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カテゴリ:木谷ポルソッタ倶楽部ほか
1 母の顔 これは木谷さんから以前聞いた話である。感動して、朝食の準備をする家内に話して聞かした。話しながらまた胸がいっぱいになって、目に涙が浮かんできた。
「私は母の顔がすごく嫌いでした。 なぜなら大きなやけどの跡があるからです。 よそのお母さんはあんなに綺麗なのに、何で私のお母さんは…。とか、何でこの人が母親なんだろうとさえ思ったことがありました。 そんなある日のこと。その日の四時間目のこと私はあることに気づきました。 夕べ徹夜で仕上げた家庭科の課題が手元に無いのです。 どうやら家に置いてきてしまったようです。 あたふたして勉強も手につきません。 家庭科の授業は五時間目。 私は昼休みに自宅まで取りに帰る事を決心しました。 四時間目も終わり帰る準備をしていたところ、 クラスメートが「めぐみ~、めぐみ~、お母さん来てるよ」 と言いました。私は、はっとしました。 急いで廊下に出てみると何と母が忘れた課題を学校まで届けに来ていたのです。 「なんで学校にきてるのよ!取りに帰ろうと思ってたのに!」と息を立てて問い詰めると、 「でも、めぐみちゃん夕べ頑張ってやってたから・・・」といいました。 私は、「おばけみたいな顔して学校来ないでよ、バカ!」と言って母から課題をひったくるように取り上げるとすたすたと教室に入って行きました。 自分の母親があんな顔をしていることを友人達に知られてしまったことで私は顔から火が出る想いでした。 その日の夕飯後のこと、私は父親に呼ばれました。 昼間のことで怒られるのだろうな・・・と思いました。 すると父親は予想に反してこんな話をはじめました。 「お前がまだ生まれて数ヶ月の頃隣の家で火事があってな。 その火が燃え広がってうちの家まで火事になったことがあったんだよ。 そのときに二階で寝ていたお前を助けようと母さんが煙に巻かれながらも火の中に飛び込んでいったときに顔に火傷を負ってしまったんだよ。 今お前の顔が綺麗なのは母さんが火の中に飛び込んでいってお前を助けたからだよ。」 私はそんなことは、はじめて聞きました。 そういえば今まで火傷の理由を母から聞いても、あやふやな答えしか返ってきたことはありませんでした。 「なんで今まで黙ってたの?」 私は涙ながらに母に聞くと、母は静かに言いました。 「めぐみちゃんが気にすると思って、ずっと黙ってようと思ってたんだけど……」 私は母への感謝の気持ちと今まで自分が母親に取ってきた態度への後悔の念とで胸が張り裂けそうになり、 「お母さん~」と言って母の膝の上でずっと泣いていました。 今では自分の母の顔のことが誇りにさえ思えるようになりました。家族を、私を守ってくれた母のこの顔の傷のことを・・・。」 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2016年05月07日 01時48分43秒
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