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カテゴリ:木谷ポルソッタ倶楽部ほか
3 北の田舎から来たおもとだち 北海道という名の田舎から友人が来た。 「どこへ行きたい?」 「ちっちゃいところへ行きたい。」 私の質問に友人はそう答えた。
ちっちゃいところ・・・・・・そうだよな。広大な田舎で日々生活をしている友人だ。 たまには、ちっちゃいところへ行きたいのだろう。 うん、わかった。ちっちゃな盆地『由布院』へ、私は友人を案内した。
「どこの家にも柿の木がある!」 友人は驚きながら叫んだ。 北海道には柿の木がないのか。柿の木の北限は山梨らしい。 私は初めて知った。私の方が驚いた。田舎の秋という季節には、やはり柿の木がなくてはならない。
「いいな。竹林がある」 今度は竹林を見ていた友人がうっとりとした声で言った。 エッ、北海道には竹もないのか。 そう、竹の北限は青森らしい。北海道には笹しかない。 そう、現在、アイヌの人たちが吹いている竹製の口琴さえも、昔は、木で造っていたらしい。
由布岳を見ながら、私は佇(たたず)んだ。心を静かにした。 田舎の風景をつくる柿や竹林がないという北海道に、私は想いを馳(は)せた。
そうだよな。柿の木や竹林は、北海道には似合わないよな。 それぞれの田舎には、それぞれの風景をつくるそれぞれの自然があるのだ。 私はこぶしを堅く握った。
「ちっちゃな田圃(たんぼ)ばかりだよな」 友人は嬉しそうに微笑んだ。微笑みながら、私を振り向いた。 「広い大地があるけれど、厳しい気候に耐えて生きている北海道。 狭いけれどゆたかな自然に囲まれてい生きている由布院・・・・・・ みんなそれぞれの田舎で頑張って生きているんだな」
川沿いの小径を歩いて、私たちは金鱗湖へ出た。 「これが金鱗湖(きんりんこ)ですか・・・・・・これが湖か。秋になると霧の漂う金鱗湖なのですが・・・・・」 友人は呆然と金鱗湖を眺めていた。
おいおい、霧の摩周湖と比較しないでくれないか。阿寒湖と比べないでくれないか。 由布院はちっちゃいことを自慢する田舎なんだ。 「ちっちゃいところへいきたい」 そう言ったのはあんただろう。なあっ、ちっちゃな湖だろう。
ちっちゃな由布院を十分に楽しんだ友人は、広い広い北の田舎へ戻っていった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2016年05月07日 02時11分09秒
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