平凡にして偉大なものを教えてくれる「海洋天堂」
この映画では死を目前にした父親と、その死後に自閉症という一人で生きていくのが極めて困難な事態になるであろう息子の物語。「海洋天堂」という映画のことを表現すると、そのような言い方で間違いではない。では、この映画は一体、何を描いたのであろうか?父親は、自分が死んだ後にも息子が生きていけるようにいろんなことを教える。シャツの脱ぎ方、衣類の仕舞い方、卵の割り方、バスの乗り・降りの仕方、モップでの掃除方法などなど。おおよそ、日常生活で必要な動作がここでは淡々と丹念に描かれる。それも繰り返し、繰り返し。この映画は、そうした日常生活における動作、それも平凡な動作を描いたものといえよう。誰にでもできるそんな動作を教えるのが、無敵のアクションスター、ジェット・リーであることがこの映画のポイントであろう。どんな人生も、どんな生活も、そんな平凡や動作で成り立っているということを教えてくれる、そんな作品である。従って、ラストに出てくる「平凡にして偉大なる全ての父と母へ」という字幕が大きな感動を与える。