2381076 ランダム
 ホーム | 日記 | プロフィール 【フォローする】 【ログイン】

320life

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

PR

プロフィール

ノマ@320life

ノマ@320life

サイド自由欄

キーワードサーチ

▼キーワード検索

カレンダー

カテゴリ

2021.08.24
XML
テーマ:読書(8209)
カテゴリ:【読書】未分類

本のタイトル・作者



女であるだけで (新しいマヤの文学) [ ソル・ケー・モオ ]

”Chéen tumeen x chu'uupen / Sólo por ser mujer”
by Sol Ceh Moo, 2015

本の目次・あらすじ


メキシコ南東・チアパス州の刑務所から、恩赦で出所したオノリーナ・カデナ・ガルシーア。
マヤ系ツォツィル先住民の彼女は、14歳で夫フロレンシオに売られてから、その絶え間ない暴力に曝され、貧困にあえぎ、ついに夫を殺した罪で服役していた。
彼女が語る悲惨な人生。
女であるだけで。

引用


「あんたの言う法とやらをきちんと機能させるにはどうすればいいのか教えてもらいたいものだね。最初からおかしなものが後で良くなるわけなんかないだろ。(略)インディオで女なんていったら、不幸の塊さ。(略)あんたの言う法は何も見てやしないじゃないか。あんたの言う法はいい加減に目を覚まして、あたしたちにも平等に扱ってもらえる権利があるってことを教えてくれてもいいんじゃないのかい。あたしが自由になれたのは、あたしがインディオだからなんかじゃない。自分の罪を少しでも償うための手段を、たくさんの人があたしに見出したからこそ、あたしは自由になれたんだ。その罪っていうのはあたしたちの存在をずっと忘れていたことなんだ」


感想


2021年読書:170冊目
おすすめ度:★★★

著者は、史上初のマヤ語先住民女性作家。
「え?」と思って読んでみた。
マヤ語?

解説によると、モオ・ソル・ケーは1974年生まれ。
16歳で高校を中退して結婚。二児の出産後、20歳で高校に入りなおし、2018年に法学修士号取得。三児の母。夫は医師。
「闘牛士」で2006年にユカタン大学実施文学コンクールの先住民文学部門 アルフレド・バレラ・バスケス賞を受賞。
『女であるだけで』は2014年にメキシコ文化省下部機関CONACULTAが先住民文学発展のために実施しているネサワルコヨトル賞を受賞。
(この本は、メキシコ政府文化省による2018年度CONACULTA翻訳助成プログラム(PROTRAD)の助成を受けたもの。)
彼女は、ノーベル文学賞を最終目標に掲げて執筆を行っているそうだ。

以前に読んだ本で、長くフェミニズムは「中産階級」の「白人」女性のものだった、というのを読んだ。
それが時間を経るにつれ、「違うよね」となってきた。
女であることは、共通項ではあるのだけれど、縦糸と横糸の一編に過ぎない。
この本は、まさにそのことを描いている。
美しい織物に目を凝らすと、様々な色の集まりに見えるように。

私なんて、日本で生まれ育った、てんでふにゃけた奴だけど。
それでも、分かるのだ。
「女であるだけで」という、理不尽が。
オノリーナの受ける肉体的、精神的暴力は、どこかで聞いた話であり、自分であったかもしれない。
そして私はそちらに立つ。
なぜだろう、そこにある、普遍的な共感覚性。

本の中で、お嬢様育ちの新人弁護士・デリアがオノリーナを弁護する。
デリアの母もまた、オノリーナに付く。
上流階級でオノリーナの支援は広がっていく。
「女であるだけで」出来る連帯も、ある。

オノリーナは本当に酷い目にずっと遭っていて、打ちのめされて、それを当然のこととして受け入れる。彼女は力なく笑う。習慣的無気力。
けれど、夫が刑務所に入り、自分で稼ぐようになって彼女は変わる。
シュトゥヒル村のドニャ・ティバは、オノリーナに箒の作り方を教える。
オノリーナは刑務所に入り、スペイン語の読み書きを教わる。

大事なことはこれだ、と思った。
「解説」で、著者は農村の支援プログラムは受け取る人を侮辱し、男たちをアルコールと麻薬漬けにして、女たちがその仕事まで引き受けているとスピーチで述べたことを紹介している。
魚を与えてはいけない、と言っていたのは誰だっけ?
魚の釣り方を教えてあげなければ、その人は飢えたままなのだと。

忘れられた言葉、忘れられた世界。
現代の作家が、私とそう年の離れていない作家が、それを描いている。
見えないもの。見えていないもの、見ていないもの。
この人に見えているもの。見せてくれたもの。
目を開かせてくれるもの。
だから、読書は面白い。

私の中に、場所が出来る。今まで知らなかったことのためのスペース。
そこを開けておく。彼女のために。


↓ 「見たよ」のクリック頂けると嬉しいです ↓

にほんブログ村 にほんブログ村へ







お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2021.08.24 00:00:16
コメント(0) | コメントを書く



© Rakuten Group, Inc.