さて私は毎日大量の投資本を読みながら御機嫌に株式投資をしているわけですが、その中には「頻繁に参照する」名著中の名著と言うのがあります。それは具体的には、
株式投資本オールタイムベスト10
の中の、 生き残りのディーリング や オニールの成長株発掘法 などがそうなのですが、一番良く手を伸ばすのは マーケットの魔術師シリーズ全7作 になります。
そしてその中でもシリーズ第1作の
青本
を最も愛でているのですが、実は更にその中でもダントツに良く読み返すのが、 エド・スィコータ ・ ポール・チューダー・ジョーンズ ・ マイケル・スタインハルト の記事にならんで、ラリー・ハイト のインタビューになります。
彼は、自身が設立したミント・インベストメント・マネジメントが「運用資産額が10億ドルに達した最初のヘッジファンド」であることで知られる、世界最高峰のトレンドフォロー系マーケットウィザードです。今日は、そんなラリー・ハイトの珠玉の言葉を見ていきましょう。
彼がウォール街へたどりつくまでの道のりはモーゼがイスラエルの地へ至る道のりのような回り道だった。彼の青春時代のことを調べても、その青年が後に大成功を収めることになるという糸口は見つからない。まず、学業の方は惨たんたるものだった。
そして、つまらない職を転々とし、最後は役者と映画の脚本家という二股をかけることになった。
ラリー・ハイトは、自身の著書である
ルール
で明かしているように、
中流階級の家庭に生まれ、ひどい学習障害のせいで学校の成績は悪く、更に悪いことに目がほとんど見えませんでした。(一方の目はまったく見えず、もう一方はかすかにしか見えなかった。)
という、ハンディキャップを抱えた非エリートです。そんな彼がどのようにしてマーケットの歴史に名を刻むような大成功を収めることが出来たのでしょうか?
続きを見ていきましょう。
本当は先物に興味があったのだが、どうやって職を見つけたらいいのかまったくわからなかった。それで、株式のブローカーから始めようと思った。
最初の面接はウォール街の老舗の証券会社の沈黙の漂う一室で行われた。面接官はモソモソと慇懃無礼にしゃべるコネチカットに住んでいるような男だった。そして、「当社はブルーチップだけをお客様に勧めます。」と言った。
金融のことは何も知らなかったので、「ブルーチップ」という聞き慣れない言葉を聞いて、投資に携わる会社には不釣り合いな言葉だなと思った。それで面接のあと、その由来を探した。それはモンテカルロのカジノで使われる最高額のチップの色が語源になっているとわかった。
「なるほど、このゲームは全部ギャンブルなんだ」と納得した。そして、株式のアナリストたちがバイブルと信じているグレアムとドットの「証券分析」(パンローリング刊)を投げ捨て、「ディーラーをやっつけろ」(パンローリング刊)という本を買った。
投資が成功するかどうかは単なる勝率の問題なんだと思った。もし勝算が計算できるなら、市場に打ち勝つような方法を見つけだし、テストすることができるんだ。
Q 有利な確率に賭ける方法を開発できると信じているのはなぜですか。
すべてを理解しているとは思わないが、長年市場を見ていて非効率的だということがわかったのだ。エコノミストの友人が私に子供を諭すように言うんだ。「市場は効率的にできているんだから、君のやろうとしていることは無駄なんだよ」ってね。
でも気づいんたんだ。
市場は効率的だと言っている人たちはみんな貧乏
だってことにね。
出たー。ラリー・ハイトの伝説的な名言。!
この、
市場は効率的だと言っている人たちはみんな貧乏
という言葉は、かつて心震えながら青本を読んで以来、ずっと私の座右の銘になっています。そして、彼の言葉は「まさに真実」だと確信しています。
明日何が起こるかはわからないけれど、長期的にはどうなっていくかを知る術を持っているからこそ、このビジネスが信じられないほどうまくいくのだ。
保険というビジネスに非常によく似ている。ある六〇歳の男性がいたとする。彼が一年後に生きている確率はまったくわからない。しかし、六〇歳の男性を一〇万人集めれば、一年後に何人生存しているかはほぼ完璧に推定できる。それと同様に我々も大数の法則を使っているんだ。ある意味で、我々はトレードのアクチュアリー(保険数理士)なんだ。
遊びでやっているんじゃないんだよ。勝つためにトレードするんだ。
それは退屈だ。でもこれが儲かるんだ。
このラリー・ハイトの言葉からは、「投資をカジノのオーナーの様な、統計学的な確率のゲームとして扱う」ことの大切さを学ぶことが出来ます。
そして自分自身は「株式投資が実益を兼ねた最高の趣味」ということもあって、気を抜くと、すぐに投資にスリルなサスペンスやエンターテインメントを求めてしまい、リスク・リワード比の劣った銘柄にフラフラと手を出してしまうことが頻繁にあるので、それが「己の投資家としての最大の欠点」であるといつも心を引き締めています。(滝汗)
私は厳格な家に育ったイングランドの女性と結婚したのだが、彼女の実家の方では私のことを少々おかしいのではと思っていたようだ。前にロンドン・タイムズの記者のインタビューを受けたときに、ロンドンのココア相場の見通しについて聞かれた。
「正直に言いますが、相場は見ていないんです。私が見ているのは、リスク、リターンであり、儲かるかどうかです」と答えた。私は記事になるような男ではないんだ。「ハイト氏はココア相場などおかまいなし。カネ儲けにしか興味がない」と彼の記事は結ばれていた。
「やってくれたわね。これでもう絶対実家へは帰れないわ。だってそうでしょう。あなたは実家で言っている通りの人だって証明したようなものじゃない」と記事を読んだ妻は言った。
WWWWWW、ここ、青本の中で一番ウケました。(笑)
凄腕投資家は、常人離れしていて全く常識がないということが良く分かりますね。
そして同時に、 トレンドフォロワーの考え方 というものが、とてもよく表現されている名言だと思います。彼らが見ているものは、 「目の前の価格だけであり、それだけが真実。」 ということなんですね。
小幅な利食いを重ねて大金持ちになった人はいない。
様々な商品をトレードし、リスクを管理し、かつトレンドに乗ったときに、初めてうまくいくのだとわかった。
トレード、そして人生にも勝つための基本的なルールが二つある。
一つは、賭けなければ、勝つこともない。
もう一つは、全てのチップがなくなれば、もう賭けることはできない。
この「小幅な利食いを重ねて大金持ちになった人はいない。」というハイトの言葉を、私は常に胸に抱いてここ日本株市場で戦っています。自分もいつの日か必ず、大トトロの様な妖怪クラスの投資家になってみせる、そう固く決意しています。
さてこれでラリー・ハイトのインタビューの紹介は終わりです。どうです? 全身に震えがくるほどに凄くないですか。改めて「青本」は最高です。これを超える投資本など世界中を探しても他に数冊もないでしょう。
これからも私が投資家を続ける限り、つまり「一生」、青本を繰り返し読み続けていきたいと考えています。