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2006年02月05日
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 山寺の 鐘つく僧は 見えねども 
 四方(よも)の里人 これを知るなり


昼過ぎ、家内とデパートに出かけた。
卒業式用の服を見たいという。
家内がミディ・ミセスのフロアで服を見ている間、1時間ほど後に会う場所を決めて、その間、書店で本を眺めていた。
おっ、森信三先生の「修身教授録」がある。
そしてその隣に「森信三随聞記」(寺田一清著)とある。
つい先日、寺田先生に不躾ながら森信三先生の言葉について出典を聞いたばかりだ。
嬉しいことに返信があったが、期待する回答ではなかった。
それでもいきなりの葉書の照会にこうして返信を下さる寺田先生の心持が有り難かった。

本をめくると「哲人尊徳翁」という章がある。
報徳記を10月1日から1日も欠かさず、載せている身としては見逃せないぞ。

「森先生は平成4年(1992年)97歳をもって、一代の「生」を了えられましたが、その前に、21世紀の展望のいったんを予言されました。
それは、日本の立ち直るのは、2025年からだろう。
そしてそれは、二宮尊徳先生のお教えに準拠せねばならぬでしょう。
そして世界が、日本の立ち直りを認め出すのは、2050年だろうと、先見の明を示されました。」

また「梵鐘の音」にはこうある。

 山寺の鐘つく僧は見えねども
 四方(よも)の里人これを知るなり

この一首は、二宮尊徳先生の道歌ですが、森先生もこの一首だけは心に留めておいて下さいと力説なされました。

そして、寺田一清さんが「茶味」から引用されている話が印象的だ。

「ある日、奕(えき)和尚はいんいんと響く暁の鐘を聴かれて、侍僧に、鐘つく者は誰なるかを見て参れと。
それは新参の小僧ですと帰り報じたところ、その小僧を招き寄せ、
「今の暁の鐘はいかなる心でついたか」と尋ねられた。
小僧は「別にこれという心持もなく鐘をついたばかりです。」と答えた。
「いや、そうではあるまい。何か心に思っていたであろう」
「別にこれという心得はございませんが、国許の師匠が鐘つかば鐘を仏と心得よとの教えにより鐘を仏と敬い、礼拝しつつ、ついたばかりですと。
この小僧こそは後年の森田悟由大禅師でありました。」

「哲人尊徳翁」にはこんな記述がある。
「森先生の南千里のお宅をはじめてお訪ねした際、これをあなたへと授与下さったのが、尊徳翁の『報徳要典』で、その扉書きとして
これ正に古今に通ずる永遠の真理なり』と揮毫下さっております。」

いやー、奇遇だなあ。
実は今載せている「報徳記」がこの「報徳要典」から載せているのだ。
要典は、ふりがなを振ってある。ちょっとどうかなと思うのもなくはないが、非常にありがたい。
私はこれを古本屋で見つけ、重宝している。
こうしてプログに載せているのも、その命をこの時代によみがえらせようとしているのかもしれない。古今に通ずる永遠の真理を。

「報徳要典」の最後に福住正兄の「二宮翁道歌解」が載っている。
表題の歌とは下の句が少し違っている。
山寺の鐘つく僧の起き臥しは
 知らでしりなむ四方の里人

是は君子は、その独りを慎むの心の歌なり
夫れ遠く離れたる、山寺の鐘つき僧の起き臥しの、人の、人に知らるべき筈はあらねど、その鐘のおとにその起き臥しも、知らるるごとく、善悪邪正隠くしても、隠くされぬ道理なる事をわきまえて、よく慎み、人の笑いを受けぬよう、身を持つべしという心なり。
聖語にも隠れたるより、顕(あら)わるるは無しとあり。
人の家にて、火をすり出して、つけ木にて行灯(あんどん)を付けるを見る時はその火は、有るか無きかのごとくなれども、外より見る時ははや障子一面に、明かりは映る物なり。
この道理を泥中(でいちゅう)のうなぎ、草むらの山の芋にたとえて、諭されし事夜話1の21により見るべし。」





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最終更新日  2006年02月14日 04時58分15秒
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