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カテゴリ:イマジン
その日の朝、次郎さんは通勤途中の電車から一郎兄さんにメールした。
一郎さんは田舎で入院しているお母さんに付き添っている。 前日手術が無事終ったというメールを一郎さんからもらっていた。 次郎さんのお父さんは昨年なくなっていて、今年が初盆になる。 「一郎兄さん、父の夢をみました 昨日の夕方上司と仕事のことで激しくやりあったのです。 夢のなかでおやじが出てきたのですが、その続きで台所に食器がたくさんあって、洗おうかと思ったら、左手にあった少し歪んだ大きなツボから火が吹き出てすぐ水をかけて消したのです。 するとまたさっきよりさらに大きな火が吹き出て、それも水をかけて消しとめました。 そこで目が覚めたのですが、昨日のことと思い合わされて、 親父が『腹をたてるなよ』とたしなめてくれた気がしてなんか少し嬉しい気持ちでした。 叱られた恩を忘れず墓参り という句を観音霊場巡りのとき、千葉の笠森寺の麓のお寺の掲示板で見て感銘を受けたことがあります。それをもじって 叱られたお礼に父の墓参り というところでしょうか。 初盆には8月11日には帰りたいと思っています。 次郎」 いつもはめったに返信しない一郎兄さんから初盆についてすぐに返信のメールがあった。 次郎さんはその日の朝、出勤してきた前日口論した上司の目を見て、にっこりと微笑んで話しかけた。 「昨日、父の夢を見ましてね」 上司はほうと話を聞く姿勢になった。 次郎さんはツボから火が吹き出て都合2回水をかけて消した夢の話をした。 「父から腹を立てるなとたしなめられたような気がして、いまはもう叱ってくれる父がいないことを思うと寂しいとともにその父が夢の中ででもたしなめてくれたような気がして少し嬉しかったですよ」 上司は少し感動した面持ちだった。 「えっ腹をたててたの」と上司は少しまぜかえすように穏やかに合いの手を入れた。 「きのうはすみませんでした。」と次郎さんが言うと 上司はきのうの持論をもう一度だけ言ってそれで胸につかえていたわだかまりがセイセイしたようだった。 北原 照久さん(横浜ブリキのおもちゃ博物館館長)は 感謝という言葉の“謝”という字は、言偏に射ると書く。つまり、感謝は、感じたことを“言葉”で伝えて相手を“射る”んですよ。 とおっしゃっている。 「感謝する」ときも「謝罪する」ときも、言葉で伝えて相手を射なければならないと次郎さんは再認識したのであった。 そして次郎さんは、屋根の上のバイオリン弾きで、父親のテヴィエが娘の結婚を許すために「夢を見た」と妻を説得するシーンを思い出して夢の話の効用を思い微笑んだ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2007年07月04日 05時20分24秒
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