カテゴリ:政治経済
裁判を傍聴した一般市民(法律の専門家を除く、という意味)は、傍聴していても「何で争っているのかが、わからなかった」と感想を述べているのをニュースで見た。
さもあらん、と私も思う。裁判の争点は以下の3つである。 A)ライブドア社が粉飾決算をしたのか B)A)を堀江被告が指示して行った物なのか C)株価を吊り上げるための、風説の流布をしたといえるのか 堀江側はA)を否定し、粉飾決算はしていないと主張している。A)が無ければB)も無い。C)に関しても判断は難しいがA)が否定されたらC)についても重い罪とは言えなくなってしまう。 堀江被告は証券取引法違反でのみ起訴されている。しかしA)についての判断基準は法人税法の所得(収益)の概念と資本に対する法人税法と会社法(商法の一部)の規定によって行われる。堀江被告とライブドア社は法人税法違反で起訴はされていない。が、両者が法人税法違反していると判断されないと粉飾決算したとは言えない構造になっている。 にも関わらず、法人税法違反で起訴されなかったのは、何故か。それは粉飾した事によって利益を過大計上したとすれば、払わなくても良い税金を納めてくれた事になるから、国税は不問に付しているためだ。 では、裁判の争点を絞ってみよう。要は粉飾したのか、である。キーワードは投資事業組合である。読売新聞によると「言いたいこと言えた」堀江被告、初公判終え“自賛”と報している。その中で注目すべきは「粉飾決算に使われたとされる投資事業組合の実態を巡り、検察側と弁護側が火花を散らした」という記述である。 まず検察側の主張は、「自社株との交換によって入手した他社の株の評価額と自社株の資本相当分との差額を、売上に計上した事」が粉飾決算にあたる。これは法人税法第22条の「資本等取引に関する純資産の増減は損金または益金の発生原因から除去されている」ことに違反している。というものだ。ところが、堀江側は2つの反論が可能なのだ。 論点1)ライブドアもしくはライブドアファイナンス社自身が株式交換の主体なら検察側の主張は通る。しかし投資事業組合を迂回した取引であるために、検察側は投資事業組合が実質的にライブドアもしくはライブドアファイナンス社自身である、と立証しないといけないのだ。堀江側は、「投資事業組合はライブドアとその子会社だけでなく、他のファンドなどと共同して運営しているため、ライブドアもしくはライブドアファイナンス社自身が株式交換の主体とは言えない」と反論している。 論点2)法人税法上の資本の概念と会社法や企業会計(証券取引法の問題)の資本の概念は微妙に異なる。このため論点1)が、法人税法第14条「実質者課税の原則」に照らし 投資事業組合が実質的にライブドアもしくはライブドアファイナンス社自身である、と立証しえても、それが直ちに証券取引法違反になるのか、も判例がないので微妙な問題だ この裁判の行方を予想するに、無罪では検察の全面敗北になってしまうが、実刑判決はあり得ない。つまり執行猶予の判決が出ると私は予想する。実質的には堀江の勝ち、であろう。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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