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2008年09月12日
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カテゴリ:映画★アニメ
すごいらしいと、評判だけは聞いていたけど、今回、ネットで初めてそれもいきなり全編通して、数日かけてみたのですが。すごかった。なるほど、評判だけのことはあります。

いままでのロボット大戦系のものとは「一線を画す」というより、全く別物。現代人の悩みや迷い、そして、その先へ。

『マジンガーZ』に始まる、少年がロボットにのって、怪物をやっつけるという、一連のロボット系アニメものの流れをくむ作品のようでいて、いざ、観てみると、全く違う別物であり、そして、哲学的にものすごく深いテーマの物語であり、ロボットアニメの形を借りた、現代の少年少女たちへの人生の悩みの深遠に問いかける物語なのだ。

ロボットにのって、敵をやっつける従来の勧善懲悪、正義はただしいという、『マジンガーZ』などからはじまった、宇宙からの侵略者と戦うといったロボット大戦アニメは、『機動戦士ガンダム』では、独立を願うスペースコロニーと、地球連邦との独立戦争を描く未来社会の人類同士の戦いの物語になる。『ガンダム』では、もう、ロボットではなく、モビルスーツとなる。そして、『新世紀エヴァンゲリオン』においては、主人公碇シンジの乗るエヴァンゲリオンは、ロボットですらない。エヴァンゲリオンは、実は、生きている。生物なのだ。外見がロボットにみえるのは、装甲版をつけているから。
生き物に乗って操縦して戦うなんて、今までのロボット大戦ものからすると、どう解釈するんだろうと思うけれど、今まで乗っていたロボットが自動車なら、生きているエヴァンゲリオンは、さながら、馬だろうか。戦車や飛行機にのっての戦争が、馬に乗った騎士の戦いになったようなものか。生き物がロボットのように装甲版をつけている姿も、人が鎧兜をつけていると、考えると、納得できる。(ほんとはコレは、装甲版ですらなくて、エヴァンゲリオンが勝手に動き出すのを抑制すための拘束具なのである。まあ、孫悟空の頭のわっかとおなじですね。)

そして、いままでは、宇宙からの侵略者をやっつける、戦闘の爽快感だけが描かれていたロボットものとはちがって、『エヴァンゲリオン』では、中に乗っている操縦者もまた、エヴァが、傷を負うと、それにともなって、痛みを感じるのだ。

戦いによる爽快感だけを描いた、ロボットアニメ。戦車や飛行機や、宇宙船に乗って、機械で相手をやっつけても、目の前で人は死なないし、痛みを感じることもない。けれど、エヴァは、痛みを感じるものなのだ。

戦うことが痛みを感じるものだと、それを描いてあるのだ。

そして、エヴァは、生き物なので、シンクロしないと、動かすことが出来ない。馬に乗る騎士が人馬一体となって、気持ちをあわせなければ、よい騎乗ができないように、エバは、操縦管の操作だけでは、動かすことが出来ない。
それは、人と人が心を通わせなければ、気持ちが通じないのと、同じだ。


そして、この物語には、キリスト教世界の言葉が多様に使われている。アダム。エヴァ。使徒。エンジェル。リリス。リリン。死海文書。ロンギヌスの槍。

エヴァンが戦うのは、使途だけれど、これは、どうも、いままでのような、宇宙からの侵略者とは、違うらしい。

キリスト教でいわれる、12使徒。これがこの物語では、全部で18の使徒が出てくる。キリスト教の使いである使徒とたたかうエヴアンゲリオンの物語は、だから、人類とキリスト教、宗教との戦いの物語なのだ。

地球に落とされた二つの進化の遺伝子、アダムと、リリス。本来正当な地球の継承者であったはずのアダムの遺伝子から生まれる使徒たち。けれど、実は、人類は、もう一つの遺伝子リリスから生まれた、リリンの末裔だったのだ。夫であるはずのアダムのもとを離れ、悪魔との間にリリンを生んだリリスのように、現代の人類は、知恵の木の実のりんごによって、知を獲得した代償に、宗教を捨てなければならなかった。それこそがまさに、リリンの末裔のゆえんなのである。

宗教を捨てた現代社会の人類は、それゆえに、心のよりどころをもたず、孤独に苦しめられる道を選ぶことになった。今まさに、現代の少年少女あるいは、現代人のほとんど全てが、自我、自分とはなんなのか、なぜ生まれてきたのか、なんのために、生きているのかという、自我との心の葛藤、戦いの中にある。それゆえに苦しみ、他者との関係性をうまくきづけずに悩む。

かつて、知識人は、その悩みを数々の哲学書や、知友とのディスカッションを通して、自らの内側への、深い洞察、思考、内省によって、解き明かそうとしたのだ。けれど、今の若い人たちは、本を読んだり、他人と討論したりしないし、哲学が何かすらしらない。それゆえに今自分が何に悩んでいて、なぜ、苦しいのかが分からない。

かつては社会の上層のごく一部のものであった知の世界は、産業革命以降の科学の発展によって、ほぼ全ての普通の人々にまで普及し、それは、宗教のような非科学的なものを否定することになった。宗教をもたない現代人は、自分の中の自我をうまく処理できない。自分はなにものなのか、なぜ生きているのかを、かつて宗教が全て与えてくれたその答えを、現代人は、すべて自分で、導き出さなければならなくなった。けれど、現代の若者たちは、その悩みの正体を知らない。宗教による、答え、価値の決定は、とても、楽で、居心地のいいものだけれど、私は、それを良しとしない。自我とはなんなのか。その応えは、やはり自分で悩み自分で答を出すべきものなのだ。

けれど、そのこと自体を知らない今の若者たちは、あるいは、引きこもり、ひどい場合は、凶悪な殺人へと、進んでいってしまう。

自我を認識する上で、他者との関係性は、その意味が大きい。他人から見た自分が自分なのか。他人に認められることで自分を認識したいのか。シンジは、エヴァに乗って、使徒を倒すことで評価される。そうすることで自分を認識できるのか。自分の存在意義を獲得し、生きる意味をもとめることができるのか。他人とうまく関われない。どうすれば、他人との意志の疎通が出来るのか。心を通わせることができるのか。他人と関われない孤独、自分一人である孤独から、逃れるにはどうすればいいのか。心の壁を全て取り払えば、人と交われるのだろうか。エヴァンゲリオンで、使徒が攻撃を防御するためのシールドは、ATフィールドと呼ばれ、そのATフィールドをやぶらないと、使徒を倒すことは出来ない。そして、そのフィールドをやぶるのには、やはり、アダムとおなじタイプの生命体リリスからとりだされたものでつくられた、「エヴァンゲリオン」だけが、作ることができるのだ。そのATフィールドによって、使徒のATフィールドをつきぬけて、使徒を倒せるのだけれど。

ATフィールドが、心の壁であるとして、自分の壁と相手の壁を取り外して、接触することの痛み。それを乗り越えてそして、他者の心と接触すること。エヴァと、パイロットたち、シンジ、綾波レイ、アスカ・ラングレーたちが、シンクロしないと、エヴァを動かせないように、人と人が心を通じ合わせてシンクロしないと、ならない。

けれど、それでは、人と人が交わって、全ての人がつながって、ひとつになれば、もう、孤独ではないのだろうか。孤独の痛みも、自我の悩みも消えるのだろうか。けれど、全ての人がつながって、ひとつになったら、それはもう、一つのもの。一人の自分。だからもう、そこに他人はいない。他人のいない場所には、自分という、認識すらない。自分という固体の確認は、他人との境界線によって、初めて、認識される。『エヴァンゲリオン』が描こうとしているのは、まさにこの部分。

宗教を捨てた人類、リリンの末裔は、だから、全ての価値を自分で判断し、決定しなければならない。今まで全て、宗教が、神が、あるいは、教祖様が決めてくれたことを、自分で決めるということは、自分自身が、宗教になること、自分自身が、教祖になること、神になることなのだ。だから、リメイク版の最終話において、エヴゥにのった主人公碇シンジは、十字架にはりつけたられたキリストのように、十字架のように、使徒たちによって、空にあげられていく。シンジ自身が、神であり、宗教になったのだから。そう考える時、テレビアニメ版の主題歌のラストの歌詞、「少年よ、神話になれ。」という、表現はああ、こういうことだったのだなと、納得できる。

この歌詞自体は、作詞者は、内容をあまりしらない、アニメを見たこともない段階で作らされたという。けれど、たぶん、最初の段階で、うたの中にいれるワードをいくつか指定されたか、あるいは、だいたいの物語の概要、あるいはテーマが製作者から語られているのだろうとおもう。それらの情報から、ここまで「エヴァンゲリオン」の終極のテーマにあう歌がつくられているのは、すごいとしか、いいようがないと、思う。

物語に出てくるATフィールドを破ることの出来る唯一の武器ロンギヌスの槍は、もともとは、十字架に磔になったキリストが本当に絶命しているか確認するために、当時のローマ兵が、キリストの体をさした槍なのだそうだ。心の壁を破る武器とは、ではいったい、なんなのだろう。けれど、それは、槍だ。痛みをともなうものなのだ。


自我の覚醒と獲得の物語『新世紀エヴァンゲリオン』その2に続きます。

 

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最終更新日  2008年09月12日 16時32分20秒
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