映画「靖国」と映画「エリザベス」
映画「靖国」の監督が、もし、小栗康平とか東陽一であったとしたら、これほどの騒動や話題になったと思う。今回の騒動の大きな要因のひとつが、監督が中国人であったことではなかろうか。「歴史認識問題」、「靖国参拝批判」、「中国人監督」、「反日」といったイメージが連鎖したということでは結果であろう。それなら、作品論で攻めれば、いいのであろうが、たまたま芸術文化振興基金の助成金をもらっていたことから攻めてみたということではないか。攻める方もそれに同調する方も随分と幼稚な話である。海外では、このようなケースはどうなのであろうか。つまり、かって支配されていた国の映画人が支配した国の重要なものをテーマに映画化するというケースである。それに相当するケースがあった。最近公開された「エリザベス:ゴールデン・エイジ」とその前作「エリザベス」。この監督のシェーカル・カプールは、1945年イギリス領インド帝国の生まれである。インド人の監督が大英帝国のシンボル的存在のエリザベス女王を描くということは、日本で言えば、明治天皇の物語を中国や韓国の映画監督が手がけるようなものではなかろうか。映画「エリザベス」はイギリス本国では、その部分は、どのように評価されたのであろうか?しかし、明治天皇について韓国の林 權澤(イム・グォンテク)や中国の謝晋(シエ・チン)が手がけたら、どういう映画になるのか、これはこれで期待できる。