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2016年11月16日
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   徳永先生物語その2
○「お母さんね、徳永先生のこと、きのう話したでしょう。その続きなんだけれどもね」
朝げの支度で忙しい家内に 子供のようにまとわりついて語ります。
「徳永先生という方は 三六歳という若さで 校長先生に抜擢された。
 けれども五年後 教えの現場に立ちたいと 自ら願い出て 平の教員に 戻られたんだ。
 東井義雄という徳永先生と親しい方がこんな思い出を綴られている。
 東井先生が 徳永先生とご一緒に 泊まったおりのことだった。
 午前三時に 目が覚めて 布団の中で もぞもぞしていると その気配を察せられたのか 徳永先生 サッとおきられ 布団の上で 合掌正座した後に 東井先生の足元に 正座した。
「東井先生 うつぶせになってください」そうおっしゃった。
東井先生驚いて「何事でしょう」と問いただした。
「まあ、うつぶせになってください」とおっしゃるばかり。
言われるままにうつぶせになると、
「これから あなたの足の裏を もまさせていただきます」
「もったいない そんなことをされたなら 罰があたってしまいます 
どうかかんべんしてください」と答えると
「東井先生は 奥様の足の裏を もまれたことはありますか」
「いえ、ありません」
「それではゆるしてあげるわけにはまいりません。 明日お宅にお帰りになったならば 私がもんだのと 同様に 奥様の足の裏をもんであげてください」そこまで言われれば 仰せのとおり従うよりほかはない。
「東井先生 人の足をもませていただくときは
まず合掌して 足の裏を 拝ませていただくのです」
もったいないやら ありがたいやら。
徳永先生は まずていねいに  足の裏をば 拝んでは 親指の指の先から 順番に 指の根もとまでもみおろされた。どの指もどの指も ほんとにていねいにもみおろされた。指と指との間が終わったら だんだん足の裏の中心部に移っていかれます。いよいよ中心部に移られると、
「東井先生、ここをグーッとおすと、腹の方までひびいてくるでしょう。腹のはたらきがよくなるんです。ここは『足心』というところなんです」
などといいながら、ずいぶん時間をかけて、踵のあたりから、足首の方までもんでくださるのだ。もったいなすぎてやりきれない。
さあ 東井先生は その日遅く 夜中の一時 我が家に 帰り着いた。
奥様は 眠らずに 「お帰りなさい」と 玄関に出迎えた。
東井先生 座敷へと 上がるなり 奥様に
「おまえ すまないが うつぶせに なってくれ」
さあ、奥様は驚いた。「何をなさるのですか」と聞きたもうた。
「これからおまえの足をもむ」
「ご冗談を言って もらっては 困ります」
「冗談でもなんでもない、とにかくうつぶせになってくれ」
奥様は 困惑して あらがいたまう。
「いやどうしても お前の 足の裏を もまねばならぬわけがある」
嫌がる奥様をうつぶせにして 拝むまねごとばかりして とにかく早くすませてしまおうと 奥様の足袋を脱がせたのであった。
両手で奥様の足の裏にさわって、ハッとした。
熊の足の裏みたいにガサガサしている。
ああ、この女は町に生まれ、大事に大事に育てられ 嫁入りしたその頃は かわいらしい足の裏をしていたに違いない。山の中の寺に嫁いできて 毎日毎日 険しい山道を 薪を背負って 山道いっぱいに 広がっている岩を 滑らないように 指の先 力を入れて 踏みしめて 何十年もしているうちに こんな足の裏になってしまったのであろうか
畠のことを見ようともせず 出歩いてばかりいる 亭主に代わって 畠を耕やし こやしを運び 
そうこうしているうちに こんな足の裏になってしまったのであろうか 
ああ、苦労をかけたなと 思ったその時に
ああ、この女は私のために生まれてきたのかもしれぬなあと
胸のうちがなにやら いっぱいになってきて
思わず知らず 心から拝む気持がおきてきて 
奥様の足の裏を 丁寧にもんであげたということだ」
話す私も涙声 聞く家内の目も うるうると 涙にくもる ひとときぞ
「今朝、お母さんの 足の裏を おがんでから もんだのは そういうわけがあったんだよ」と付け加えると
「それにしては お父さんのは 心がこもっていなかった」
「この話を したくてさ 足の裏をもんだんだもの」
「だから気持がこもらないのよ」と家内の手厳しい一言だ。
「今度、もむときは 心をこめて もませてもらおう」
そんな夫婦(めおと)の朝の会話があったとさ。






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最終更新日  2016年11月16日 01時24分50秒
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