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カテゴリ:鈴木藤三郎
「日本経済思想史学会第32回大会」
共通課題「報徳と協同の思想ー自治・実業・教育ー」課題の提起 松野尾 裕(愛媛大学)にテツオ・ナジタ著の『相互扶助の経済』(みすず書房2015年)が紹介されている。 報徳を民衆の経済(ordinary economies)という観点で江戸期の無尽講から明治期の報徳運動、戦後の協同組合にいたる200年に及ぶ分析で、英語で著作された本作は今後世界的に報徳を考えるなかで重要な位置づけを示すものと思われる。 松野尾氏引用 「岡田は報徳運動に、経済的な事業展開のための新たな空間を思い描いていた。また、自由主義的な功利主義が、政治のプロセスを法が管理するという立憲的な公的秩序の思想を前提にしていることをきわめて正確に理解していた。この国家的な公共空間には、既存のリーダーシップや地域社会のやり方にもとづいた地方自治がふくまれるはずである。岡田にとって地方自治とは、村落とその相互扶助組織を意味していた。したがって相互に助け合う人々を主眼にした実践倫理はそのまま存続し、自由主義的な功利主義という近代化概念の枠内で行動するよう人々を力づけると思われた」(p.223) 「それは、当時近代化の主流であると考えられていたものから、遠く離れた位置に報徳を置こうとする戦略であった。」(p.224) 松野尾氏は二宮尊徳四大門人の富田・斎藤・福住・岡田のなかで、岡田の事業が最も成功したのは「岡田が進めた遠江国報徳社の活動が近代の中にうまく流れ込んだから」とされる。 岡田は「最大多数の最大幸福」を説く功利主義を「実利主義」と呼んで「報徳の道、これを演繹すれば実利となり、興国安民の術、公同結社の法、皆なその中に行わる実利の学、帰納すれば皆な報徳の道に入るべし」と説いて、功利主義は報徳と矛盾しないとした。 松野尾氏は「岡田のいう報徳は、国制(天皇制国家)の枠内で、それとは別の次元に公的秩序をつくりだす「自治制の機の役割を果たそうとしたのだと考えられる」と結論付ける。 💛なぜ日光や相馬など報徳仕法が成功した地域で、報徳運動が衰退し、遠州地方において報徳運動が栄えたのかは問題である。 ただまだ研究の視野は遠江国報徳社→大日本報徳社にとどまり、静岡県報徳社事蹟で紹介される遠譲社や報本社の活動までは視野に入っていないようではある。 なぜ静岡県さらに愛知県へと、特に遠州地方で、燎原の火のように熱烈な報徳運動(一種報徳教ともいうべき宗教的熱情をたたえて)が起こったのか? なぜ報徳運動からは天皇制国家に協賛する活動のみが全面に出てきて、軍国主義化に抵抗する考えは出てこなかったのか?それは二宮尊徳の思想そのものに内在するものなのか?という課題について今後の研究がまたれる。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2021年06月21日 19時27分10秒
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