ネット巡っていたら、『ベストセラーズインタビュー』シリーズで『bestseller's interview 第77回 絲山秋子さん』というのに出くわしたのです。
おお 絲山秋子さんってか・・・これはいけてるかも♪
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『bestseller's interview 第77回 絲山秋子さん』より
■出版界の最重要人物にフォーカスする『ベストセラーズインタビュー』!
第77回となる今回のゲストは、昨年12月に新刊『薄情』(新潮社/刊)を刊行した絲山秋子さんです。
『薄情』の舞台となっているのは群馬県高崎市。その地での暮らしぶりや季節の移り変わりが丹念に描かれていくなかで、地方都市に暮らす人ならではの葛藤が浮き彫りになっていきます。「暮らし続ける人」、「戻ってきた人」、「移住してきた人」、同じ場所で暮らしながらそれぞれ異なった背景を持つ登場人物たちの出会いと再会の後に起きた出来事とは?
この作品の成り立ちについて、絲山さんにたっぷり語っていただきました。
■Interview Index
1.「余所者」には「良い」か「悪い」かしかない
2. 「無理に先を書こうとしてもうまくいかない。でも、待っていると 『今だ!』という瞬間がやってくる」
3.絲山作品は「あらすじを追わない」方が楽しく読める?
4. 取材後記
■「余所者」には「良い」か「悪い」かしかない
― 絲山さんの新刊『薄情』は、群馬県の高崎市を舞台にした、いわば「土地」に根を張った作品です。まずは、この小説がどのように着想されたのかというところからお聞きしたいのですが、やはりご自身がこの地で暮らしているということが大きいのでしょうか。
著者近影
絲山: もちろん、自分が住んでいるからというのはあります。これまで、小説の中であちこちの地方都市を書いてきたのですが、多くは「余所からその土地に来た人」の話でした。
ただ、群馬に関しては実際に家を建てて暮らしていて、町内会の活動にも参加しています。方言で話しますし、知人も増えましたしね。それもあって、私自身は東京出身なのですが、群馬を舞台にするのであれば「その土地で生まれ育ってずっと暮らしている人」のことも書けるのではないかというのがありました。前に書いた『ばかもの』も高崎が舞台でしたが、『薄情』はそれをもう一歩進めた形で書きたいという気持ちでしたね。
― 「土地」ということでいうと、「生まれてからずっとその土地の中にいた人」と、主人公の宇田川や蜂須賀のように「一度出てから戻ってきた人」、鹿谷さんのように「外からきた人」が作中に登場しますが、それぞれ土地との距離感が違っていて面白かったです。
絲山: 自分自身、高崎には会社員時代に2年いて、その後で住みついたのですが、アパート暮らしの時と、家を建ててからでは周りの人との親密度が変わったように感じます。余所者かどうかということでいえば、この先もずっと余所者なのでしょうが、それでも少しずつその土地だとか土地の人との距離感は変わってくるものだと思います。同じように、生まれた時からその土地にいる人でも、家族が代々そこに住んでいるという人と、親の代で移り住んできた人とでは、ものの見方にしても故郷の捉え方にしても少しずつ違ってくるはずです。
― 群馬といえば、その「田舎」ぶりがインターネット上でネタにされていたり……
絲山: 群馬の人ってそれを知っていて笑いのネタとして、自虐的に話すんですよね。本当は群馬が好きなのにわざわざ自虐に走ってしまう。「未開の地 群馬」と言われたりしますけど、そういうことでも、話題として楽しんだりします。この小説では、そういう群馬の人の気質も含めて、他の人が書いていない群馬の話を書きたいと思っていました。
― 東京との距離が絶妙ですよね。遠いは遠いですが、地方とまではいきませんし。
絲山: 方言にしても、イントネーションは東京と同じで、昔の「江戸っ子」の言葉に近いんです。「おまえ」が「おめえ」だったり、「はいった」が「へえった」だったり、落語みたいに聞こえるかもしれません。
― ただ、宇田川は登場人物の中でもはっきりと東京との距離を感じていますね。
絲山: 宇田川もそうですが、群馬は「地元意識」が強い人が多いと思います。そこは埼玉の人との違いかもしれません。埼玉の場合、東京に通勤していたりするので、独自の地元意識はあまりないという人が多いのですが、群馬は地域によって特色が違いつつも全体で「俺たちは群馬」という意識があります。
おもしろいのは、群馬の人は東京のことを「都内」って言うんですよ。おそらく無意識に使っているのだと思いますが、群馬は東京の外側なんだから「今日は東京で仕事」でいいはずなのに「今日は都内で仕事」と言う。でも埼玉や長野のことは「他県」と言うんです(笑)。だから埼玉を飛び越えて東京に親近感を持っているんだと思います。
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以前、この『薄情』を読んでいて群馬弁に驚いたものです。・・・なんか名古屋弁もハダシで逃げそうだがや。
だけど、絲山さんは群馬弁どころか、フランス語も操るところろがスゴイ♪
【薄情】
![薄情](https://image.space.rakuten.co.jp/d/strg/ctrl/9/e68885a356031eacfecb17cf2ab13c2c57f22676.26.2.9.2.jpeg)
絲山秋子著、新潮社、2015年刊
<「BOOK」データベース>より
地方都市に暮らす宇田川静生は、他者への深入りを避け日々をやり過ごしてきた。だが、高校時代の後輩女子・蜂須賀との再会や、東京から移住した木工職人・鹿谷さんらとの交流を通し、かれは次第に考えを改めていく。そしてある日、決定的な事件が起きー。季節の移り変わりとともに揺れ動く内面。社会の本質に迫る。滋味豊かな長編小説。
<読む前の大使寸評>
この新作は、2016年の谷崎潤一郎賞受賞とのこと。
絲山秋子ミニブームの勢いで、読んでみるか♪
<図書館予約:(10/31予約済み、副本11、予約3)>
rakuten薄情
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文章作成におけるアイデアが述べられているので、メモしたのです。
― 推敲のポイントなどがあればという質問も来ています。
絲山: これはプリントアウトですね。パソコンのモニタで読むと客観的になりにくいですし、文字も見づらいので、私もゲラを読む時はプリントアウトしたものに手書き赤を入れています。
それと、書き終わったらその内容を一度忘れることも大事なので、一日でも二日でもいいので、書いた文章のことを積極的に忘れるように心がけてみるといいと思います。読み返した時に他人の文章を読んでいるような感覚になるのが理想ですね。
― ちなみに、ゲラにはたくさん手を入れるタイプですか?
絲山: ものすごく手を入れるタイプです。初稿もそうですし、単行本になる時もかなり直します。「宇田川は車を運転したい」と「車を宇田川は運転したい」のように、言葉の順番が違うだけで読んだ印象が全く変わってしまうので、ものすごく注意していますし、いじくり回します。こういうことも、書いた後に一度忘れるようにしているからできるんです。
― 最後になりますが、読者の方々にメッセージをお願いいたします。
絲山: 私は実在する人物と、小説に登場する架空の人物を分けて考えません。たとえば、実在する人でも、友達の家族だと話は聞いても会うことがなかったりするわけで、登場人物たちについてもそのくらいの感じに捉えています。
『薄情』に出てくる登場人物にモデルはいませんが、「絲山の友達」とか「自分の友達の友達」とか、そのくらい身近に思っていただけたらありがたいです。
それと、小説を読む時は「あらすじ」を無理に追わない方が味わいやすかったり、楽かもしれませんよ、ということも伝えたいですね。特に私の小説はあらすじを無理に追わない方が楽しく読めるのではないかと思います。
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