本のタイトル・作者
リマ・トゥジュ・リマ・トゥジュ・トゥジュ [ こまつ あやこ ]
本の目次・あらすじ
寿司職人の父の転勤で、マレーシアのクアラルンプールに2年半家族で移住していた岡本沙弥。
中学一年の八月終わり、中途半端な時期に帰国して中学に編入することになり、「帰国子女」として目立たないよう沙弥は細心の注意を払う。
なのにーーー3年生の図書委員・通称「督促女王」佐藤莉々子が、突然ギンコウに沙弥を連れ出した。
ギンコウって何?銀行強盗?!
沙弥は莉々子に、「無理やりに連れられてきた吟行は」の続きを詠むよう言われ…。
「早く帰ろうジュンパラギ!」
引用
たとえ今の教室でたまたま毎日一緒に過ごすことになった同い年の人とうまくいかなくても、それがわたしのすべてじゃない、落ち込むことないんだって思えたの。歌会がわたしの居場所になってくれてるんだ。そう思えてから強くなれた気がする。
感想
2021年読書:210冊目
おすすめ度:★★★
魔法の呪文みたいな軽快な響きのタイトルに惹かれて手に取った。
どこか聞き覚えがある言葉だと思ったら、インドネシア語の「5・7・5・7・7」と同じだ!
マレーシア語とインドネシア語がまったく同じでびっくりしたんですが、同じマレー語なんですね。
マレーシア、シンガポール、ブルネイ、インドネシアがマレー語を国語にしているそう。
(→
東京外国語大学マレーシア語)
あーだからシンガポールの子もインドネシアで言葉通じてたんかー。
国ごとの差異はあれど、基本的には意思疎通できるんだね…。
主人公はマレーシアから帰国した沙弥。
本の中でマレーシア語の入った短歌を詠むのですが、これが可愛い!
外国語と組み合わせると、短歌が途端にポップでモダンに感じられる。
あとナシレマ(ココナッツミルクで炊いたごはん)が美味しそう!食べたい!
この本のテーマは、違い。
多感な時期に読んで、いろんなことを感じてもらいたい、考えてもらいたいという著者の願いが感じられる。
爽やかな読後感で、世界がすこし広くなったような気がする本。
読書感想文にもぴったり。
大きくなった娘に読んでもらいたいな。
文化の違い。宗教の違い。
日本だと同調・同質性が重視され、「違うこと」を極端に嫌い、恐れる。
息苦しいな。
この国は、これからどうなるんだろう。
「日本人であること」への固執。
多様性は、夢物語か。
娘の一番の仲良し、ヴィクトリア(仮名)ちゃん。
彼女は、くりくりした目と、キャラメル色の肌。
給食は食べられないから、お弁当を持ってきている。
娘はそういうことを、ごく当たり前に受け入れている。
「ヴィクトリアちゃんはー、たべられないおにくがあるから」
「でも、たべられるおにくもある」
娘にとってそれは、アレルギーがある子と同じ程度の違いらしい。
名前が日本人的でない、なんてことも分からない。
クラスにはアフリカ系の子も、東南アジア系の子も、ヨーロッパ系の子もいる。
でも、娘にとっては、ただ、その子であるだけ。
気が合うかどうか、それだけ。
だから、その子どもたちの耳に囁くのは、大人なんだろう。
あの子は、私たちとは違う。
差異を奇異なものとして取り上げるのは、私たち。
それは「ふつう」ではない。「よいもの」ではない。「あるべきすがた」ではない。
その子を見ない。その人を見ない。
言葉が覆い尽くす。真実を覆い隠す。
そこにあるものを、見えなくする。
違いは、楽しいのに。
世界にこんなにもたくさんのことがある。知らないことがある。
目を開く。耳を澄ます。
心を開けば、それに触れられる。知ることができる。
無知な自分を、ちっぽけな自分を楽しもう。
世界は、うんと広いのだ。
著者は1985年生まれ。学校や図書館に司書として勤務。
2017年本作で第85回講談社児童文学新人賞受賞。
清泉女子大学の卒業生インタビューを見ました。
司書として勤務されながら書いていかれるそう。
次の作品も楽しみにしています!
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