セロニアス・モンク 『モンクス・ブルース(Monk’s Blues)』
奇才ピアニストが才能に満ちたアレンジャーと出会った結果は… よく“無人島へ持っていきたい盤”(無人島に行ってもレコードプレーヤーやCDプレーヤーがあるわけではないので、どうせ聴けないとは思うが)という言い方をすることがある。でも、“それほどじゃないんだけど、やっぱたまには聴きたくなるんだよね~”という感じのアルバムも、その一方にたくさんある。セロニアス・モンク(Thelonious Monk)の『モンクス・ブルース(Monk’s Blues)』は、そんな盤の代表的1枚なのではないかと個人的に思ったりする。 実際のところ、モンク盤を1枚だけ選べと言われると、『ジーニアス・オブ・モダン・ミュージック』や『ブリリアント・コーナーズ』、『モンクス・ミュージック』や『セロニアス・モンク・トリオ』など他の代表盤がいくらでもあって、迷ってしまう。そんな時に本盤は話題にすら上らない。ジャズの入門書でも同じことが起きていて、この盤が取り上げられることはほぼないけれど、やっぱりどこか外せない感が残ってしまうのである。 さて、セロニアス・モンクのピアノが普通ではないのは周知の通りである。型破りで自由奔放なマイペースの独自世界、それを真に満喫するならばソロ盤(例えばこちらやこちら)で聴くのがいいかもしれない。けれども、大きな編成の中でモンクの独自世界がどうなるのかというのも、これまた面白いのである。そして、この盤の仕上がりの立役者は、アレンジャーとしても素晴らしい業績を残したオリヴァー・ネルソンであった。 そのようなわけで、聴きどころは代表曲や有名曲にネルソンのアレンジが施されているという点。そして、それをモンクが飄々と弾くというところが興味深い。そのようなわけで、5.「ブリリアント・コーナーズ」や9.「ストレート、ノー・チェイサー」といった代表曲が特に面白い。しかもCDでは10.「ブルー・モンク」と11.「ラウンド・ミッドナイト」が収録されていて、本編の仕上がりには及ばないとはいえこれらのテイクが聴けるのも有難い。 だいぶ前に“バップの高僧”というニックネームなど、セロニアス・モンクの“近づき難さ”という話題について書いたことがあったのだけれど、こうした作品を聴くとますます“実は近づき難くはなかったのだ”というイメージが膨らむんじゃないかと思う。最終的にこれが代表作や最高作であるかと言われると決してそうではない。けれども、こういう“近づきやすい”盤はもっと聴かれてしかるべきであるとも思ったりする。[収録曲]1. Let's Cool One2. Reflections3. Little Rootie Tootie4. Just a Glance at Love5. Brilliant Corners6. Consecutive Seconds7. Monk's Point8. Trinkle, Tinkle9. Straight, No Chaser10. Blue Monk11. Round Midnight[パーソネル、録音]カルテット:Thelonious Sphere Monk (p), Charlie Rouse (ts), Larry Gales (b), Ben Riley (ds)追加ミュージシャン:Buddy Collette, Tom Scott, Gene Cipriano, Ernie Small (sax)Bobby Bryant, Conte Candoli, Freddie Hill (tp)Lou Blackburn, Bob Bralinger, Billy Byers, Mike Wimberly (tb)Howard Roberts (g)John Guerin (ds)1968年録音。 モンクス・ブルース +2 [ セロニアス・モンク ] 下記のブログランキングに参加しています。 応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓