戦争と医療技術の進歩(1)
憲法9条信奉者からは、脱兎のごとく忌み嫌われる戦争、しかし一方で、戦争は医学の発展に大きく寄与します。最近、外科領域で注目されているのが、ダビンチなどのロボット手術です。湾岸戦争の折、遠隔地でも手術を行うことができるようにとアメリカを中心に開発されました。ロボットと云えば、トランスフォーマーやガンダムを思い浮かべますが、実際は腹腔鏡手術などを人間の手と同じように自由自在に動く鉗子を使用して、3D画像を見ながら行う手術支援用ロボットです。1台3億円以上するそうです。このロボットは、現在、世界で約10000台稼動し、2009年の世界での手術実績は20万件にものぼります。手術件数で最も多いのが、前立腺がん全摘術で9万件、子宮手術が6万9千件で、これまで視界がとりにくかった骨盤内の手術で多用されています。アメリカでは既に前立腺がん手術のうち9割が、ダビンチを使用したロボット手術が行われるまでになっています。日本ではこの分野では大きく立ち遅れており、20数台が稼動しているだけで、韓国よりも遅れています。というのもダビンチなどは厚生労働省の薬事未認可だからです。また混合診療という大きな壁があります。現在、外科手術での安全性や有効性を調べる臨床実験中で、厚生労働省が医療器具として認証すれば、保険適用が可能となります。ここにも日本の医療行政の課題が生じていますね。ダビンチの他にゼウスという世界で始めて遠隔操作により手術を行ったロボットもあります。当初はライバル関係にありましたが、ゼウスのコンピューターモーション社をダビンチのイントゥイティブ・サージカル社が買収したそうです。日本では医療事故なども起きてはいますが、既に心臓外科手術でも実績を挙げており、低侵襲の切り札として大いに期待されます。