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りゅうちゃんミストラル

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2008.01.24
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カテゴリ:ミュージカル
世界中で公演されている「レ・ミゼラブル」(以下レミゼ)。
上演が3時間以上もの長いミュージカルだ。

      

投獄のきっかけはひときれのパンを盗んだことだった。
長い間、獄中にいたジャンバルジャン。
その半生とこの世の悲惨さを描いたこの物語は世界中にファンがいる。
中国語ではこの話を「悲惨世界」と呼ぶらしい。
1995年にはロイヤルアルバートホール(ロンドン)で10周年記念コンサートが開催された。
世界各国から17人のジャンバルジャンを演じた俳優が集まった。
(日本からは鹿賀丈史が出演した)
彼らによる「民衆の歌」(Do You Hear the People Sing?)は有名。
それぞれの国の言葉で歌われた。
このコンサートのために集められた合唱隊も混ざっての「one day more」も見事だった。
原作者のビクトル・ユゴーが生きていたら驚くに違いない。

多くの登場人物がこの物語では描かれる。
銀の燭台を与えることでバルジャンを改心させた司教。
革命に情熱を燃やす学生たち。彼らのリーダーはアンジョルラス。
その学生たちとともに戦いつつもコゼットに恋をするマリウス。
マリウスに恋しているが結ばれないエポニーヌ。
コゼットの母親で非業の死を遂げるファンティーヌ。
エポニーヌの親で幼いコゼットを預かる狡猾なテナルディエ夫妻。
学生たちに協力するガブローシュも忘れてはならないキャラクター。
ガブローシュはテナルディエ夫妻の長男。

ある意味、一番私が惹かれるのはバルジャンを追うジャベール警部。
彼もまたひどい環境で育った。
(ミュージカルでは残念なことに、ジャベールの育った環境について語られることはない)
彼の正義は自分の生い立ちを否定することにつながる。
そのためバルジャンを執拗に追う。
バルジャンの否定が自分の正義だからだ。
だが、逆に命を救われ、それが許せずにジャベールはセーヌ川に身を投げる。
キリスト教的世界観からか、彼の自殺については悲しむ声が少ない。
(キリスト教は自殺を禁じている)
不幸にして死んだファンテーヌはエンディングでバルジャンを冥土へと誘う。
その姿はまるで天使のようだ。
ジャベールとは明らかに扱いが違う。

私は思う。
ジャベールを自殺から救うことはできなかったのか?
何故この点を問いかける人が少ないのか。

彼はある意味正しかった。
死ななくてもよかったじゃないか?
私が疑問に思うのは、「どうしたら彼は死なずにすんだのか?」ということ。
これは今でも謎だ。

もうひとつ、私にはレミゼで疑問がある。
それは、「悲惨世界」でこの世は何か変わったのかということ。
世界でこれほど多くの人を感動させる話があるだろうか。
なのに今でもこの世は悲惨で溢れている。

親は子を虐待し、殺す。逆もまた多い。
戦争は今でもどこかで続いている。
裁判は多くの人を怒らせる判決を出す。
世に憎しみは満ち溢れている。

もしレミゼの存在が娯楽の提供だけであるというのなら。
人間は何と愚かな存在なのか。

「ひとつの話で世界が変わるものか」という人もいよう。
それはある意味で真実だ。
だがこれほど感動させるレミゼでさえ世界を変える力がないとしたら。
芸術の存在する意味は何か。

世にレミゼについての評論は多く存在する。
しかしその内容が上記の疑問に答えているだろうか。
そのような評論に出会わないことがとても残念だ。

(この記事はmixiで書いた『「レ・ミゼラブル」の疑問』を再構成したもの)

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最終更新日  2008.01.24 19:17:21


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