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2008年05月24日
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カテゴリ:読書ノート
松田聖子の歌の歌詞は、意味のないものの羅列で、理解できない表現が多い」、とこの作者は言う。私にすれば、普通にわかりやすい表現だと思うし、男の人が書いた詩とは思えないほど女の子の気持ちを実に微妙によく表現してある。少しもおかしくない。

この本の中で作者は「渚のバルコニー」という表現で、「渚にバルコニーなんてない」というけれど、別に普通に海岸にあるホテルかコテージにあるバルコニーのことであって別になんにも違和感はない。「赤いスイートピー」という題名も赤いスイートピーなんて存在しないというけれど、歌なんてもともと空想や想像や、比喩表現を楽しむもので、現実にないからってなんでいけないのだろう。赤は情熱を表す色で、スイートピーは、恋心を表していると思う。心の岸辺に咲いた赤いスイートピーという歌詞は、心の中に芽生え始めた恋心が赤く燃え始めているイメーシだ。少しもおかしくない。

『春色』とか、『映画色』とかも、作者はどんな色か、わからないというけれど、別に春のようなとか、映画のようなとかいう意味の表現であって、不思議でも何でもない。「春色の汽車」は、春ののどかであたたかくて、わくわくする季節の中を走る列車のことだし、映画色の街は、映画のシーンのように、自分の過去の恋人とすごした街の中での思い出が思い出されるヒロインの記憶のなかのシーンをあらわしているだけだと思う。

松田聖子の歌は単語の羅列が多くて、文章になっていない分わかりにくいものかもしれないけれど、歌というのは、限られた字数制限の中でイメージの表現をするものなのだから、もともとそういうものだと思う。なにも不思議ではない。理論的な文章のような表現をしていたら、歌としては、まどろっこしくて聴いてられない。
文学的センスがないのに、こんな論文なんか書くなよと思った。

青いさんご礁』とか、『白いパラソル』など、南国のリゾートにあこがれ、恋にあこがれる十代の女の子の日常の微細な感情がとても細やかに表現されている。
これらの一連の松本隆と、松田聖子の歌を、ヒットして売れはしたけれど、内容的に意味がないと作者は言う。

けれど、私はそうは思わない。松田聖子が歌う、南国リゾートや、若い男女の恋を歌う日常。これらは、つまり、人間が求める究極のものなのではないのか。
むずかしい仕事も、ビジネスも、技術開発も、政治も、戦争も、全ては、人が人として幸せに暮らせる世界、社会を作るためのものだ。ふつうの女の子や男の子が恋をして、結婚をして、子供を生んで、安心して暮らせる世界。それを目指して、政治も、経済も、技術研究も、戦争もあるのだ。

それなのに、戦争のために、会社のために、苦しいこと、辛いことを我慢しなければならないとしても、それでもやっぱり、最後は、松田聖子の歌う、明るくてハッピーな普通の人たちのフツウの平和な日常を目指しているのだ。

そのこと自体を忘れてしまうと、過労で死ぬまで働いたり、安い給料でこき使われた挙句、社員の給料を削ってできた、会社の利益が、資本家、経営者、株主のところにいってしまって、働いている労働者たちは苦しいままなのに、苦しくても働くこと自体が意義があるとか、そういう、どこかマゾヒスティックな感覚が自己満足をうんでしまいかねない。

アイドルポップスが出てくる前の演歌のような、ふられたつらさや、生活の苦しさや、うらみつらみを歌う歌の悲しさによって、どこかでそれを楽しんでいるような感覚。不幸で辛いのがいいことというような、自己陶酔の世界。

そんな感覚が当たり前になっていると、搾取され、こき使われ、愛人にされ、遊ぶだけあそんでふられても、その不幸によったまま、それにいたったまでの原因がなんなのか、追求しないまま、流されて、常習化しかねない。

アメリカのビジネスマンたちは、激烈なビジネス社会で働いて、お金をためた後、引退して、南国の島でのんびり暮らすのが夢なのだそうだ。それは、まさに松田聖子の歌の世界そのものだ。

めざしているのは、南国、楽園、快適で楽しい日常。普通の恋が普通にできる平和な社会。
普通の生活こそが、パラダイスである世界。

松田聖子が日々、歌う歌によって、社会が何をめざしているのか、私たちは無意識に再確認してきたのではないか。
だとしたら、松田聖子の歌に意味がないとは思えない。

忍耐と不幸の世界を歌う、演歌から、明るく楽しい日常を当たり前に送ることをめざす松田聖子の歌へ。アイドルポップス、Jポップスへ。社会の変化と一緒に、歌謡曲も変容していった。そういうことなんだと思う。

だから、松田聖子の歌に意味がないなんてことはない。
政治も経済もむずかしい仕事も勉強も研究も、重要で意義深くて大切なことだけど、だからって、それよりも、恋や結婚や娯楽が、それより下の劣るものなんてことは絶対ない。

めざしているのは、なんなのか。忘れないように、私たちはいまも、聖子ちゃんの歌を口ずさむ。頑張って働いたお金で南の国のリゾートに遊びに行く。 恋をする。結婚をする。子供を生んで、育てる。家族で仲良く暮らす。全てはそんな普通の日常のためにある。




関連記事↓こっちも読んでね。

『松田聖子と中森明菜』その1

『松田聖子と中森明菜』その2

『松田聖子と中森明菜』その4

             




               





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最終更新日  2008年05月26日 09時56分48秒
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