カテゴリ:国際経済
バブルを考える(69)
閑話休題:UBSの巨額損失 本日の全国紙の話題は、欧州最大の銀行UBSがサブプライムに絡んで1兆円を超える追加損失をだし、ここまでの損失合計が、1,6兆円を超えたこと、資本の不足を補うために、シンガポール政府系のファンドとアラブの投資によって、大規模な資本の増強を行なうという記事でした。 UBSはスイスに本社を置く、欧州最大の銀行ですが、1998年にライバル関係にあった、SBCとUBSという2つの銀行が合併して出来た銀行です。 丁度、長銀破綻のところまで、話が進んできたところですが、この長銀の破綻に、現在話題になっているUBSの半身SBCが大きく絡んでいたのです。何か因果は回るどこまでもを思わせる展開に、今日は思わずウームと唸ってしまいました。 当時破綻を恐れた長銀は、97年7月SBCとの包括提携に踏み切りました。当初は合併をも模索したようですが、法的に無理な事がわかり、両行の共同出資で日本に新銀行を作り、そこに長銀の資産を譲渡する案を、長銀側は温めていました。 SBCは、対日進出が遅れ、その面ではライバルのUBSに差をつけられていたため、長銀との合弁を渡りに船と考えたのでした。ところが、長銀にとっては、痛い話になるのですが、同年12月、長年のライバルであったSBCとUBSが、急転直下合併することになったのです。 そうなると、SBCにとって長銀との資本提携は無用の産物と化します。ここにSBCの提携にかける情熱は、急速に冷えたのでした。97年9月には、資本提携に関する正式調印が行なわれますが、当初案にあった3%の株式持ち合いは、当面は1%と減額されいました。発表は12月ですが、おそらくこの頃から、SBCとUBSの合併話が深く静かに潜行しながら、進められていたのでしょう。 98年に入って、長銀の株価下落が止まらないことを理由に、SBCは長銀との資本提携話を、正式にキャンセルしたのです。その後の長銀は坂道を転がるように、転落への軌跡を描いて行きました。 今回、その長銀との因縁を持つSBCを半身とする、スイスのUBSが1兆円規模の資本参加を、シンガポールの政府系ファンドとアラブから調達したというのです。不良資産を全て開示し、膿を出し切ったと評価されたからこそ、資本の提供を得られたということでしょうか。不良資産の厳密な開示を拒み、提携や合併を働きかけた相手にも、遂に信頼してもらえなかった長銀との違いは明白です。 しかしまた、サブプライム問題に端を発したローン債権の証券化ビジネスの 行き詰まり、流動性の麻痺が、良質とされたローン債権にまで波及して、急速な値崩れを起こしている事実も、しっかりと垣間見せてくれたのでした。事情を我が眼で精査せず、当局の発表を鵜呑みして記事にしている、日本のマスコミを、信用しすぎないようにしたいものです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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