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元・経営コンサルタントの投資日記

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2009/06/07
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カテゴリ:敵対的買収防衛
 

pibara2.jpg

 

このブログの最も多いネタの一つである鉄鉱石問題です。クライマックスかなあ。

 

Rioティントとチナルコのディールの破断と同時に、Rioは株主割当増資US$150億ドルとBHPビリトンと西豪州ピルバラ鉄鉱石鉱区での50対50の合弁事業を行うとし、そのためBHPビリトンから58億ドル(以下全て米ドル)を受け入れると発表しました。

これで、合計200億ドルを調達し、チナルコから受け入れる予定だった195億ドルとチナルコへのブレークアップフィー(違約金)2億ドルを調達することができました。

チナルコはRioの株主なので、結局株主割当分は出資ができますが、支配権の拡大とRioの持つ、Tier 1 Asset (中核事業)へのアクセスは途絶えてしまいました。

 

チナルコは残念でしょうが、前総経理が政界入りするという記事がすっぱ抜かれるなど、政治色の濃い疑惑が表面化してしまい、完全に英豪のアングロサクソンを敵にしてしまいました(M&Aを踏み台にして、中央政界入り)。

 

これで、レノボがIBMからPC事業を買収したのは成功しましたが、ユノカル買収失敗など、中国は 「出る杭は打たれる」 を地て行っています。三菱はかつてロックフェラーセンターを買収したときには、「アメリカの魂を買った」と批判されましたが、モルガンスタンレーに出資したときは「救世主」扱いだった。日本人としては感慨深いものがある。本来チナルコも救世主だったはず。

 

Rioティントの今回のBHPとの合弁受け入れは180度方向転換と言えるでしょう。RioはBHPを完全に嫌っていました。07年11月のBHPによるRioの敵対的買収提案発表以来、両社の主張は完全に違っていました。経済環境が当時と今では180度違うという点は差し引いても、経営戦略的に違っていましたからねえ。 それだけ債務弁済に困窮していたということ他なりません。

 

Rioの主張:BHPと合併する必要性はない。なぜなら、Rio単独で株主価値を高められるから。たとえば、鉄鉱石は当然のことながら、中国は今後アルミの輸入国に転落するなどアルミの単価は上昇する。Rioの他の資産の潜在価値はBHPの提案なんかよりもはるかに価値がある。と世界経済の成長とRioにあってBHPにないもの(特にアルミ)の存在でBHPより高い成長が期待できる。

基本的に景気連動型成長を主張していました。

 

BHPの主張:BHPの戦略は、規模を大きくして、大量生産によって採掘の生産性を高めることである。高めた生産性は消費者に還元すべきで、リーズナブルな価格で大量供給していくことだ。値段を釣り上げて儲けるだけではない。と、自助努力(効率生産)をして、その利益を株主や顧客に還元するという基本的主張でした(けど、昨今の鉄鉱石交渉を見ても、Rioとそん色ないけどなあ)。

 

そして、BHPの買収提案の目玉商品が西豪州のピルバラ鉄鉱石鉱山でした。ここには巨大な鉱区があって、これを統合すればシナジーが大きいと主張していました。

また、BHPは当時から、鋭いアナリストに、「シナジーの大半がピルバラであれば、ピルバラだけを買うか、合弁事業でもやればいいわけで、Rioティントを丸ごと買う必要性はないではないか。丸ごと買収はBHP自身の株主の利益になるのか」 と突っ込まれていました。

pibara.jpg

 

(JVの概要、FT.Comより)

しかし、すべては景気次第で、マイナス30%不況の今回は、Rioの景気連動型成長路線の根幹を揺るがしてしまい、BHPビリトンの欲張り買収戦略を適正買収戦略に修正させてくれました。

 

したがって、このJVが成立すると、一番得をするのはBHPビリトンだと思います。なんといっても前回の買収提案では10数兆円の買収金額を提示して、最大の目玉資産がこの西豪州の鉄鉱石地帯だったのです。今回は5千億円程度で手に入ります。 そのシナジーが両社で約1兆円ですから・・・。

しかし、アナリストは鉱山会社の生産調整は生ぬるいという指摘があり、業績は不透明かもしれません。

 

図1.gif

 

(ちなみに、以前TBSの「世界不思議発見!」で西豪州特集を放送していて、ピルバラ地区から運び出される鉄鉱石の貨車が踏み切りを通過するのに、確か数十分近くかかったというのを放映していました)

Port_Hedland,_Western_Australia.jpg

Rioティントも合弁によるコスト削減は自社にもメリットがあります。しかし、日本人とは違い、よく合理的な意思決定ができたと、この辺はアングロサクソンチックなのかなあ(「文化が違う」、とか意味不明なことは表向きは絶対に言わない。Yahoo! も未だにマイクロソフトに対して、「条件次第で売却してもいい」と言っていますし)

 

最期はロスチャイルドが動いたのかなあ?(かつてリオの30%近い株を保有)。

 

豪州政府も喜んだかな? 一級品の有望資産が国内で消化できるし、過度の中国介入が防げるし、そのくせ中国はしっかり買ってくれるから。 私には、「土地を売るのは嫌だけど、土地から産出される石なら売ってもいい。」 としか聞こえません。 チナルコのオリジナルの提案だと、「土地も石も買います」 と言っているように聞こえます。

しかし、TCIとJパワーのときと違い、株主がある程度納得できる代替案で決着しましたね。日本じゃ 「Just Say NO」 ですから。

一方、Rioティントは株主割当150億ドルの消化があります。英国では3月にHSBC Holdings plcの180億ドル株主割当増資が英国史上最大の増資といわれていました。今回は2番目に大きい増資となります。株主割当ですから、チナルコに異論を唱えた株主さんは当然応じるのでしょうね(文句言うからにはお金あるんでしょうね)。

 

尚、日本でRioティントの株を買って、その後株主割当を受けようと思っても、外国証券取引口座約款17条の2により、有償割り当て権は売却処分しないといけないようです。私は楽天証券で3月にHSBCのADRを買って割り当ても受けよう、と思ったのですが、同規程によりできません。といわれ、権利を売却したことになっていました。ご注意を(当然権利の売却代金はもらえましたが)。






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Last updated  2009/06/07 11:36:59 PM
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