本のタイトル・作者
木曜日にはココアを (宝島社文庫) [ 青山美智子 ]
本の目次・あらすじ
東京、川沿いの桜並木の陰に、マーブル・カフェがある。
カフェの雇われ店長の「僕」は、木曜日にココアを飲みに来る「彼女」に恋をしている。
熱心にエアメールを書き綴る彼女が、ある日涙を流していて―――。
1 木曜日にはココアを(Brown/Tokyo)
2 きまじめな卵焼き(Yellow/Tokyo)
3 のびゆくわれら(Pink/Tokyo)
4 聖者の直進(Blue/Tokyo)
5 めぐりあい(Red/Sydney)
6 半世紀ロマンス(Grey/Sydney)
7 カウントダウン(Green/Sydney)
8 ラルフさんの一番良き日(Orange/Sydney)
9 帰ってきた魔女(Turquoise/Sydney)
10 あなたに出会わなければ(Black/Sydney)
11 トリコロールの約束(Purple/Sydney)
12 恋文(White/Tokyo)
引用
私は思うんだけど、正しい謙虚さというのは正しい自信だし、本当のやさしさは本当のたくましさじゃないかしら。
感想
2021年読書:185冊目
おすすめ度:★★★
青山美智子さんのデビュー作。
登場人物のリレー形式で続いていく物語。
もとは、シドニーの情報誌『月刊ジャパラリア』の公式サイトで連載されていたもの。
だから、分量的に余白たっぷりの文庫版で一編20ページ程度で、ひとつずつ読みやすい。
ちょっとファンタジーっぽいものもあって、色が変わるように楽しめる。
カフェでお茶しながら一篇、なんて素敵。
なんでオーストラリア?と思ったら、著者は2年間シドニーの日経新聞社で記者をしていたんですね。
この方は、一貫してこういうものを書く人なんだな、というのがよく分かった。
書きたいものが、「こういうもの」っていうのがあるんだろうな。
人が救われ、立ち直り、治っていく。
涙の味のあとの、わたあめみたいにやさしい物語。
私は「ラルフさんの一番良き日」の設定が好き。
こういう短編の海外映画(単館系)みたいなの、好み。
何色が好き?って訊かれるんですよね。
で、ラルフさんはオレンジって答える。
私なら何色って答えるかなあ、と考えた。
子供の頃から、「好きな色は?」と訊かれたらずっと「青」と答えていた(一時期、私の部屋は何から何まで真っ青だったのだ)けれど、最近は黄色に惹かれる。
ぱきっとした黄色。それで太陽と星と月を描く。
色鉛筆は黄色ばかりがなくなっていく。
何故なのか、分からない。
以前、「プレゼントするから、何色が好き?」と訊かれたとき、何と答えていいものか分からず、「オレンジや紫、緑は好きじゃない」と答えた。
それで、「ああ、混ざり合っているから?あなたは中途半端なのが嫌いなんだね」と苦笑され、自分でも意識していなかったので「そうか」と思った。
黒と白、青。黄色。好きな色は、原色だった。
でも、赤も好きではないのだけど。それは私には、キツすぎる。
この本にはたくさんの色が登場する。
ココアの茶色、卵焼きの黄色、マニキュアのピンク、ブルーのショーツ、赤い糸、ロマンスグレーの髪、緑色の絵、オレンジのお店、ターコイズのお守り、黒い目、紫のジャカランダ、雪の白。
私が今は楽しめない色を、きっといつか楽しめるようになるのだろうな、と思う。
だとしたら年を重ねるのも悪くはないだろうな。
そうして12色の色鉛筆が揃うように、いろんな色を手に入れて、いろんな絵が描けるようになったらいいな。
これまでのレビュー
お探し物は図書室まで [ 青山美智子 ]
ただいま神様当番 [ 青山美智子 ]
↓ 「見たよ」のクリック頂けると嬉しいです ↓