モーリス・ジャール逝く■黒澤明とのコラボレーションは実現できなかった
モーリス・ジャールさんが亡くなられた。「アラビアのロレンス」、「ドクトル・ジバゴ」、「パリは燃えているか」、「グランプリ」、「レッドサン」など60年代から70年代にかけての大作映画の音楽を一手に引き受けていたようなそんな存在であった。とりわけ当時、大変に勢いがあり、アメリカ映画に新風を吹き込んだジョン・フランケンハイマーとのコンビが印象的であった。どんな作品の曲も、例えばメキシコ革命が背景のアクション映画「戦うパンチョビラ」のような作品ですら、その音楽には故国フランスの香りがした。本人は黒澤明とのコラボレーションを望んでいたのかもしれない。「クロサワに捧ぐ」という曲を残している。そんな彼の日本映画での唯一の作品が、あの日本映画史に残る浪費愚作「落陽」であったとは非常に残念である。