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テーマ:アメリカ外交史(232)
カテゴリ:米外交史
▼決定的な証拠4
「私はあなたを殺そうとする理由を知りたいだけです。あなたは、証拠、つまり写真を持っていると証言しましたね」と、マクドナルドは聞いた。 「私は二枚持っています」 「二枚ね」 「一枚ではありません」 「そしてもし、それら二枚の写真が、実際にあなたがフランク・スタージスやリー・ハーヴィー・オズワルドとフロリダ州エバーグレーズの訓練場で十五年前に一緒だったことを証明するものであれば、その写真というのは今日ここであなたが証言したことすべてを補強するのに大いに役立つわけですね」と、マクドナルドは皮肉を込めて言った。 「もちろんそうです」とロレンツは答えた。 「その写真は非常に大事な証拠というわけですね」 「だけど、それを持っていれば私の命も危ないわけです。そうでしょう?」 「ここに我々がいて、あなたは今証言している。あなたは証拠写真を持っていたと証言した」 「その通りです」 「それで突然、それらの写真はなくなってしまった。分かりませんね。我々も見つけ出してみようじゃありませんか」と、マクドナルドはさらに皮肉を込めた。 ロレンツは言った。「FBIが一枚持っています。もう一枚はファジアンが持っています」 「そのファジアン氏は、今どこにいるのですか?」 「行方不明、あるいは死んでいるかも」 「そもそも彼とは、どこで出会ったのですか?」 「ファジアン氏は、私がFBIの仕事をやっているときに、かかわり合いになったのです。彼はマフィアとの接点でした」 「何故彼のところに行ったのですか?」 「ファジアンのことを話すと長くなります」 ロレンツには、マクドナルドに何を話しても無駄なように思えてきた。 「我々はもちろん、その話を全部聞きたいとは思いませんが、仮に写真が存在したとするならば、何故あなたがそのように大変重要な写真をファジアンにあげてしまったのか、その理由が知りたいのです」 ロレンツが困惑しているのを見て取った弁護士のクリーガーが、ロレンツに助け舟を出して聞いた。「答えたいですか?」 するとマクドナルドは、クリーガーに向かって敵意を持って言った。「意見は議長に言って下さい」 クリーガーは「残念です、議長」と言って黙った。 気まずい沈黙を破ってロレンツが口を開いた。「あなたたちでチェストン(ロレンツが写真を渡したFBI捜査官)を呼んで、彼から写真を手に入れたらいいじゃないの。そうしたら、私がファジアンの死体を掘り起こしてあげるわよ。フランク(スタージス)は三人の人間の命を脅したのよ。そしてその三人ともこの八カ月の間にいなくなったわ(編注:ファジアン以外の二人が誰だかは不明)」 マクドナルドが聞いた。「ロレンツさん。何故あなたは、その写真をだれか別の人に渡すことをしなかったのですか?」 「私の母がもう一枚の写真を二月まで隠していたからです。母は死にました。私は二枚目の写真を見つけることができないでいたんです。一枚はFBIのところにありました。もう一枚は二月に旅行カバンの中のリネン類の間にあったのを見つけたのです。そのときまでに、もう十分なほどいろいろなことが起きていたのです」 マクドナルドは、事態の深刻さをほとんど理解していなかった。ロゼッリやジアンカーナは実際に口封じで殺されていた。ロレンツにも危険が忍び寄ってきていたのは明白であった。危険を回避する、あらゆる手段をとる必要があった。写真を人に渡したのもそのためだ。自分に何かあったら、それまでのCIAの悪事を暴いておく必要もあった。そんな思いから七七年七月にロレンツは陳述書を書き始めたのだ。 (続く) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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