農産物直売所の精算書考その2
前回農産物直売所の精算(書)について、売買の基本である「何が売れたのか」という基本情報が欠落している現実とそのデメリットを見てきた。ファーマータナカとしては、その現実に手をこまねいていることはよしとしないので、苦肉の策として、「何が売れたのか。」を知るためにある方法を取っているのだった。その事が結局波紋を呼んでいるので、読者にも知らせておきたいと思う。ファーマータナカは品目の情報をバーコードに取り入れてくれないので、仕方なく他の情報にそれを代替させることにした。すなわち生産者名で品目名を表す策を弄したのである。具体的には、ファーマータナカは品目A、ファーマータナカの愚妻は品目B、スタッフのK氏は品目C、スタッフのM氏は品目D、といった具合だ。そうすれば、例えば愚妻名儀で200円が5ヶで1,000円という精算書が回ってくれば、200円のB品目が5ヶ売れたということが判るというわけだ。当然出荷数は記録しているので、仮に10ヶ出荷していれば、売却率50%、実質販売単価は100円だったということになる。この事により、設定売価が適切なのか、各直売店舗の購買力はどうか、品目の魅力度はどうか等の判断の一助とし、次の出荷や栽培計画にその情報を生かしていくのである。ファーマータナカの場合には、例えばトマトだと小さいながらも3つのハウスがあり、それぞれ作型や栽培方法が異なる。収量や売上や経費や利益を見て、最も効率的なやり方を持続して模索し、変更していくのは、経営の初歩中の初歩だ。又弱小とはいえ法人組織であり、当然部門別管理やハウス別管理は当たり前だ。トマトという品目だけでなくどのハウスのトマトなのかという情報も当然必要になるのだ。(細かい話のようだが、例えばAレストランチェーンで、B店の価格1,000円のCメニューが何点売れたかが経営上当然に必要だといっているのに、チェーン店全体で、1,000円のメニューが何点売れたか判ればそれで充分だろうといっているのと同じだ)とにかく上記の方法で、とりあえず問題無しのようにも思えるが、実はここからが問題だ。産直部会の規約第13条の(経費)の項に、部会の経費は、年会費(1000円/1人)・・・を充てるとある。産直担当農協事務局によれば、ファーマータナカの会員は4人だという。(ファーマータナカの見解は会員は1名(実質は1社)だ)従って年会費は1,000円×4人=4,000円というわけだ。(ここに来て読者にはやっとせこい話の本質が見えてきたことと思う)たかが1,000円と思われるかもしれないが、されど1,000円である。ついでに書いておくが、当たり前だが全ての収入は会社の口座に入金され、全額適正に申告されている。本年度日田市は、ミニハウス等の施設の導入に補助金を出す事業を打ち出した。唯一伸びている産直分野にテコ入れし、農家の所得向上に役立ててほしいという趣旨だ。(主に冬期に出荷量が落ちるので、厳寒期にハウス栽培によって出荷量を増やすという意図がある)例えば新しい品種も含めて、このミニハウスで30種類の葉菜を栽培し、売れ筋の品種を選択しつつ、所得向上に努めて行きたいと思う生産者がいても不思議はないだろう。その場合、1,000円×30人=30,000円会費を払えというのである。又、2~3人なら家族もいるかもしれないが、30人ともなると、場合によっては死んだ爺さんや別れた前妻や隣の犬や野良猫の名前も借りてくる必要が出てくるだろう。又農協は、携帯電話のメール機能を利用して、1日毎の店舗毎の売却数と入金額を知らせるサービスを有料で始めるという。(単一品目販売者にとっては朗報だ)遅ればせながら、売却情報の必要性は認めているということだろう。農協担当者の一人によれば、「異なる会員名で品目管理をする手法は、いいアイディアなので、人数分の会費を払って引き続きすればいい。」旨の発言もあったが、これはこの方法を黙認又は推奨する向きと言えなくもない。場合によっては生産者名の虚偽表示黙認及びその追認ということになるのではないだろうか。又、これによれば、産直部会員数は実態を反映していない。動機はともかく、会員数の水増しととられてもしようがないのではないだろうか。結局ファーマータナカは長期的には、品目別バーコードの導入によるPOS管理を求めていくと共に、過渡的には、ファーマータナカ1、ファーマータナカ2といった表示で、何とか品目別売上情報を把握したい、そのための1品目毎の若干の経費は百歩譲って認めるとしても(品目情報は精算書の必須項目で、システムの不備により記載されていないので本来支払う必要は無いと思っているが)、会員は1人(1社)なので、会費としては1,000円以外はガンとして払いたくないと主張しているのだ。農協としては、本来生産者へ、所得向上のための情報をタイムリーに流すことは責務であろうし、万一生産者にその情報の必要性の認識が低い方がいるとすれば、それに甘んじているのではなく、反対にその必要性を指導啓蒙していくべき立場であろう。システムの構築が直ちには無理ならば、当然現場の工夫で打開策を探り、当面を乗り切る方法を提示すべきであろう。一般論として、民間だろうと行政だろうと、はたまた農協だろうと、ルールや規則を持ち出して、出来ない理由を説明弁明するのが仕事ではないはずだ。こうやったら出来ると知恵を絞り、少しずつ工夫や運用を積み重ねて、お客様や住民や組合員に奉仕していくのが使命であろう。ファーマータナカは、矮小かつ枝葉末節なことに、ただ目くじらを立てているだけなのではと読者は思われますか?(追記)産直はもともと、例えば規格外の曲がったきゅうりが、いくらかでも所得にならないかということで出て来た背景もある。奥さんのおこづかい的発想もあったであろう。(奥さん名義で出荷され、入金されている場合が多いと思われる)その当時は、金額も少なく、売上管理の必要性もあまりなかっただろう。しかし、農産物の流通が大きく変動した今日、産直市場は表舞台に躍り出たのである。もともと農家農民は、所得税申告でも、収支計算をしなくてよかったり、市場出荷においては手取額を売上に計上してよいという税法通達があったり(収支計算や総額主義は会計の大原則にもかかわらず)、自民党政権のもとで優遇されてきた。加工グループによる加工品の出荷等も盛んになってきているが、一方で補助金を受けながら「赤字だから申告なんてしてません。」との声も聞かれる。同じく産直所得についても、所得の分散や無申告がもしあるとすれば、時代の流れや一般住民からの告発により早晩一般国民と同じ、正常な形に引き戻されるであろう。ファーマータナカを含めた生産者の意識改革はもちろん、農協の更なる意識改革と組合員のための具体的指導教育啓蒙のアクションを切に期待するものである。