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カテゴリ:税理士の仕事
税理士業務で思うこと
(その1) 独りよがりの報酬 日本税理士会の業務標準報酬表が公取法の関係で廃止されてからかなり経ちます。 事務所の報酬体系も任意となったわけですが、皆さん少なからず旧標準報酬表を参考にされているのではないでしょうか。 さらに、成功報酬も認められるようになったため、簡単に言えば報酬についてはなんでも有りとなったわけです。 報酬については自身の経験上今でも反省材料となる経験があります。 開業したての若かりし頃、税理士の使命感に燃え少しでも良い申告書を作ろうとしていた頃です。 あるお客さんから居住用不動産の譲渡(3000万控除適用)の申告を依頼され、確か7万円程度を請求しました。 結果として税額は0となる申告だったのですが、 自分としては、公図や測量図その他取得費の資料までそろえ、取得費の計算も十分推敲し一冊のファイルに整理し完璧な仕事をしたつもりでした。 標準報酬も参考にし、仕事内容に見合った報酬だったはずなのですが、お客さんの第一声は“報酬が高いなあ”という言葉でした。 結局は奥さんの仲立ちもあり、多少値引いたところで決着したと記憶しています。 お客さんにとっては、既に売却してしまった不動産の後始末であり、資料などどうでもよかったのです。 とにかく税務署に呼び出されないような処理さえしてくれればそれで良い程度の考えだったのでしょう。 税理士としての自分の仕事に完璧を求めるという税理士魂を揺さぶるような事案でした。 それ以来私は、同じ内容の仕事でも、相手の要望に応じそれにふさわしい値段設定及び仕事の仕方を変えることを勉強したのでした。 プロの仕事は一生懸命やりましたではなく、いかにお客のニーズに応じた仕事をしたかなのです。 (その2) 臨機応変 これもだいぶ前の話になりますが、ある老医師が廃業し自宅を住み替えるということで、譲渡申告の依頼を受けました。 老医師は当時80歳代半ばで小さな診療所を奥さんを助手として開いていました。 このような小さな診療所ですから一日の診療患者も数人という状況であったと思われます。 しかし、申告となれば医業の申告もしなければならないため、経費の集計や計算が面倒だなと当初は考えていました。 申告のための資料を頂く際に参考に過去の申告書を見せていただいたのですが、これがびっくり。 なんと医業の決算書は収入総額しか記載しておらず、医業の特例計算により収入の28%の金額をいきなり所得として計上していたのです。 聞けば、ずっとこの方法で申告していたとか。 結果的には収入の28%の所得計上となるわけですが、経費の記入も一切なしに所得を計上するとは考えもしませんでした。 確かにこの方法でも税務署は文句も言わないだろうなと考え、最後の事業の申告ということもあり、時間省略のため同様の申告を初めてしました。 税理士の仕事としてはちょっとみっともない仕事であったと思いますが、 必要最低限の仕事というのはこんなものなのかと少なからずカルチャーショックを感じたものです。 萩原博之 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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