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カテゴリ:税理士の仕事
雲一つなく真っ青に晴れ上がった3月15日。
はかま姿の御嬢さん達が私の前を歩いていた。 「仰げば尊とし」「蛍の光」 もうそんな季節なのかと ふと桜のつぼみの膨らみに目をとめる。 「皆さん、卒業おめでとう。」 過去は消しゴムでは消せないけれど、未来はこれから描ける。 未来時間が沢山ある若者たちに東日本大震災は大きな試練を与えた。 進路は決まっただろうか、変更を余儀なくされた方もいたことだろう。 増田明美さんが「マラソンはスタートラインに立っていきなり42.195キロのゴールを考えると気が滅入ってしまう」と言っていた。 目の前に見える風景から小さな目標を立てて走りだすことが、最終ゴールを引き寄せることになるのだとか・・・・ 人生もよくマラソンに例えられることがあるが、とことんまで現実を体験した人の言葉はとても奥深い。 会計事務所は申告期限との戦いに毎日明け暮れている。 3月15日はまさしく裁判官がガベルを叩く日なのだ。 この時期は 1年ぶりにお会いする個人申告者が多く来所される。 自衛隊を退職され折り目正しく挨拶をされるAさん。杖をつきながら奥さんと来られた。 毎年多額の医療費を持ち込むBさん。今年も領収書の金額が7ケタに達していた。 3年前から不動産投資を始めたCさん。震災後は 新たに戸建を6戸購入して賃貸していた。 昨年 戸建を購入して音楽教室を始めたDさん。生徒募集に多額の経費がかさんでいた。 目の前に積みあがる書類の山には、一人一人の1年間の歴史があるのだからと思い、丁寧に聞き取りから始めなければならない。 ただ その都度お茶菓子等を頂いたりするものだから、甘いものが大好きな私には時としてツライものがある。 夜更かししながらパソコンの横には、しっかりとお菓子が陣取っていた。 自慢のプロポーションも万有引力には逆らえない年代に入りつつあるのだ。 また一つベルトの穴を左横に移動させねばならない。 突然ガベルの音が「トントン」と響きわたり我に返る。 世間話はほどほどに切り上げて資料を預かり申告書作成に取り掛かかる。 その中に、青森の土地の贈与を受けていた奥さんがいた。 まさか埼玉県で仕事をしている税理士が東日本大震災の土地評価の調整率を適用するとは考えていなかった。 改めて震災の大きさを感じた瞬間であった。 それでも時間は通り過ぎてゆく。 目の前の資料の山を一つ一つ片づけて最終ゴールを引き寄せる。 3月15日 ガベルの音を聞くこともなく通り過ぎた私は、卒業式を迎える子供たちのように、晴れ晴れとした気持ちで床屋さんへ向かった。 安西節雄 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2012.03.19 08:24:15
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