本のタイトル・作者
おばあちゃん、青い自転車で世界に出逢う [ ガブリ・ ローデナス ]
"La abuela que cruzó el mundo en una bicicleta"
by Gabri Rodenas (2018)
本の目次・あらすじ
90歳のマルおばあちゃん。
チリの孤児院に捨てられて、12歳で脱走。
サンティアゴに辿り着いたところで、メキシコ・シティから来ていたウンベルト夫妻にメイドとして雇われ、メキシコへ。
13歳で雇用主に妊娠させられ、逃亡。
20歳でオアハカに腰を落ち着けた。
息子のサンティアゴも13歳で家を飛び出し、その後の行方は知れない。
今、マルおばあちゃんは近所の孤児院に得意のチリ風アルファホールを持って行く。
ある日、孤児院の院長が息子の消息を聞いたと教えてくれる。
閉鎖された孤児院に記録が残っていたのだ。エルメル―――サンティアゴの息子。マルおばあちゃんの孫。
おばあちゃんは、ターコイズブルーの自転車で旅に出る。
エルメルを探すために。
引用
魔法の杖かなにかみたいに、外部の力が知識や幸福を運んできてくれると期待しているのだ。でもじつは、知識や幸福はすでに自分の中にある。そのことを知らない人が多すぎるのだ。とはいえ、いいアイデアを考えたり、綿密に計画を立てたり、すばらしい目標をもったりするだけでは足りない。心の目を大きく見開き、一歩踏み出す必要がある。その一歩とは、「行動に移すこと」。
どんなに望んでも、人にそれをやってもらうことはできない。
最後に頼れるのは自分だけだ。
感想
2021年読書:174冊目
おすすめ度:★★★★
南米の小説が読みたくなって読んでみた。
おばあちゃんは、自転車に乗って旅をする。道中様々な人に出会う。
そのすべてが、孫に出会うための道しるべとなり、行く先を示す。
自己啓発と神秘主義。出来過ぎの御伽話。
「星の王子様」みたいな、次々と出会う旅の寓話。
でも、勇気をもらえる。
落ち込んでいる人、道に迷っている人がいたら、ぜひ読んでほしい。
著者ははじめに、この本の対象を述べている。
「胸に巣食う哀しみの原因をさがして、つい何度も後ろを振り返ってしまう人へ」
まずその一文に引かれた。
訳者あとがきによれば、オアハカからベラクルスは、450km。
読み終わってからGoogleで場所を調べた。
だいたい、東京~京都が470km前後。結構遠い…。
おばあちゃんは1日30kmと決めていたけど、それでも15日はかかる。
それがまた、あり得ないほど旅支度が軽装なのだ。
ちょっとそこまで、というふうに。
マルおばあちゃんは、現在という瞬間の中で生きる、という。
これ、目が開かれた気がした。
過去を悔やみ、未来に悩む。そんな日々を送っている。
山積の課題が押し寄せる中で藻掻いている。
でも、違うのかもしれない。
私は今を生きることしか出来ない。
今の中でしか。
おばあちゃんは毎朝、「なにもしない」ことで、生まれたての赤ん坊のように世界を見る。
そのうつくしさを味わい尽くす。
ああ、これ、忘れたくないなあ。
長ずるにつれ、見慣れたもの、既知のものが増えていく。
否、「そうである」と決めつけてよく見ようともしない。
世界は前と同じではないのに。
幾千の夕暮れ、星の輝き。朝焼けの染める空。木々が風に揺れて光る。
子どもが笑う。雨が地面を叩きつける。
そのすべてを、初めて見るように見ることができたら。
以前、『たんぽぽのお酒』を読んだときに思った。
レイ・ブラッドベリは、この本を書いた人は、きっと毎朝、生まれたての赤ん坊のように世界を見ることができたのだろう。
そうして世界を見ることは、どれほど美しく、どれほど辛いのだろうか。
いつまでも世界に馴染まない者として、存在し続けることは。
重要な意味をもつ「アルファホール」というお菓子?がずっと謎で、読了後に検索。
私の脳内ではドイツのプレッツェルみたいな見た目だったんだけど、違った。
チョコパイっぽい。
旭化成のレシピ「
アルファフォール」を見ると、ココナッツクッキーみたいなんだけど。
間にドルセ・デ・レチェというミルクジャムを挟んである。
美味しそう。自分で作るのは面倒だから作らないけど、食べてみたい…。
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