GAIA

『李登輝より日本へ贈る言葉』の「台湾で最も愛された日本人」に八田與一が登場する。
「嘉(か)南(なん)大(たい)圳(しゅう)（ダムと灌漑用水路）と日(にち)月(げつ)潭(たん)水力発電所の完成は農業の生産力を飛躍的に高め、台湾は工業化に向けて大きな一歩を踏み出しました。
　嘉南大圳を設計し、完成させた八田與一技師は、日本ではあまり知られていませんが、台湾で最も愛されている日本人です。彼が造った地下水路は、給水路一万キロ、排水路六千キロ、防水堤防二百キロ。すべてを合計すると、何と万里の長城より長いのです。
　嘉南大圳が完成したときには、世界の土木界から驚嘆と称賛の声が湧き上がりました。台湾では六十万の農民から「嘉南大圳の父」として畏敬され、銅像と夫妻の墓が建てられ、銅像と夫妻の墓が建てられ、命日には慰霊祭が行われているほどです。
　現在でも、彼の造った烏(う)山(さん)頭(とう)ダムは「八田ダム」とも呼ばれ、台湾の人々はその功績を称え、八田を慕っています。」（一八六頁）
「日本人学校に行き、生徒たちを前にスピーチしました。日本の統治時代の台湾はどうだったかというような内容ですた。
　生徒たちに聞いてみると、日本の学校では『日本は台湾を植民地にして人民を搾取して苦しめてきた』と教えられているというのです。それは真っ赤な嘘です。
　私は生徒たちにこう語りかけました。
　児玉源太郎第四代台湾総督の民生長官だった後藤新平がわずかに八年七カ月で、台湾をあなた方が考えられないくらい近代的な社会につくりあげて今日の繁栄の基礎を築いた。台湾を近代化し、経済を発展させるために最初にやったのは、仕事のできない日本人の管吏一〇八〇人をクビにして日本に送り返すことでした。こういうことはよほどの覚悟と決心がないとできないことです。そうして各方面から有能な専門家を台湾に集めた。皆さんもよく知っている新渡戸稲造、台湾でいまだに最も尊敬されているダム技師の八田與一をはじめ、数多くの能力のある日本人が台湾のために働いた。おかげで現在の台湾がある。
　こういう話をしたら、講演後、中学二年生だったと思いますが、代表の生徒が『きょうのお話を聞いて、自信が出ました。いままでは街を歩くとき、なんだか肩身の狭い思いをしていましたが、明日からは胸を張って歩きます』とうれしそうに言うのです。私もうれしくなって、『がんばりなさい』と励ましました。」（二五九頁）