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テーマ:私の読書(26)
カテゴリ:本
ゴルバチョフが語る冷戦終結の真実と21世紀の危機 山内聡彦 NHK取材班 2015年
30年前に核の削減を目指した米ソが交渉を始め、5年にわたる米ソ首脳の会談、相互訪問の後に40年にわたった冷戦が終結された。そこには、勝者はおらず、権勢を求めなかった政治家と米ソの相互理解があったと言う。 冷戦終結の1989年、東ドイツは市民の越境を容認し、西ドイツのコール首相はドイツ統一の交渉を進めたが、英国サッチャーは反対、仏ミッテランは国境固定の条件付き賛成、米はNATO加入を条件に賛成であったそうだ。ソ連のゴルバチョフは、ドイツ人が決めることとするも、NATO加入には反対との状況であったそうだ。 コールは、ゴルバチョフとゴルバチョフの故郷の山荘で話し合い、1990年10月にドイツの再統一が成就したそうだ。西ドイツは、ソ連の食糧危機に15億マルク、東欧からのソ連兵の帰還時兵舎建設に30億マルク、50億マルクの借款など22項目の契約と協定をソ連とかわしたそうだ。 ゴルバチョフは、軍事費が国を弱める現実と硬直した国家と経済の改革に着手し、原因となる東西冷戦を克服し、新しい欧州とソビエト連邦を造ろうとしたが、保守派の巻き返しと、急進派の台頭で辞任に追い込まれてしまう。後を担う急進派のエリツィンは、1990年代、アメリカ一辺倒で市場経済改革を進め、超インフレ、通貨危機、格差拡大、経済疲弊の果てに1999年泣いて失敗を詫びながら退陣する。 この間、アメリカから多くの支援者がロシアに入り助言していたが、それはロシアの利益を考えたものではなく、ロシアを弱体化するものであったと言う。ロシアの米への不信は増大し、米は冷戦終結を勝利と考えるようになっていったそうだ。 石油・ガス資源でロシアは持ち直し、プーチンは米のテロとの闘いを支持したが、イラク進攻には反対するも米に無視され、ロシアは強いロシア復活を決意することになったそうだ。 ゴルバチョフは、NATOの東欧拡大は、ドイツ再統一時の信義違反と言う。プーチンのクリミアの対応を支持してるそうだ。ゴルバチョフは、25年前の米ロの交渉・相互理解の努力を今こそ払うべき時と言う。 ゴルバチョフの母と妻は、ウクライナ人だそうだ。 第一次大戦で戦勝国がドイツに完膚なき賠償を課して敗者を追い詰め、第二次大戦の伏線をつくってしまったと言われ、敗者を追い詰めてはならないのが勝者の摂理であったはずが、1990年代、米欧は強欲に東欧を侵食したようだ。 ドイツ統一で東ドイツの文化系教師はクビになり、外務官僚2000人中8名しか残らなかったと長谷川慶太郎は書いていたような気がする。 自国利益を至上とする輩に敗れた恩讐は果てないようだ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
May 29, 2015 10:55:40 AM
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