カテゴリ:森田理論学習の進め方
形外先生言行録という本があります。
この本は森田先生にお世話になった人が、森田先生との思い出をまとめた本である。 この本で出てくる61名の人たちの職業は多彩である。 大学教授、学長、病院長、開業医、会社社長、会社役員、公認会計士、市長、教師、司法書士、社会保険労務士、会社経営、農業、主婦などである。 どうして入院森田を受けた人が、これだけの人材の宝庫となりえたのか興味が尽きない。 これは一つには社会的に生の欲望が強い人が多かったのではないだろうか。 一家の繁栄、社会的成功を夢見ている人が多かったのかもしれない。 その時代は田舎から都会に出て一旗揚げる。 「立身出世して故郷に錦を飾る」というような気概の人がいたのである。 森田療法には生の欲望が強いことが適応条件の一つとなっている。 この点から見ると、森田先生の時代はこの必要条件を満たしていた。 では現代社会ではどうだろうか。 一家の末代までの繁栄、社会的な成功を目指している人が果たしてどれくらいいるだろうか。 少子化のなかで自分の代で終わりという人も多くなっている。 目標や課題に果敢に挑戦し、夢を追うような生活はしんどそうだ。 現状にある程度満足していれば、そんなにガツガツしなくてもいいのではないか。 世の中に刺激的で楽しいことはいくらでもあふれているのだから、あえて火中の栗を拾うようなことは敬遠したい。 そういう社会の変化のなかで、不安と欲望の中身が大きく変わってきた。 欲望が希薄化してきたと同時に、不安の中身が変わってきたのである。 集談会では、自分の神経質症状を明確に説明する人は減ってきている。 よくあるのは慢性的な抑うつ感で苦しんでいるという人だ。 それとともに、自分の生き方の指針が持てていない人が多い。 例えば、良好な人間関係の持ち方が分からない、仕事をすることが苦痛である、気分に振り回されている、凡事徹底の意味が分からない、自己肯定感が持てない、結婚することが怖い、子育ての自信がない、生の欲望が湧いてこない、神経質性格がよいとは思えない、感情の取り扱い方が分からない、規則正しい生活の必要性が分からない、変化対応力やバランスをとる生き方が理解できない、心から人生を謳歌しているという喜びが湧き上がってこないなどです。 現代の森田理論学習は、生の欲望が希薄化していることを前提にする必要があると思う。 また、慢性的で重苦しい閉塞感や抑うつ感をいかに解消していくかに焦点を当てた学習が求められているように思われます。 抑うつ感は森田的生活を徹底することで克服できます。 つまりルーティンワークを確立することです。 規則正しい生活をする中で、絶えず小さな課題や目標を明確にして丁寧に取り組む生活習慣を作り上げる。それを継続することで、抑うつ状態を解消できると教えてくれました。 山口県岩国市錦帯橋 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2023.07.24 09:19:50
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