荒らされる、と反発していました。

鉱山会社側が減ると、高炉メーカー側の価格交渉力が落ちる、という独禁法上の理由や高炉メーカー側の言い分が本当にそうなのか気になります。

申し訳ないですが、日本国内で新日鉄さんの市場支配力は強大で、仕入先は「鉄を売ってください」といって購入者であるにも関わらず、頭を下げないと「売ってもらえない」ケースすらあるようです。そういった強大な市場地位に安住し、今後もそうしたい、というのではないかと勘繰ります(金融資本、株主資本の論理に対し、産業資本の論理と対抗していましたが、要するに新日鉄中心の業界商習慣をそのまま継続したいだけではないでしょうか。利用者側からすれば、良い鉄をより安く購入したいだけのはず)。

 

何が言いたいのかと申しますと、結局は需給関係がまずありき、で需要が増加している場合は2社が合併してもしなくても、結局供給者側が強いのではないでしょうか?今回もRioティントは鉄鉱石の単価をできるだけ引き上げて、会社利益を極大化して買収防衛に備えていました(株価が高くなるので、BHP側の買収負担が増える)。

今回の欧州委員会の決定(一応日本の公取委も欧州委員会に「合併反対」の嘆願書を産業界に押されて出していました)をこういった面から見れば、少し保護的な面が否めません。

 

ただし、断念したBHPの決断はむしろ当面数年間は正しいかもしれません。Rioティントは今度はヤフーではないですが、独自の株価向上策を模索しなければなりません。

守るも攻めるも先行き課題山積のようです。当面RioのアルバニーCEOの出方に注目です。Rio株は30%近く下落した模様です。プレミアムがはげ落ちました。

 

高炉メーカー側は中長期的には、良い時間稼ぎができたかもしれません(最も今現在は、過剰在庫を積まないことで頭がいっぱいだと思いますが)。次の機会には必ず資源メジャーの再編はもう一回あるでしょうから。鉱物資源はコモディティであり、だれが産出しても鉄鉱石は鉄鉱石、石炭は石炭です。性能の違いは産出者の違いではなく、採掘場所の違いのはず。

高炉メーカーのグローバル化、再編が必要な気がいたします。

 

BHPの買収断念に対する理由づけが「買収提案は株主の最大の利益ではなくなった」というコメントに注目。

 

一方、日本では、パナと金融三社の価格交渉が難航していることが話題となっているが、初めから難航することが分かっていたので、ある程度価格面で合意してから記者会見すべきであったものを、三洋電機経営陣側(ついでに言えばそのメインバンク)の勝手な思惑で三洋の一般株主を混乱させていることに責めるそぶりすらない。

キリンの豪州コカコーラボトラーズ向けの買収提案で「価格が低い」と拒否されたことを取り上げられたり(比較的よくある話で想定のキリンには範囲内ではないか)

M&Aに対する価格感覚の感応度が鈍いのではないか、と思います。






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Last updated  2008/11/26 09:30:04 AM
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