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書評日記  パペッティア通信

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Jul 15, 2005
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カテゴリ:経済


まず断固たる決意と勇気でデフレを止めよ!
大恐慌は、金融危機後の不景気を短縮してくれるはずの、
国際的な「最後の貸手」の不在によってひきおこされる!

経済史家のメッセージは、明快で力強い。

ここまで、金融恐慌に関する定性的資料を用いた、網羅的かつ啓蒙的な書というのは、たいへん珍しい。西洋近代史における、ほとんどのバブルに論及されていて、その価値の高さは計り知れません。内容をまとめるとこんな感じになるでしょう。

1 中央銀行の「介入」のタイミングは技術。原則を求めるのは誤りである
2 2つ以上の財や資産が投機対象になるとき、金融危機は深刻化する
3 投機は、合理的な段階と、元本の値上がりが目的の段階にわけられる
4 金利低下からくる過剰取引は、必要な現金準備がない事態を生む
5 需給は同時に決まらない(クモの巣理論)。
  また刺激とその反応との間に時間的なズレがあるため、合理的な期待
  をもつ市場は、正しい推定に失敗してしまう。そのため、バンドワゴン
  効果(勝ち馬)・デューゼンベリー効果(消費を減らさない)など、
  合理的推測からの「乖離」が観測される。
6 バブルと恐慌は、貨幣的現象である。銀行は、つねに通貨の「代用物」
  を進化させているので、通貨供給を固定化することはできない。
  もともと「信用の不安定性」が背景にある
7 通貨当局は、熱狂をおさえられない。警告を発した後で危機がおきる
8 危機は、経済・金融への「信頼」の喪失によって、資産現金化でおきる
9 システムに衝撃をおこす異変は、近年、金融自由化・規制緩和などの
  制度革新が多い
10 商品・住宅・建物・土地・株式・債券などの価格崩壊によって、
  銀行システムは身動きがとれなくなり、通貨供給量に関係なく、
  一律に信用供与を制限するようになる。
11 どれくらい「予想が立てられるか」は、金融恐慌の国際的波及の
  大小に大きく関係してくる。各市場の裁定取引がなくても波及する
12 1931年の金融危機は、イギリスに「最後の貸手」として行動する能力に
  欠け、アメリカに意思が欠け、フランスが独墺への政治目的の達成に
  固執したことでひきおこされた
13 金融危機は、好景気による対外貸付の停止でおきることもある
14 支払能力の大小は、恐慌の規模と期間に依存するので、誰を救うべき
  なのか、「支払能力のあるものだけ」救済するのかという原則論は、
  政治問題を惹起しやすい。
15 必要とするすべての人々に、懲罰的高利子率で自由に貸し出す措置
  (バジョット・ルール)が、金融恐慌時には必要となる。
16 「最後の貸手」という安定機構は、存在しなければならないが、常に
  支援の手をさしのべるとは限らないという状態に置く方が、市場に
  慎重な対応をとらせるのでよい。

曖昧さと矛盾に満ちた「最後の貸手」。
「他人が儲かることは許せない」心性からくる、模倣によるバブルの伝染。
くりかえされる、おなじ過ち。

投機は、安定をもたらすのか、不安定をもたらすのか。この問題系は、経済学の「市場の合理性」という考え方に馴染んでいない人には、かなり新鮮に映るのではないか。人の労役を買えても忠誠心が買えないので、縁者への贔屓は前近代では有効な方法だったこと。また、恐慌を防ぐため、引き伸ばし戦術、市場閉鎖、手形交換所証書、債務保証、大蔵省証券など、様々な方策が施行されたことはたいへん興味深いものであった。

戦後多用された、通貨当局の外国為替先物売や、当局間のスワップ網などによる通貨防衛法の詳細。また、1990年代、日本やアジア、ロシア・メキシコなどの金融政策の過ちについての論考も、はばひろくて面白い。

総じて古いこと(初版は1978年、これは3版、2002年出版)、そして訳が拙劣で、内容が行きつ戻りつしていることが、これを読む上での難点でしょうか。古典的名著ですのに、残念なことだとおもいます。

アジア危機など最近の恐慌現象に言及した本書の改訂版執筆を最後に、
キンドルバーガー氏は一昨年逝去された。
謹んでご冥福をお祈りしたい。

評価 ★★★
価格: ¥2,940 (税込)

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Last updated  Aug 25, 2005 01:57:22 AM
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