カテゴリ:行動のポイント
岡田尊司さんの本からの引用です。
ある60代の男性が自殺しようとしていたところを妻に発見され、精神科の病院に連れてこられた。 抗うつ薬などが処方されたが、なかなか改善せず、無気力な状態が続いていた。 担当医との面接の時も、男性は悲観的なことを口にするばかりであった。 ただ、男性の目に光が戻った瞬間があった。 それは料理の話をしていた時で、男性は退職するまでホテルで料理人として働いていたのだ。 担当医は症状の話をするよりも料理の話をよくするようになった。 すると、ほとんど自分からしゃべることのなかった男性が、少しずつ話をするようになった。 そんなある日、思い切って担当医は、デイケアの料理教室で他のメンバーに教えてやってくれないかと頼んでみた。 最初、男性は気が重そうにしていたが、スタッフも手伝うからと安心させ、同意を取り付けた。 実際、キッチンに立ってみると、男性は別人のように手際よく説明し、見事な包丁さばきを見せた。 皆が感嘆するなか、教室が終わるころにはその顔は自信に満ちたものとなっていた。 それがきっかけとなって、男性は元気を取り戻し、すっかり回復して退院していった。 (人を動かす対話術 岡田尊司 PHP新書 40ページより引用) この話は、生きがいを持つことがいかに大切であるかということだ。 食事をすることと同じくらい大事なことだ。 やるべき課題を持っている。さらにそれが人様の役に立っているという感覚だ。 それが精神状態を健康に保つためには欠かせないのだということを教えてくれている。 私はやるべき課題で、一番基本的なことは日常生活の中にあると思う。 食べること。そのために毎日料理を作る。食材を買いに行く。 できれば野菜作りをする。加工食品を作る。 洗濯をすること、部屋の掃除や整頓をすること。 それらに一心不乱になって取り組んでいく。いわゆる凡事徹底に取り組むことだ。 ついでに言えば、自分や家族の身の回りのことに取り組んでいく。 そんな雑事は面倒だ。できればやりたくないというのは危険な兆候だ。 今では、宅配弁当、食材の配達、スーパーなどの豊富な惣菜や弁当、外食などが豊富に用意されている。 味もよい。料理を作る手間もいらない。ごみもあまりでない。洗いものもない。 こんな恵まれた状況にたっぷりと浸かって、その恩恵を十二分に味わっている人も多い。 しかし、便利だからといって、完全に依存体質になってしまうと、無気力、無関心、無感動になって生きがいが根こそぎ奪われてしまうことを肝に銘じておくべきだと思う。 一旦悪循環に陥ってしまうと、なんとか立て直さなければと思っても、どうにもならなくなるのである。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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