硫黄島2部作とは「羅生門」の壮大なリメーク
「父親たちの星条旗」と「硫黄島からの手紙」とは相互補完の関係である2作品である。前者はアメリカから見た作品であり、後者は日本からの視点。視点を変えることによって、1作品では見えなかったものが見えてくる。硫黄島の戦いについての究明である。つまり、これら2本は黒澤の「羅生門」の壮大なリメークとも言えよう。「父親たちの星条旗」では、「実際には旗はどうだったのか」という疑問が様々な関係者から語られ、まさに「羅生門」のような展開でもある。デビュー当時、映画においてはB級スターであり、映画と比べると格下のテレビスターとして人気が出て、その後はイタリアへ出稼ぎ。そのイタリアで黒澤の「用心棒」の模造品でスターになったと、半ば揶揄されながらハリウッドに戻ったイーストウッドは、ハリウッドのトップ監督へとのし上り、「羅生門」をベースに完全にオリジナルな作品を完成させたということだ。