2037406 ランダム
 ホーム | 日記 | プロフィール 【フォローする】 【ログイン】

虎魂悼罪

虎魂悼罪

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

PR

サイド自由欄

カレンダー

カテゴリ

プロフィール

野村屋

野村屋

コメント新着

野村屋@ Re:立川一門!(04/03) もみじさんへ いやぁ、一応事前に噂はち…
もみじ@ 立川一門! お久しぶりです。 笑点の新メンバー、立川…
野村屋@ Re[1]:もしかして強制広告付くようになってない?(03/13) とおりすがりのWeb屋さんさんへ 誤タップ…
とおりすがりのWeb屋さん@ Re:もしかして強制広告付くようになってない?(03/13) たまーーーーに強制広告入るようになった…

バックナンバー

キーワードサーチ

▼キーワード検索

2012年03月01日
XML
カテゴリ:昔話
うちの職場のマネージャーが子供から誕生日プレゼントにウイスキーを貰ったんだそうな。
シーバスって言うからスコッチって奴だな。オレは下戸のクセに酒屋で配送兼ねたバイトしてた事もあるので銘柄や価格だけは詳しいw
問題は、そのウイスキーは子供2人が小遣いを貯めて父親に贈ったってことだな。
容量いくつのボトルで何年式かも知らんが720ml入りのボトルだとしても安くたってディスカウント店ですら3000円以上はするし、グレード次第じゃその2倍も3倍するだろう。
小学生の子供の小遣いで買う品としては破格の値段である。

そんな話を聞いて、ふと思い出した事がある。

もう12~13年以上も前の、まだオレが板橋のショップでメカニックやってた頃の話だ。

キャリアとしてはまだ若手とは言え、レースメカやったりした縁で一人で仕事受けて一人前として認められ始めた頃だね。
ある日、店に小学生くらいの男の子がやってくる。
まぁバイク屋なんて男の子からすれば好奇心ある子なら興味を引くものはあるので、それ自体は珍しくないが、子供1人で来店するのは初めてだ。
作業ピットで作業してたオレが何となく人の気配を感じて振り向いたら、男の子が立ってた。
店の入り口じゃなく、いきなり裏の作業場に人が来るのは常連以外じゃ珍しいが、それが子供じゃなおさらである。


俺:「どうしたん?」

男の子:「あのー、しばらく動いてないオートバイって直して動かせますか?」

俺:「そりゃできるよ。お兄さんこう見えてそれが仕事だからな」

男の子:「お金どれくらいかかりますか?」

俺:「それは見てみないとわからないなー。というか、キミのバイクかい?」


こんな質問見ると「何バカな事言ってんだ。小学生に免許あるわけないでしょう」なんて言われそうだが、世の中、公道は走れなくてもサーキットでキッズレース出走してる10歳児とか普通にいるのだよ。
プロの連中なんか、大体3歳とか4歳から乗ってるからな。


…まぁ、詳しい事情を聞けば、その子は特にそういうわけじゃなく、要するに父親の乗ってたバイクを直して乗らせてあげたいという話。
「なんでその父親が来ないのか?」というのも訳があり、ようするに乗ってたバイクが故障して動かなくなったが、直して乗ろうにも嫁さんが反対してるって話。
まぁこの業界、こういう話はよくある話。
趣味でオートバイに金かけてる男を理解できる女性ってのは少数派だろう。
日々の昼飯を500円で済ませて趣味に使う金なんか小遣いからやりくりしてる旦那なんてのは数え切れないほどいるが、嫁の中には亭主なんか金稼いで来るだけでよくて、余計な金使うんじゃないよ的な扱いになってる人も中にはいる。
…まぁ、こういうと嫁が一方的に悪いように見えてしまうが、要するに趣味には金使う割りに女房の機嫌を取るために使う金が無いというあたりで半分は自業自得ではあるんだがw
ここだけの話、常連客なんかで近いうちに結婚するかもしれないなんて客が居ると、社長や他の常連が必ず言うのが「今のうちに自分好みのバイクとパーツは全部組んでおけ」という一言w
最初からマグホイールにキャブに前後サス、チタンマフラーあたりの高額パーツを組んだ状態で買ってしまえば、特にバイクに興味が無い女性にはどれがどのくらいの値段なのかはわからないので文句は言われないが、新しく「鍛造マグのホイールで40万かかるんだけど」なんて言い出したら嫁に殺される男は多いw

話が脱線したが、ようするにその男の子は父親が自分のバイク乗りたがってるけど、嫁から修理費は貰えないし小遣いでも小遣いも足りないようで、それまでは毎週休みの日はリアシートに乗せて貰って出かけてたのが、壊れて以降は無くなったと。
んで動かない愛車をたまに洗車して磨くだけで我慢してる父親を見て、直して乗せたいと思い立ったんだろう。

とりあえず、所有者である父親にまずバイクの状態を診せてもらわないことには始まらない。
しかし動かない以上は乗って来る事はできないので、こっちから引き上げに出向くか、出張して見れる限りで判断するしかない。
とりあえずその子には「今度バイク屋の人が故障診断で見るだけ見に来るからと言っておいて」と頼んでおいた。
ウチの店はトラックで引き上げに向かうと出張料を取らなきゃいけないが、その後に修理依頼が入れば金額次第でサービスしてる時もあるんだが、なるべく金はかけたくないので、俺が仕事帰りに寄る形にした。

ちなみに、その男の子が貯めた金、27000円である。
ほとんどが正月のお年玉をそのまま貯金箱に放り込んであるとの話なんでオレがガキのころとはえらい違いである。俺なら貰ったその日に消えてたな(´_ゝ`)

結局、仕事帰りに「無料出張診断」みたいな形でその子の家に行って軽く症状を見る。
父親は子供がまさか金貯めてるとは思ってなく、単に学校帰りにバイク屋の従業員に事情を話して見積もりに来させたとしか思ってない。
当初は動かないという説明だったが、実際はエンジンかかるがクラッチが効かずギア入れると止まるという状態でレリーズのシールからフルード漏れてエア噛み込みしてるのが原因だった。
その他にもクラッチプレート磨耗やら細かい不具合はあったんだが、普通に見積もり出すと軽く3万を越えてしまう。
部品代の実費だけなら18000円もあれば足りるので、工賃部分をどうするか?

店に持ち込んで工賃ボランティアでやるとなると、就業時間外にオレがプライベートでやるという手段しかない。
特例として常連ユーザー割引を無理矢理に適応させた上でレバレート(工賃計算式のことね)をかなり強引な解釈で安く上げれば、その子の予算内で収まる。

結局、25000円前後だったかな?確かそれくらいの見積もりを出し車両を預かって来て、オレが空いた時間で修理を済ませ引き渡しの当日。

父親とその子が店に来て、父親が代金を払おうとした時に「今後もウチの店を使ってくれるなら、お子さんに免じて部品代実費だけでサービスしときますよ」とオレから伝えたんだが、そしたら傍で聞いてた社長が「割引適応分の工賃に関してはお子さんから既に頂いてます」との事。
おいおい、社長いつの間にその子から金取ってんだよww
というか、工賃分を浮かせるために俺は毎晩仕事の後に作業してたんだから、そこはサービスしてやれよと、その時は思ったんだが…

それを聞いた父親は驚いたようで、隣に居た我が子に聞いたら「昨日払いに来た」とのこと。
社長が机から7000円を出してオレに渡してきた。

社長:「ウチを退勤した後にお前が個人で受けた仕事の報酬だからな。受け取っとけ」

俺:「じゃあ俺いらないっすよ?その子に返してあげてください」

んで、そのままその子に返そうとしたら、そのやり取りを聞いてた父親が「こいつにはオレから借りって事で返しておきます。それは受け取ってあげてください」と言われる。

なんだか良かれと思って苦労した割にはシッカリと金を取ってしまった事で、なんか釈然としないものが残ったまま、その2人が帰ったあとで社長と2人で話した。


俺:「小学生から金取るのもなんだか…」

テレビ観ながら聞いてた社長は、オレのその言葉を聞くや否や「まぁちょっとそこ座れ」とテレビを消して促す。

その時の社長の言葉は今でも覚えてる。

「お前はプロとして仕事をしたんだよな?んで、あの子は一言もサービスしろともまけろとも言わず、キチンと請求された料金を払うつもりで来店した客だ。子供だろうが客としてプロのお前に仕事を依頼に来たクライアントだ。そして就業時間外の作業だからオレはお前に人件費を払ってない。」

「それなら報酬受け取るかどうかも俺の自由なんですかね?」

「親父さんがその場で自分で払わないで、あえて息子が払った事にした真意がわかってねーな。お前があの子から金を受け取らないと、あの子のメンツとプロとしてのお前のメンツが立たないんだよ」

「そういう形式的なものには自分こだわらないっすけどね」

「プロならタダで仕事するなって事を俺もあの親父さんも言いたいんだよ。きっとあの親父さんは倅に金返すなり、そうじゃなくとも何かしらの形で返すだろうが、それは結果同じでも全然別の話だ」

『プロならタダで仕事するな。タダで仕事受ける奴はタダみたいな仕事しかできない奴だ』という事を前にも社長に言われた事があった。
金を受け取る事で同時に責任も生じるが、善意でやった仕事じゃ責任が取れないから、そんな無責任な仕事をするなって事だろう。
オレはその男の子を客として見てなかったが、その子は客として金払う気で来ていて、社長はそんな俺に「どんな奴でも客は客だ」と教えたわけだ。

ここが難しいところではあるんだが…
その男の子は父親のために自分が金を出して直してあげたという喜びもあり、父親はその子の自分への孝行心とバイクが動く事を喜び、俺は仕事の報酬を受け取る。
子供が払って後から親がその子に金を返すなら、俺にとっての客は子供だが、親から受け取ったら客は子供ではなくその親になる。
本来なら正規見積もりなら3万越える料金が安く上がったのは、子供が相手だからと言うオレの善意の割引だ。
それは清算の段階で客が親に代わってしまったら、話が変わるって部分を社長もその親父さんもオレに対して気を使ったんだろう。
子供だって父親のために一肌脱ごうとしたのが結果的にただの割引のダシに使われたみたいな感じになる。
だから金は客である子供が頼んだプロとしてオレが受け取れという事になる。


冒頭のマネージャーの子の話も、別にウイスキーなんかマネージャー自分で買おうと思えば買えるわけだ。
ただ、子供が親のために金を貯めて贈ったという形を喜んだだけで、そこで親父が「じゃあこれ代金な」と渡したらプレゼントでもなんでもなくなって単なるお使いになってしまう。
そのマネージャーの「今度、西武ドームでも連れて行かなきゃな」という一言には、その場で金渡さなかった親心も垣間見えるなと。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2021年11月20日 00時05分56秒
コメント(2) | コメントを書く



© Rakuten Group, Inc.