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カテゴリ:未来の日本をどう創るか?
「金融危機を根絶するには」
金融危機にゆれた2008年も終わろうとしている。 2009年は、もっと大変な年になるだろう。 実体経済への影響がこれから顕在化するからだ。
さて、大恐慌への景気対策としての日本版ニューディールはすでに提言した。
これまで歴史的に繰り返されてきた金融危機による大恐慌を原因から根絶する方法はないものか。 ここでまた提言をしたい。
金融危機の本質原因は、じつは単純だ。 「カネ余り」である。
実業で生み出された利益はその行き場がなく、再投資されずに運用投資される。 そこで運用投資が高い期間損益を出しているように信じ込まされている間に静かに進行していた資産の毀損がある日、顕在化するのが金融危機であり、バブル崩壊だ。
これを根本的になくすには、このカネ余りをなくすことである。 実業に対して一定以上のカネが余るならば、課税して国庫に収めるようにすれば良い。
具体的な方法としては、法人税を累進課税にするのである。 それも、単純な法人ごとの累進課税ではあまり意味がない。 実業ではそもそも過大な利益は生じにくいからである。
問題は、少人数で出来る金融の運用投資(特に煙幕効果つきの「金融工学」による運用投資)により、資産の毀損と引き換えに高い期間損益をあげている(ように表面上、見せかけている)利益だ。 この利益にたいして、より大きな課税をするには、社員(含む非正規労働者)一人当たりの経常利益に対して、累進課税すればよい。
これにより、金融の運用投資による期間損益により大きな課税がされることでうま味がなくなることからブレーキがかかり、かつ課税により得られた税金で金融危機対策による財政赤字を補填することが出来る。(あるいは準備することが出来る) それだけでなく、実業界も含めてより多くの社員を養ったほうが節税になるということで、ワークシェアリングにもなる。 いわば、一石三鳥の効果が見込まれるのだ。
これは、現在の資本主義に欠けている「方程式」の穴を埋めるものである。それは資本主義の不安定性という欠点を補うものになるだろう。 資本主義におけるバブル崩壊は必然的で避けられないものだと真顔で主張する意見もあるがいかがなものだろうか。あきらめない限り、改善できないシステムというものは存在しないのだ。
さて、このように個人所得と同様に法人の社員一人当たりの利益に累進課税することで、はじめてこれらが一人あたりに統一され、ある最適係数を掛けて「=(イコール)」で結ばれる方程式ができあがる。 もとよりイコールで結ばれていないものは方程式とはいえず、したがって自然に本来のバランスがとれないことから生じる過分な自由度による不安定なアンバランスが発散要因となって、膨張と破裂をくりかえすからである。 この過分な自由度を放置する限り、システム的な金融危機、金融バブルは避けられない。
実際、いま個人所得と法人所得の間には、それらの最適な関係性を定義するなんらの方程式もない。
法人の利益も個人の資産も金融機関に預けて運用される。 しかし、景気がよくなるほど増える法人利益は、いつしかカネあまりとして金融バブルを生む原因となる。 その後に生じる金融危機で公的資金、つまり税金が投入され、その財政赤字の穴埋めのために増税が待ちうけている。 つまり、過大な法人利益の運用によって生じる見せ掛けの期間損益が原因となって起きる金融危機のツケを最終的に払わされるのは結局、個人なのである。
であるから、この個人所得と法人所得の間のバランスをとるための方程式の欠落によって生じる非対称性は致命的なのだ。 このままこの非対称性を放置するならば、各国の財政赤字は増え続け、世界の全ての国の財政が破綻する未来を想定しなければならなくなる。 これは不完全とはいえ、少なくとも失敗に学ぶ「英知」を持つ人類のすることではない。
今後、納税者番号が導入されれば、社員数の水増しなどの不正はごく簡単にチェックできるようになる。海外では納税者番号は常識である。 運用投資業務やその他の業務にそれぞれに何人が携わっているのか、についても企業のセグメント情報として、売上高、利益と同時に公開することを義務付ければよい。セグメント別に法人税を計算することもこれらの情報があれば小学生でもできる。
この方法は、金融機関を通じた運用投資のバブル防止に対して有効であるが、個人投資家の直接投資については、対象範囲外となる。資本主義社会である以上、これはもとより自己責任である。 問題は、自己責任を問われるべき以外の一般市民が深刻な景気後退で生活に打撃を受け、時として生命すら脅かされることなのである。 大恐慌の歴史を見れば、「人類史上最大の悲劇」といわれる第二次世界大戦を起こしたのが典型的だ。
さらに現在では、債権の証券化やデリバティブという金融工学(本質的な機能は「煙幕効果」)の手法を使って、金融機関の運用投資リスクが、一般企業や一般市民にまで拡散していることがより問題を大きくしている。 ここに前回の大恐慌以上の悲劇となる可能性が潜んでいるのだ。
金融関係者が「自己責任」で行った結果の金融バブル崩壊の結果、起きる世界中の不都合な事象の全責任を取ってくれるならよいが、それは不可能だろう。 また金融工学にグローバル経済における金融危機の予測と対策が組み込まれるのを期待することも当面、ムリな相談だ。 これから世界で一致協力してこのようなシステムを整備していこう。
さて、この提言は連結社員数に海外の社員数をどう含める(為替で調整するか)か、や累進税率をどう設定するかなど、検討すべき課題は色々とあるが、可及的速やか、かつ真剣に検討すべきアプローチと思うが、いかがだろうか。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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