途中のコンビニで原付バイクの税金を納めてから肴町公園に向かった。コンビニで費やした時間だけ遅刻して公園に着いたのだが、参加者がいつもより少ない。デモに出発してからの集計では20人ということで、集会での私の目算から増えていない。季節がよくなって今日は「デモ日和」となったのだが、好天好日はデモばかりではなく他のことをやるにもいいということらしい。
良いことか悪いことかよくわからないが、デモ参加者の多寡はあまり気にならなくなった。2012年7月20日から始まった金デモはもう300回を越えた。長い長い脱原発の道程になっているが、長い道であれば広い道も隘路もあるのだ。脱原発が実現するまでデモを止めなければ、いずれ成果が見えだしてくるのは当然の論理的帰結である。成果が見え始めたら広い道が必要になるほど人は集まる。それまで道を途切らせなければいいのだ。そう思う。
肴町公園から一番町へ。(2019/5/17 18:17~18:38)
今日もゆっくりと暮れていく仙台の街を楽しむデモである。紙幣の表裏がどうだとか、十二単は女房の正装だとか、どう処理していいかわからないスピーチもあったが、20人のデモは時間通りに肴町公園を出発した。
しばらくぶりの肴町公園出発で、デモのコースは肴町公園から細道を東に進んで一番町に出る。一番町をわずかな距離を北進して広瀬通りに左折する。広瀬通りを晩翠通りまで西進し、晩翠通りから青葉通りに出て仙台駅方向に向かい、他のコースのときと同じように仙都会館前で解散となる。
一番町。(2019/5/17 18:39~18:40)
デモの途中で市民に呼びかける今日のメッセージの一つは次のようなものだった。
5月15日、角田市の仙南クリーンセンターで放射性廃棄物の本焼却を開始しました。これに対し、地元住民は、組合に中止を申し入れるとともに、センター前で反対を訴えました。申し入れでは次のように訴えています。
<今回の本焼却は、住民の健康を害し、生活を脅かすものであり、かつ住民の反対を無視して決定されたものであり到底容認できません。
これに対して強く抗議し、子どもや住民の健康を守る立場から、本焼却を直ちに中止することを求めます。>
一方で、大崎市でも、一時中断していた試験焼却を6月10日に再開すると明らかにしています。大崎でも、住民が裁判に訴え、中止を求めています。
私たちは、こうした仙南や大崎の住民とともに、あくまで放射能の拡散につながる焼却に反対し、安全保管の方針をとることを強く訴えていきましょう!
こうした地方自治体や地方公共団体の動きは、放射線障害や安全な放射線取扱についての十分な知識を持たないまま国や県からの偽情報による強制という側面もあるだろう。しかし、地方自治体・団体と言えども住民の生命・健康を守る義務こそあれ、損ねる権利などはけっしてない。たとえそれが無知に基づいていたとしても将来的な責任を逃れることはできない。
上からの指示・命令だからと言って責任を逃れることができないという考えは、先の大戦の責任を問う形で世界中に厳然と認められてきた。無知に基づいた行為と言えども免罪されるわけではない。
低レベル放射線による晩発性障害がじわじわと発生することは避けられない(それは、東電1F事故以前には放射線を取り扱う者にとって常識に近いものだった)。晩発性障害の発生を政治的に隠蔽しようとする動きはあるだろうが、隠蔽が成功しおおせるという歴史を想像することは難しい。事実と科学的検証が必ず隠蔽を覆すだろう。科学の歴史は後戻りしないのである。
広瀬通り。(2019/5/17 18:41~18:44)
夕暮れはじわじわと進んでいくが、一番町に入るとそこはトンネルのようなものでで、いったん途切れた夕暮れは広瀬通りにでてふたたびデモを包む。
晩翠通り。(2019/5/17 18:47~18:52)
広瀬通りから晩鮨通りに左折するデモの写真は、夕暮れの空を背景にデモ人は列をなす影にしか映らない。
神ならぬ者らやさしも夕映えの鬱金の中の黒き人々
小島ゆかり [1]
影となった〈神ならぬデモ人〉の味わいも悪くないのだが、記録性が大切なのでRAWファイルの編集ソフトで「シャドウ」を効かせて人物を判別できるように修正した。当たり前のことだが、西の空を背景にすれば人は影になり、東の空を背景にすれば人物は鮮明に浮き上がる。
青葉通り。(2019/5/17 18:54~18:59)
晩翠通りから青葉通りに曲がると大きく成長した欅並木が道の上を覆っていて、コースの中でもっとも暗いところだ。ほかの季節では暗すぎていい写真を撮るのが難しいのだが、今日は夕暮れらしい写真になった。
西空を背景とすれば欅並木も黒々と翳っていて、同じ並木を西から眺めると青葉若葉の緑にはまだ鮮やかさが残っている。
青葉照り青葉は翳るひともとの見たるかぎりの〈青〉ぞかなしき
坂井修一 [2]
[1] 小島ゆかり《歌集 水陽炎》『現代短歌全集 第十七巻』(筑摩書房、2002年)p. 349。
[2] 坂井修一《歌集 ラビュリントスの日々》『現代短歌全集 第十七巻』(筑摩書房、2002年)p. 328。
小野寺秀也のホームページ