図書館で『ブリューゲルの世界』という本を、手にしたのです。
ぱらぱらとめくってみると、中世ヨーロッパの庶民とか、ブリューゲル風怪物が見られて興味深いのです。
【ブリューゲルの世界】
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森洋子著、新潮社、2017年刊
<「BOOK」データベース>より
広場で遊びに熱中する子どもたち。雄大な自然のなかで、労働にいそしむ農民たち。そして、群衆のなかに埋没する聖書の主人公ー。あっと驚く構図に超細密技法で、16世紀フランドルの人々の営みを写し取った画家ピーテル・ブリューゲル。その全真筆41点を、5つの切り口で世界的研究者が徹底解説。新発見の『聖マルティンのワイン祭り』や油彩画のルーツとなった版画作品、その人脈や信仰心、五世代にわたる一族の活躍などについても触れた、ブリューゲルの全画業に迫る最新版にして決定版。
<読む前の大使寸評>
ぱらぱらとめくってみると、中世ヨーロッパの庶民とか、ブリューゲル風怪物が見られて興味深いのです。
rakutenブリューゲルの世界
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「農民の婚宴」が語られているので、見てみましょう。
p124~128
<32 《農民の婚宴》>
《農民の婚宴》(1568年頃)では夏の終わり、収穫した麦でいっぱいの大きな納屋が婚宴の海上となっています。麦の壁に貧者のために残される落穂の麦束(ザンテコーレン)が干草用の農具のレーキで留められています。
ブリューゲルは大勢の客人を描くためにテーブルを対角線上に位置づけました。婚宴の招待客の関心はいつの時代でもご馳走と飲み物です。画面でもトレイ代わりの扉で運ばれる沢山の「ブレイ」(ライ麦、オート麦などで作られたこってり粥)が一番目立ちます。
浅い木皿に盛られた中身は蜂蜜などで甘い味がするのでしょう。前景の子供がおいしそうに皿の残りを指でしゃぶっています。ビールは領主が振舞ったと思われ、従者が忙しそうに大きな壺からジョッキに注いでいます。
見事なのはこの絵に繰り広げられる農民の「顔づくし」です。ブリューゲルがどんなに意欲的に農民の相貌の表現に取り組んだかは、《農婦の頭部》(1568年頃)を見てもわかります。おそらくブリューゲルはこのような特色のある顔の連作をたくさん工房に残したのでしょう。
主人公の花嫁は当時のスペイン風な礼服の影響でしょうか、黒い服を着て、冠をつけ、慎ましく座っています。普段、女性は髪を頭巾で覆っているので、髪を垂らすのは花嫁になった時だけです。その様子は、《野外での農民の婚礼の踊り》(1566年)でも見られます。
婚宴での花婿の役目は客の接待という習慣もあったらしく《農民の婚宴》の前景で給仕の運ぶブレイを左右の手で取っている赤い帽子の若者は、その気配りから花婿かもしれません。テーブルの右端にいる帯剣姿の立派な紳士は領主らしいのですが、ブリューゲルの友人で商人であったハンス・フランケルトの相貌によく似ています。
ヴァン・マンデルによれば、ブリューゲルはハンス・フランケルトと農民に扮装して縁日や婚礼を訪れたといいます。
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ウン 農民に対する暖かい眼差しが感じられる絵ですね。それにしても・・・
ここまで詳細に描き込むブリューゲルの絵描き根性がすごい!(森洋子さんの作家根性もすごいが) またこの絵は立派に民俗学的資料になっているのも、ええでぇ♪