いいとこ探し、ありがとう探しの効用
森田理論では、感情と行動は別物と言われています。不快な感情でいっぱいのときでも、役者のように行動するのは如何でしょうか。役者は腹だたしいことを抱えていても、いつも上手に演技をしています。私生活での腹立たしい感情が、演技の中で分かるようでは、役者として失格の烙印を押されてしまいます。プロ野球選手でも、ポーカーフェースの人がいます。ヒーローインタビューで意味不明な発言をしている人がいます。こう言う選手は、相手選手からしてみると厄介だそうです、「あの選手は何を考えているのか全く分からない。手の内が分からない」そういう選手は癖がない。次の対策が立てられないというのです。これを戦略として行っているとすれば、すごい選手だと思います。でも普通の人は、不快な感情の取り扱い方に未熟な人が多い。とくに神経症で苦しんでいる人は、その言動ですぐにばれてしまいます。いけないことだとは分かっていても、感情にまかせて暴言を吐いてしまう。相手にけんかを売って、不快な気持ちを払拭しようとする。吐き出した瞬間は少しだけ楽になるが、そのあと後悔するようになる。交通事故と同じで、一旦事故を起こしてしまうと、事後処理に手間取る。不快な感情と行動を切り分ける方法を考えてみました。腹が立つときは、反射的に相手の言動や行動を非難・否定しています。このやり方はもっともまずいやり方になります。よく考えてみれば、一方的に相手が悪いということはあまりないように思います。交差点の出会いがしらの事故の場合、相手が一方的に悪いような場合でも、こちらが少しでも動いてれば、少なからず過失があったと判定されます。人間関係もこれと同じではないでしょうか。反射的な対応は百害あって一利なしです。ムカッとしても、少しだけ我慢する、耐えることを心がける。間合いを取るようにする。相手との距離をとる。トイレに行く。コーヒーを飲みに行く。次に相手のいいとこ探し、ありがとう探しをしてみる。腹が立つでしょうが、対応方法を変えるのです。あえて相手のいいとこ探し、ありがとう探しをするのです。例えば、相手が約束した時間を無視して、自分の予定が狂ってしまうことがあります。当然腹が立ちます。ここで買い言葉に売り言葉の短絡的な対応は、一旦横に置いておきます。腹が立つが、相手は別の好ましい面を持っているはずだ。そうでないと人間としてバランスが悪い。それを考えてみよう。思い出してみようということです。相手のいいところ探し・・・おわびの言葉があった。時間には遅れたが来てくれた。メールで連絡してくれた。自分によくお誘いの声をかけてくれる。私の悪口は聞いたことがない。相手のありがとう探し・・・よくプレゼントしてくれる。ほめたり、評価してくれる。不快な感情を役者のように取り扱うことができるようになった人は、多少不平や不満があったとしても人間関係にひびが入るような事にはなりません。そして時間の経過とともに、いつの間にか不快感は忘れ去ってしまいます。ここでは森田理論の「感情の法則」の検証ができます。そういう段階に至った人は、「感情取り扱い主任者」として、免許皆伝の称号を与えてもよいかも知れません。