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鎌倉橋残日録 ~井本省吾のOB記者日誌~

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政治・外交

2016.09.15
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カテゴリ:政治・外交
私は麻薬犯罪容疑者を2ヶ月間で1000人以上殺害してしまうドゥテルテ・フィリピン大統領の超法規的政治に恐怖心を覚える反面、フィリピン社会安定のために強引な手法を厭わない姿勢にうらやましさを覚える。

彼が日本の首相だったら、もっと国益を増進する政策を考えるのではないか。ふと、そう考えたくなる。

日本は中国や韓国、そして米国の思惑を気にしすぎてビクビクし、「国家」として縮こまっているからだ。まさに外務省の好きな言葉「ハンディキャップ国家」(国家として世界にカネは出すが、軍事貢献はしない国家)そのまま、である。

その外交政策は屈辱的で、国家としての誇りを感じさせない。外国人も国内での活動は自由勝手で、外国のスパイ行為を許している。このままで日本社会の安全と国益は大丈夫なのかと思うほどに。例えば、西村幸祐氏は北朝鮮の核・ミサイル開発が進む背景に、日本の構造汚染があると喝破する。

朝鮮学校への補助金拠出が巡り巡って北朝鮮が核・ミサイル開発に役立っている。パチンコなどの資金が北朝鮮に渡っていることは久しい以前からのこと。それだけではない。

<核・ミサイルの技術開発にどれだけ在日が関与しているか? 京大や立命館の教官にウヨウヨいるはずだ。そして日本以上に韓国が工作され、シナが隠された援助を行う>

日本のメディアも、日本が構造的に北の資金源になっている問題を追及しない。「日本にスパイ防止法ができなければ、永遠に日本の国民、富、資産、知的財産が収奪され続けるだろう」と指摘する西村氏は、先日亡くなった自民党の政治家、加藤紘一氏について、次の事実を紹介している。

<官房長官時代に北朝鮮にコメ支援を行った時には、北朝鮮労働党統一戦線工作部の工作員、吉田猛が加藤氏のスタッフになっていた。こんなことは氷山の一角で報道されない。日本の政界、メディアの中枢に巣喰うスパイの自由になる。普通の国なら加藤紘一氏にもスパイ容疑の嫌疑がかかるだろう>

ドゥテルテ氏なら、加藤氏を容赦しなかったろう。

だが、北朝鮮の船舶は中東で船名、国籍を変えながら取引をしているが、その国旗は日本の港で偽装されている。「北朝鮮はシリアとの関係を深め、核開発だけなくサリンなど有毒ガス兵器の開発に関与している。(それに伴って)実戦経験を積む北朝鮮軍は明らかに日本の脅威となる。日本の官憲、情報機関は何をしているのか?」と西村氏は憤る。

スパイ防止法だけではない。北朝鮮、中国が軍事力を高める中で、日本の軍事予算の拡大は急務であり、日本も核持込みを早急に進める必要がある。

世界的には、それが常識なのに、日本は周回遅れの非常識な平和ボケの中に沈潜し、軍事予算を大きく拡大する政治的状況にはない。今日、代表選が開かれる民進党などは典型的で、およそ中国や北朝鮮との軍事的な緊張は選挙の話題にもならない。

こうした雰囲気の中で、安倍政権も軍事力の拡大を明白に打ち出しにくいことは理解できる。ドゥテルテ大統領は民主主義も未成熟な中小国のフィリピンだから大胆な行動がとれる。民主国家の経済成熟大国である日本でできることはかぎられている、という言い訳も聞こえてくる。

ドゥテルテ大統領のような行動をとったら、かつて対中外交など米国からの相対的独立政策をとった田中角栄首相がロッキード裁判で米国から排除されたように、政治的生命を奪われる危険もある。

だが、民主主義大国の米国ははるかに日本よりも強い外交路線を打ち出しているし、英仏独など欧州の主要先進民主大国でも日本よりは国際社会で存在感を示している。

憲法9条のある「世界の非常識大国」である日本との違いがそこにある。アメリカの外交に真正面から反発するドゥテルテ大統領にも政治外交の世界から抹殺される危険がつねにある。だが、ドゥテルテ氏なら、時代のうねりをにらみながら、それを回避する権謀術数も併せ持っているのではないか、という期待もある。

日本も同じではないか。考えて見れば、トランプ大統領候補が内向き志向で、「日本は自分のことは自分で守れ」と言っている今は、アメリカからの日本が相対的な独立を進めるチャンスなのである。

国会議員の3分の2以上の賛成が得られる見通しとなった今、憲法9条の改正も可能という機会に恵まれている。やるか、やらないか。ドウテルテ大統領ほどでなくとも、一歩踏み出す意識があれば、事態は大きく変わる。

いたずらに近隣諸国やアメリカと事を構える必要はないが、英霊を慰霊する靖国参拝など、外交の干渉を受けるべきではないのに、安倍首相も稲田防衛大臣も参拝できない。その呪縛から逃れる努力をすべきときである。

安倍首相にそう望みたい。







Last updated  2016.09.16 11:07:22
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2016.09.01
カテゴリ:政治・外交
自民党の二階俊博幹事長の存在感が増している。

安倍晋三首相の総裁任期延長論をいち早く表明して、安倍首相への支持と協調を積極的に示す一方、沖縄県の翁長雄志知事や東京都知事に就任した小池百合子氏とも会談、協調路線をとる。親中派として軍事的な緊張感が高まっている中国とも対話を重視し、友好姿勢を前面に出す。

あつれき、摩擦を抑制し、仲良し路線を貫く。その融通無碍に「現状維持」を図る政治が脚光を浴びているのだ。

政治とは大きな波風を立てずに「うまくやること」。国民の多くが求めるニーズに沿って、きめ細かく政策を実現して行くのが自民党伝来の政治だった。戦後、長く与党として政治の実権を握って来たのもそのためだった。

中で頂点にいたのが、コンピューター付きブルドーザーと言われた田中角栄氏だった。あまりの金権政治に国民の支持を失ったが、最近、角栄政治が再評価されているのも、その「うまくやる」政治の実行力によるものだ。田中金権政治を批判してきた石原慎太郎が再評価の口火を切った点にそれが表れている。

二階幹事長に田中氏ほどの実行力はない。だが、若くして田中派に属し、田中氏を政治家として最も尊敬してきた。敬愛する政治家について求められる政策を一つひとつきめ細かく実現して行くこと。二階氏はそうした能力に長けている。

二階氏と安倍氏の政権構想、政治哲学は異なる。二階氏は「媚中派」とも呼ばれる親中派。安倍首相は日本の歴史と伝統を重視する保守思想の持ち主で、日本の近現代史を口汚くののしる中国や韓国の批判にホンネでは強く反発している。

しかし、その安倍首相の支持率が増し、また国際的にも「法と秩序」を重んずる安倍首相への支持が高まり、南シナ海、東シナ海で無法な行為を繰り返す中国への批判が強まっている。

二階氏はこうした動きには敏感で、今は「安倍支持が最適だ」とにらんでいるようだ。安保法案に賛成し、安倍総裁任期延長論をいち早く表明したのはその現われだろう。

政策構想は希薄だ。力のある政治家について、その求める政策実現に動き、経済大国となった現在は、できるだけ「現状維持の政策」を続けるのが心情だと思える。

雑誌「Hanada」10月号で、二階氏はこう述べている。

<「ポスト安倍は安倍総理」--これが現時点での私の考えです。安倍政権の三年半を振り返ってみますと、近年、これほどの実績を挙げた総理大臣がいたでしょうか。……国際的な評価も極めて高い。……昨年十一月時点で、のべ八十三カ国・地域を訪れ、国内外での首脳会談数は三百七十回を超える。……先頭に立ってこの国を引っ張っておられる。……このまま行けば、歴史に残る総理大臣の一人になる。私は大いに期待しています>

安倍首相と意見の合う点も少なくない。アベノミクスの持続を目指した財政投融資はその1つだ。バラマキと批判の強い公共事業など旧来の自民党の政策は大得意で、幹事長としての目配りは相当なものである。

一方、最近の中国の軍事攻勢は親中派としも困りものであり、そこでも親中派ならではの仕事が増えている。「Hanada」10月号で、次のように語っている。

<公海においては、(国際法など)に則ってやるのが大前提であり、……程永華駐日大使にも、そのことをしっかり申し上げました。何よりもこのような問題では、両国がエキサイトしないよう慎重に対応し、話し合っていく必要があります。……何かの拍子に思わざる事態が発生しないとも限りません。平和的に解決するためには、やはり日中首脳会談などを頻繁に行い、とにかく仲良くやろうよという話をしてゆく。……日本のことを考えた時、中国と仲良くやっていくことができない人たちに政治を語る資格はありません>

一触即発の危機が今そこに迫っている時、これは多くの国民の声でもある。二階幹事長の存在感が高まるゆえんだ。親中派の二階幹事長が言えば、中国も自制してくれる。実際、最近、侵略行為は沈静化しつつある。二階氏の成果と見られつつある。

だが、それも程度問題である。二階氏は中国の侵略に自戒を促す一方で、安倍首相や稲田朋美防衛大臣の靖国参拝の中止を強く働きかけているといわれる。

実際、両人は靖国参拝を行っていない。これは中国を増長させる一方、多くの日本国民ならびに中国の攻勢に眉をひそめる東南アジアの人々を失望させている。

しかも、中国の経済悪化や国内の政治的緊張が高まった場合、不満をそらすために、たとえ親中派の二階氏の要請があったとしても、日本への侵略攻勢を強める危険性は小さくない。

二階幹事長の「うまくやる」政治外交が持続する保障はないのである。むろん安倍首相も、徒に中国を刺激する政治外交をとる必要はない。が、国民が屈辱を味わうような政治を続けるのも好ましくない。

二階幹事長とどこまで二人三脚を続け、どこで袂を分かつか。その舵取りは容易ではない。









Last updated  2016.09.01 18:17:30
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2016.08.20
カテゴリ:政治・外交
中国公船の尖閣諸島への領海侵入があると、日本の外務省は中国の駐日公使に抗議し、退去を求める。だが、それ以上の「行動」には出ない。

これは今に始まったことではない。領海侵入があると、国会内で議員から外務省などの閣僚や政府高官がしばしば質問を受けてきた。

議員 「不当な領海侵入にどう対処するのか」
政府 「領海から出るように断固抗議します」
議員 「断固抗議しても出て行かなかったり、再度侵入したら、どうしますか」
政府 「再度、断固として抗議しします」

「断固」だけが強い調子だが、口先だけ。「実力排除する」とは決して言わない。そうした問答が今も続いている。

北朝鮮も中国も、腰が引けた日本政府の姿勢を十二分に読んでいる。だから、ノーリスク、平気で何度も侵入を繰り返す。そのうち本気で載り込んでくる危険も高まっている。今そこにある危機だ。能天気のマスコミはその危機をわかっていない。

ただ、かつてはそうではない閣僚もいた。梶山静六官房長官は1997年5月26日、一歩踏み込んだ発言をした。

尖閣諸島の日本領有に抗議する香港、台湾の活動家らが同諸島への上陸を目指し、船で接近していることについて「(上陸の強行)は法令違反であり、関係省庁が協力して、適切な方法により断固として排除する」と述べ、拿捕(だほ)などの厳しい措置を取る意向を表明したのだ。

その後、しばらく上陸に向けた動きはピタリと止まった。「断固抗議」から「断固排除」への一歩踏み込んだ発言に、梶山長官の「ヤル気」が伝わったのだ。

腰が引けた姿勢が、舐めた態度を誘発する。実はこの梶山発言の背後には、役人たちの弱気な態度があった。

同発言の1カ月ほど前、沖縄県の石垣市議らが行政活動の一環として尖閣諸島に上陸、産経新聞記者が同行取材した。その際、古川貞二郎官房副長官が記者会見で、「海上保安庁は『島の所有者は上陸を認めない』と事前に市議に説明した。それを無視して上陸したのは遺憾だ」と、市議らを批判した。

それを見て、中国や香港、台湾の政府やマスコミが一斉に抗議した。中国の外務省スポークスマンは「日本の官房副長官が尖閣諸島に上陸した行為と日本政府の政策が抵触していると明示したことについて、われわれは注意している」とコメントした。

香港の新聞も「日本政府は遺憾を表明」との見出しを掲げ、日本政府が石垣市議らの非を全面的に認め、中国、台湾などの立場に配慮を示したかのように報道した。

尖閣諸島を日本固有の領土と主張しながらも、中国などに配慮し(しすぎ)て、日本の市議らを批判する。役人に典型的な屈辱的な対応が、中国側に逆手にとられ、都合よく利用されたのだ。 

梶山長官は違った。1996年7月、都内の政治結社が尖閣諸島の北小島に灯台を建設した際、同長官は「(尖閣諸島の)領有権は厳然とわが国にある。合法的にそういうこと(灯台建設)をすることに対し(政府が)とやかく申し上げる立場にない」と語った。

梶山氏は陸軍士官学校出身で、強面の風貌から「武闘派」「大乱世の梶山」などと呼ばれたが、「兄の戦死を痛く悲しんだ母を見て二度と戦争を起こしたはならない」と政治家を志したといわれる。「日本人の血であがなった憲法9条の精神を捨ててはならない」と述べるハト派の一面もあった。

だから、自身の発言には十分注意しており、「断固排除」の発言も中国側の一方的な侵入を防ぐ計算があったと言われる。同時に、「屈辱的な発言」を繰り返す役人への不満が保守派の日本人に高まっている状況を横目でにらみ、日本人の真情にも配慮したのだろう。

梶山氏を「政治の師」とあおぐ菅義偉・現官房長官はこの辺りの事情を十分に理解している。中国の軍事力は当時とはケタ違いに高まっている状況は無視できないし、経済不振から国民の目を外部(日本)に逸らそうとする動きが習近平主席や中国軍に強まっていることも、注視しているだろう。

だから、安倍首相も菅長官も中国の挑発に乗らず、慎重にならざるをえない。中国が冒険主義的行動をとろうとしても「長い目で見ていいことは何もない。日本との経済協力を大切にした方がいい」と説得に努めることが大切だと思っているはずだ。

その事に異論はない。だが、海保、海空陸の自衛隊、そして外務省もはイザという時に備えて対応策を練っておくことが不可欠である。役人に大きな絵は描けない。安倍政権が対中戦略を具体策を用意して役人をリードしなければならない。

イザという時、「この方針で行け、後は自分が責任をとれ」。そういう覚悟を持ったリーダーがいれば、現場は誇りを持ち、士気を高めて行動できる。

梶山氏にはその心意気があったのではないか、と想像される。安倍首相、そして菅官房長官もその心意気で現在の「今そこにある危機」に臨んでもらいたい。







Last updated  2016.08.21 13:08:12
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2016.06.11
カテゴリ:政治・外交
舛添知事批判のキモは「都民のために働いていない」ことにある。働いていれば、政治資金の使い方に多少のお手盛り、公私混同があっても有権者は気にしない。

前回のブログでそう書き、石原慎太郎・元都知事だって、危なっかしい点が見られた。都への出勤だって、しばしばサボっておりその点、舛添氏と甲乙つけがたい。

そう書いたら、「あの石原氏の姿勢は今も許せない」という女性が相当いるという。「そうだろう」とは思うが、では、石原氏を都知事の座から引きずり下ろしたか、となると、今回の舛添知事よりもそういた声はケタ違いに低いと思われる。前回、書いたように、都知事としてそれなりに汗をかいて仕事をしていたからだ。

この人間に任せれば安心かどうか。究極的にはそれで決まる。あれほど汚職、政治資金問題で騒がれた田中角栄・元首相を今、石原氏は高く評価している。

1974年当時文芸春秋で「君、国売り給うことなかれ――金権政治の虚妄を排す――」と田中氏を強烈に批判した石原氏は、最近田中氏の生涯を一人称で描いた「天才」を上梓、大ベストセラーとなった。

カネにまつわるマイナスの問題以上に、国家と国民のために仕事をして来たことを再評価したのだ。
極論すれば、汚れた政治資金問題を抱えていようが、国益のためにそれをはるかに上回る仕事をしているかどうかで、政治家の評価は決まるのだ。家族と食事した費用も政治資金で支払うといった「不適切な公私混同」。そんな「みみっちい」ことなど、本当はどうでもいいのだ。

国民が本気になるのは「こいつらに任せて大丈夫か」と不安になる時である。然り。2009年から2012年にかけて、民主党が政権をとったとき本当に「危ない!」と思った。

初代内閣安全保障室長を努めた佐々淳行氏は2011年1月に「彼らが日本を滅ぼす」(幻冬舎)、同7月に「ほんとに彼らが日本を滅ぼす」(同)と、半年の間に2度も危機の書を書き下ろしで書いた。

それほど、焦燥感に駆られていたのである。私も同書を読んで全く同感だった。政治が機能しなくなり、あらぬ方向に向かうと、国家は衰亡の道をたどる、と実感した。

その民主党(現民進党)の岡田克也代表は昨日、ケネディ駐日米大使と会談し、安全保障法案の廃止を求める民進党の立場について「法が通る前に戻るだけだ。日米同盟は非常に重要と考えている」と説明したという。

これを米国がどう受け取るか。「今さら何を言っているのだ!」としか思わないだろう。米軍事予算が削減の道をたどり、もはや東アジアでは日本との集団的自衛権を強めない限り、中国や北朝鮮の攻勢に耐えられないだろう。これが日米の安全保障当局の共通認識である。

岡田代表はそれをまったくわかっていない(風情である)。「集団的自衛権は違憲の疑いが極めて濃い」とケネディ氏に伝えたという。そんな論法が米国に通用すると本気で思っているのだろうか。

同じ日の新聞に中国海軍の艦船が尖閣諸島周辺の接続水域を初めて航行し、日中間の緊張が高まっていると伝えている。イザという時に日本は備えねばならない。今、その危機の只中にある。

こうした現状を民進党と岡田代表はどう考え、どう対処しようとしているのか。仕事ができない――。民主党政権時代の悪夢は消えていない。やはり彼らに任せたら「日本を滅ぼす」としか思えない。

「リーマンショック級の経済危機が来なければ必ず消費税を10%に上げる」と約束していたのに消費増税の再延期を決めた安倍首相の政策を、私を含む多くの有権者が危ういと感じている。財政再建をどうするのか? 税収増が期待できるのか? 社会保障政策は大丈夫か? 

多くの不安が頭をよぎり、その分、7月の参院選の成果は不透明になりつつある。だが、それでも民進党に任せられるか。やはり安倍政権「一強」は続くのではないか。

危ない点を抱えているのに、ほかに交代する政権がない「一強」状況は本当は良くないと分かっているのだが。







Last updated  2016.06.11 18:07:15
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2015.09.10
カテゴリ:政治・外交
自民党総裁選で無投票再選を決めた安倍晋三首相は今月半ばでの安保法案成立にめどをつけ、長期政権をめざす。今後はアベノミクスの建て直しが最大の課題と言われる。

中国経済の減速で輸出や海外事業にかげりが見える中で、2017年4月には消費税率10%への引き上げを余儀なくされているからだ。人口減少、少子高齢化の中で経済成長を維持するのは容易ではない。

だが、成熟社会の今の日本で政府のやれることはほとんどない。むしろ政府はできるだけ何もやらないことが日本のためになる。つまり「小さな政府」に徹し、規制撤廃、行政改革を断行し、多くを民間企業の創意工夫に委ねることだ。

財政悪化のもととなる国土強靭化計画など絶対に推進すべきではない。本四架橋、青函トンネル、東京湾アクアライン、北海道の高速道路などに見るように、すべて赤字を垂れ流す元凶だ。

政治家と役所が土建業界と結託する予算の大盤振る舞いは、国土強靭化ではなく、国費蕩尽化計画なのである。

だが、満州で国土開発計画を推進した岸信介氏を祖父に持つDNAからか、安倍首相は「大きな政府」への傾斜が強いのが玉にキズである。

「民間企業を信頼せよ。自分の手柄と権益拡張をもくろむ陣笠代議士や官僚の甘言に乗ってはいけない」と言いたい。

むしろ安倍首相の長所である政治外交の世界での活躍を期待したい。まずは長年の課題である憲法9条の改正に取り組むこと。簡単にはできないだろうから、同時に外交課題を実現に取り組むことが大事だ。

1つは北方領土問題を軸とするロシアとの外交交渉だ。ウクライナ問題による欧米の経済制裁と原油価格の下落でロシアは経済的に窮迫しており、極東開発で日本の支援を望んでいる。そこを足がかりに北方領土返還交渉を前進させる。

メドベージェフ首相ら閣僚が択捉島に上陸して開発を進めようとするなど、日本人の感情を逆なでする行為に及んでいるが、それは表面的なことであり、日本が支援をほのめかせば、必ず反応するはずだ。

ウクライナ問題を抱える米国と欧州は日本のあからさまな対ロ援助を許容しないだろうが、ここにこそ安倍外交の本領がある。

ホンネでは米欧もあまりロシアを追い込んで対立を深めたくない。ウクライナ侵略を拡大しなければ、雪解けに持って行きたいと考え、落としどころを探っている。その着地点は容易ではないが、もしかすると、雪解け外交の突破口を築くのに最も適しているのは安倍首相かも知れないのだ。

ウクライナ問題と北方領土返還交渉と極東開発をつなげて日ロ米欧全体のウィン―ウィン関係を築く。それができれば世界の外交史に残る偉業となるだろう。

それは日中関係改善のテコともなる。

米中関係は今、凍てつきつつある。習近平国家主席は今月下旬に米国を訪問するが、習氏が希望した米議会での演説は米側が拒否した。4月に熱烈歓迎された安倍首相とは好対照だ。

アラスカの米国領海に中国軍艦5隻が航行するなど中国のあからさまな軍事行動や米国へのサイバー攻撃が目立ち、中国内で人権侵害も続くことから米国では中国非難の大合唱が起こっている。

「国賓待遇をやめろ」、「訪米をキャンセルせよ」、「ハッカーを止めない中国を制裁せよ」という声がメディアや共和党などの間でこだまし、大統領選を控え、オバマ大統領も融和的な態度をとれない。

上海株暴落で米国の株価も下落し、アメリカの個人投資家も中国への不満が高まっている。これまでの中国重視とはすっかり様変わりの状況だ。

ただ、そうは言っても、米国の国債を大量に購入しているのは中国であり、中国経済の失速で国債投資が大幅に減少するのは米国も困る。

中国そのものも経済失速でホンネでは日本の協力を得たい。安倍首相の活躍の余地は大きいのだ。
もっとも外交はリスクと背中合わせ。日本に世界を股にかけた外交ができるなどと、夜郎自大に陥ったらとんでもないしっぺ返しを食らうことだろう。

だが、それだからこそ、これまでの首相にはない優れた外交力を持つ安倍首相への期待も大きいのだ。ぜひチャレンジしてもらいたい。






Last updated  2015.09.10 18:32:16
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2015.09.07
カテゴリ:政治・外交
日本経済新聞6日付けの「日曜に考える」のテーマは「安保法案、経済界から見ると」。

同法案賛成派の葛西敬之・JR東海名誉会長に対し、反対派として登場したのが、元中国大使を勤めた前伊藤忠商事会長、丹羽宇一郎氏だ。

その論理展開が危なっかしいというか、親中姿勢が目立つのだ。

安保法案を評価しない理由はこうだ。

<政府の裁量権が大きい。白なのか、黒なのか、はたまた灰色なのか。ときの政権が決めることができる。……『現状では』と限定が付く。『現状』は絶えず変わり得る。10年後に戦争が始まりそうなときに『法律にそう書いてある』となるのが怖い。>

法律には大なり小なり政府の裁量権がある。安保法案は「それが大きい」と丹羽氏は言うが、現行憲法の成立当初、時の吉田茂首相は「自衛のための戦力も持てない」と明言していた。朝鮮戦争が勃発するや、米国の圧力を受けて、警察予備隊ができ、その後、保安隊を経て自衛隊が発足した。憲法9条の規定は完全に無視された形だ。

これに比べれば、今回の安保法案の裁量権は小さい。何が言いたいのか。「現状」が変化すると、それだけ裁量権は変動する、ということだ。

しかし、法治国家である以上、法的安定性の確保は必要であり、裁量権には枠を設けるべきだ。それが今回の安保法案の提出なのである。まじめで実直な姿勢と言うべきだろう。

むろん、より明快な法的安定性を得るには憲法を改正する必要がある。丹羽氏は「憲法学者の8、9割が違憲の疑いがあるというのに、憲法学者の声を聞かないのはおかしくないか」と批判する。

しかし、憲法学者の多くは、圧倒的多数の国民が存在を認めている自衛隊を否定せず、「個別的自衛権までの解釈改憲はいい。集団的自衛権はダメだ」という。現状追認の好い加減な憲法論ではないか。

憲法改正は戦後、何度も俎上に上りながら、実現しなかった大きな理由は国会の3分の2の多数を得なければならないという厳しい規定によるものだ。

丹羽氏はそこを見越してか、「集団的自衛権を行使するのなら憲法を改正すべきだ」と主張する。

ところが、憲法改正に賛成か否かを問う質問に対しては、「イエスでもノーでもない。必要があれば直す。戦後70年も現憲法でやってきた。国民的議論もないままで改正はできない」とかわす。

伊藤忠の社長、会長、中国大使まで勤め76歳にもなって、憲法9条の改正に明確な賛否を言えないというのだ。「必要があれば直す」というが、「だからいま、必要かどうか」と尋ねているのではないか。

そこに親中派としての立場が影を差してはいないか。日本の安全保障は大事だとわかっていながら、中国の思惑を気にかける右顧左眄。ガス田開発についての意見がそれを映している。

<――政府は東シナ海で中国のガス田開発がさらに進んでいると発表しました。
 「2008年に中間線付近のガス田は日中が共同開発することで合意した。中国が10何カ所も勝手に開発していたならば、なぜずっと黙っていたのか。7月になってわかったのではないはずだ」
 ――黙認していたことになりますか。
 「なるだろうね。……この間まで安保法案は北朝鮮とイランに焦点を当てていたのに、……急に中国を想定して議論を始めた。これからの日中関係を考えたら、決してプラスではない」>

日本政府がガス田開発を発表しなかったのは、発表によって中国との緊張や摩擦が高まるのを恐れてのことだろう。私自身はそんなに消極的にならず、日本を無視した中国の行動について発表し、中止を求めるべきだったと思う(水面下の対中交渉ではやっていたかも知れないが)。

それにしても、「突然の発表が日中関係にプラスではない」というのは納得できない。ガス田開発は実は開発そのものよりも開発拠点を軍事基地化することに狙いがあるとも言われる。その行為を黙認した方が日本の国益にかなうと、丹羽氏は考えているのか。

丹羽氏は日米同盟を重視する政府の姿勢にも疑問を向ける。

<いま中国は日本のことを日本とでなく、米国と話そうとしている。間もなく習近平(国家主席)が訪米する。オバマ(大統領)が急に中国と手を握ることもありうる。かつてキッシンジャー(元国務長官)がやったみたいに、我々の知らないところでジャパン・パッシングが進んでいるのではないだろうか。それなのに米国の後について『中国包囲網をやります』なんていっている。日本の外交はあまりに正直すぎる。>

これがかつて日本を代表して中国に駐在していた元大使の意見なのである。まるで無責任な評論家的な発言だ。と言うよりも、中国寄りだ。日本は米国にソデにされるような弱い存在なのだから、中国との関係を良くした方が得策だというのだろう。中国には頭(こうべ)を垂れ、抵抗しない方が良い、朝貢外交がいいと言っているに等しい。

なぜ安保法案を整備するかと言えば、軍事予算を削減する米国に協力して中国の軍事攻勢に備えるためだ。米国政府は集団的自衛権の行使を容認する今回の安保法案に対し、公式に歓迎の意を示している。

むろん政治外交は「一寸先は闇」である。米中の間で日本の頭越しに握手することはありうる。いや、だからこそ、日本は米国との協力関係を強めているのである。「米国は中国よりも日本との関係を重視した方が長期的に得策である」と説得しつつ。アジアや欧州の多くの国もそうした緊密な日米関係を評価している。

その日本を米国はむげにはできない。中国との関係を改善したとしても、それは日米同盟と両立する範囲内においてだろう。そういう環境を築くことが外交の要諦である。

日本は中国と敵対関係を続けるべきでもない。日米関係を安定的に保って、抑止力を強めることが、結果として、日中関係の改善に資するはずだ。安保法案の整備に当たり、安倍政権が国会でことさら中国の脅威を言い立てなかったのも、事を荒立てず、中国との外交関係の改善を意識してのことだろう。

安保法案賛成派の葛西氏は、その点を心得ている。

<日米が揺るぎない同盟で結ばれていると思ったとき、中国は初めて紳士的でリーズナブルな隣人になる。それは経済関係にも良い影響を及ぼすだろう。抑止力を持たない国は地域紛争に巻き込まれ得るということをこれまでの歴史が証明している。>

正論というべきだろう。

丹羽氏の論理は、中国重視という姿勢だと考えれば、一貫している。中国にしてみれば日本の防衛力増強も日米同盟強化も困る。その思惑に寄り添った発言だ。中国の国有企業CITIC社(香港上場企業)に6000億円も出資するなど、対中傾斜を強める伊藤忠の元首脳ならでは、と感じさせる。

ビジネスで対中関係を強めるのは良い。ただ、その余り、日本の国益を阻害する発言を繰り返すとすれば、看過できない。







Last updated  2015.09.07 16:07:47
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2015.05.22
カテゴリ:政治・外交
9日間の欧州旅行に出かけた。その間、持参したノート・パソコンが故障したこともあって、ブログ執筆をお休みしていた。

ただ、ネット上のニュースやブログはiPadで読んでいた。中で宮崎正弘氏の「国際ニュース・早読み」が興味深かった。18日付けで「中東地図が激変している」と分析している。以下、抜粋、要約すると--。  

サウジアラビアが米国の依存度を急激に減らし、ロシアと中国へ異様に接近。中国はサウジにイランを射程にできる最新鋭ミサイルを供与した。一方でサウジは、イランを脅威としてパキスタンに資金供与し核開発をさせている。サウジはまた、シリアのアサド大統領を支援している。

欧米のシリア攻撃には不満を持ち、米国との間で寒風が吹いてきている。サウジは米ドル基軸一辺倒だったのに、人民元、ルーブル決済をも認める変わりようだ。

米国と親密だったイスラエルもオバマ政権との溝が広がっている。オバマ大統領はイスラエル擁護政策を弱め、今やイスラエルに敵対的でさえある。イスラエルはその分、ロシアや中国との関係を深めつつある。中国とイスラエル間には武器輸出で秘密協定が存在し、最新鋭ミサイル、戦車技術などを中国へ供与している。

他方、アラブの春はテロが頻発、リビアは無政府状態、エジプトもイスラム原理主義政権が生まれたりして大混乱、軍事政権が誕生した。イラクは親米政権どころか、反米シーア派が政権をおさえ、スンニ派を弾圧し、その結果「イスラム国」が台頭、やはり無政府状態だ。「イスラム国」の石油は中国へ流れている。米国と敵対するイランの石油の最大の買い手も中国だ。

<こうした動きをにらんで、トルコも変わった。NATOの一員として欧米に尽くしていたが、ユーロに加盟させてもらえず、シリアとイスラム国の跳梁によって百万の難民が押しかけたため、基幹産業の観光が総崩れとなった。ついにエルドアン大統領は親欧米路線を転換、イスラム国家へと回帰しつつある。その動きをロシアは見逃さない。すかさず対欧向けのパイプラインをトルコ経由とした……>

米オバマ政権の弱体化が招いた中東を震源とする国際社会の動乱、不安定化が広がっているのだ。米一極支配から多極化の進展である。準戦国時代になりつつあるとさえ言える。

無論アメリカ幕府の力は今も強いが、幕府だけを頼みにはできない時代である。だから、あちこちで密議が開かれ、合従連衡が活発化している。中国が主導する「アジアインフラ投資銀行(AIIB)」に英国、ドイツなど欧州主要国を含む57カ国の参加が決まったのも、米国の弱体化の産物だろう。今に米国も日本の頭越しにAIIBに参加し、米国頼みの日本はハシゴをはずされて、国際的に孤立する、といった見方も流れている。

動乱の国際社会を勝ち残るには、強国との同盟を大事にしつつも、究極的にはだれをも頼みとせず、多角的な連携、協力関係を結ぶ才覚、実行力が必要なのである。

戦国時代を駆け抜けたのは、そうしたしぶとい武将、「悪人」だった。その目で日本の安倍晋三首相を見ると、かなりの力量があると見ていいのではなかろうか。

宮崎氏は大竹慎一氏の対談「中国崩壊で日本はこうなる」(構成=加藤鉱氏、徳間書店)の中で、安倍首相をこう評価している。

<安倍首相はだんだんアメリカから離れていったことから、アメリカにとり四大悪人の一人になってしまった。四大悪人とはすべてナショナリストで、その面々とはロシアのプーチン(大統領)、トルコのエルドアン(同)、インドのモディ(首相)、そして日本の安倍首相である>


安倍首相は孤立しないすべを心得ている。2012年末に第2次安倍内閣を発足させて以来、50カ国以上を訪問し、歴代首相を圧倒している。各国で歓迎された。米国と距離を置いたからではない。米国議会ではスタンディング・オベーションを受けるほどに評価された。途上国などの歓迎は円借款や財政支援でバラマキ外交をしたからだ、との批判があるが、国家資金とは使いようである。

プーチン、エルドアン、モディという「三大悪人」がこぞって、安倍首相との会談を歓迎し、評価している。昔英国のサッチャー首相がロシアのゴルバチョフ大統領に会った後、「この男とは仕事ができる」と語ったという有名な話がある。仕事のできるリーダーは力のある相手を嗅ぎ分けるのだ。悪人は悪人を知る。しかり、悪人とは仕事ができ、国家と国民の安全と繁栄を維持、強化できる人間のことだ。

米国の議会で安倍首相がスタンディング・オベーションを受けたのも、その力量を評価されたからにほかならない。

むろん、そこでいい気になってはいけない。相手が失敗したり、動きが鈍くなれば、各国の首脳は平気で関係を切る。「この男とは、もはや仕事はできない」と。

安倍首相は21日、日本経済新聞社が東京で主催した国際交流会議「アジアの未来」の晩餐会で演説し、今後五年間で13兆円をADB(アジア開発銀行)と連携する形でアジアのインフラ建設に投じると表明した。

ドル換算で1100億ドル。中国主導のAIIBの資本金(500億ドル)の2倍以上だ。演説の中でAIIBに対抗する形で「質の高いインフラをアジアに広げていきたい」と述べ、「孤立化」の不安を払拭した。「安かろう悪かろうはもう要らない」と安値攻勢をかける中国のやりかたをも暗に批判している。

今のところ、日本の「悪人」の手法に手抜かりはないように見える。問題はそれを支える与党の政治家や役人、経済界、マスコミ、そして国民である。

いまだに、集団的自衛権の行使をすると「自衛隊員が危険な目にあうリスクが高まる」とか、「安保法制は危険だ」などと言っている向きが多い。民主国家では国民の支えがなければリーダーは存分に力を発揮できない。

もとより批判すべき点は多いに批判しなければならないが、戦国時代にはそれにふさわしいリーダーが必要であり、国民もリスクを引き受ける気概を持たねば、悪人は働けまい。

自衛隊員が危険な事態を覚悟しなければならないのは警察官や消防隊員と同様である。さらに大事なのはイザというとき、そうした自衛隊員や警察官、消防隊員を国民が側面、背後から支える態勢ができていなければならない。そういうと、キナ臭くなって怖くなる。だが、逆説的だが、国民にその気構えがある国の方が平和が維持される。スイスのように。






Last updated  2015.05.23 19:23:34
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2015.01.22
カテゴリ:政治・外交
2人の日本人が「イスラム国」の人質となり、2億ドルの身代金を要求されている問題で、多くの議論が交わされている。この中で、在英保育士でライターのブレイディみかこさんのブログ「英国が身代金を払わない理由」が興味深かった。


<わたしが住んでいる英国は、人権を重んずる欧州国にしては珍しく身代金を払わない国として有名である。それどころか、キャメロン首相は2014年1月に「テロ組織の身代金要求を断固と拒否する」決議案を国連の安全保障理事会に提出して採択を要求した>

多額の身代金支払いはテロ組織を拡大させ、さらなる誘拐、拉致を生み出し、より多くの人命を奪うことになるからだ。身代金を支払わないことにより人質が殺害されたとしても、未来の多数の犠牲と恐怖を断ち切るには、当面の少数の犠牲者はやむを得ないと考えているのだ。

ブレイディさんは、キャメロン首相の姿勢を多くの英国人は支持しているという。

<職場や往来で人と話していてこの話題になると「身代金を払って人命を守るべき」と断言する英国人は非常に少数派だということに気づく。
みんな判で押したように「とても難しい問題だ」と言ってから喋り始めるのだが、「身代金はテロ組織を拡大させ、もっと多くの人命を奪うことになる」「本気でテロと戦う気なら、各国が一致団結して身代金を払わないようにしなければ、テロ組織に資金援助しているのと同じ」と言う>

ただ、事はそれほど簡単ではない。キャメロン首相の決議案提出に対して国連の加盟国は全会一致で採択したものの、厳密にこの決議を守っているのは英国と米国だけだという。

<フランス、イタリア、スペイン、ドイツはこっそりテロ組織に金を流す経路を見つけて身代金を払っている>

それに、英国でも家族や雇用主が身代金を払って生還した拉致被害者がいるそうだ。

<英国政府も今のところ個人や企業が身代金を払うことは目を瞑っている。……(それに、たとえ身代金支払いを犯罪にして罰したとしても)支払い能力のある家族は払うだろう>

ここに、国家(共同体)と個人の分裂がある。建前と本音の分裂、矛盾と言ってもいい。


起こりうる将来の多数の国民の犠牲を抑止し、国益を守るには身代金要求には断固として応じないという姿勢を堅持しなければならない。それが国家、共同体が生き延びるための掟である。

しかし、タテマエではテロ組織の身代金要求には応ずるべきではないと主張しても、いざ自分の家族が誘拐されたら、全財産をかき集め、あらゆるルートを頼って身代金の支払いに応ずるだろう。


タテマエの陰でこっそり個人がテロ組織と人質返還交渉をするというホンネの動きがあるのはやむをえない、と思う。それが人情の自然だと思うだからだ。

 とはいえ、タテマエとホンネの使い分けはきわめて難しい。ホンネの交渉が頻繁になり、身代金額がつり上がり、公然の秘密となってはテロ組織への抑止力はなくなるからだ。タテマエはザルとなって、国家の根幹が揺らいでしまう。

 それに、身代金交渉ができるのは富裕層や大企業の社員だけという不満が国民の間に広がる恐れもある。それは法の前には平等、政府は等しく国民を守らねばならないとする国家の枠組みを崩す危険につながる。

 だから、富裕層でない場合も、政府は秘密裏に身代金交渉をするかも知れない。「そういう交渉はしないし、していない」と言いながら。今回も水面下でそういう交渉が行われているのかも知れない。あるいはそれが失敗して悲惨な結果になる?(とは想像したくないが)。

 国家の建前を堅持しつつ、水面下の秘密裏の身代金交渉。虚実皮膜の間を探る中に外交の技、知恵がある。






Last updated  2015.01.25 17:48:00
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2014.12.03
カテゴリ:政治・外交

昨日の続編。日本のODA(政府開発援助)について、外務省をはじめとする日本政府の対応については批判が少なくない。

気前良くばらまく割に、各国から感謝されることなく、国益から考えて非効率だ。中国に巨額の経済援助をして、感謝もされず、反日機運が高まり、軍事力の拡大に使われ、日本に脅威を与えている。外務省の無能ぶりにあきれる、といった批判だ。

私の中にもそう批判する気持ちがあるが、日本のODAにも良い点、成果は少なくない。その点は率直に認めるべきだ。昨日紹介した「日本人になりたいヨーロッパ人」(片野優、須貝典子著、宝島社刊)を読んで、そう思った。

例えば、セルビア。旧ユーゴ紛争の傷跡が残る首都ベオグラードは貧しいインフラ、交通事情のもと、お蔵入り寸前の中古のバス、市電があふれている。その中にさっそうと走る新品のバスが登場した。車体の横と後ろに「日本からの寄付」という文字とセルビアの国旗が描かれ、誰もが日本からの贈り物と知っている。セルビアでの評判は高い。

こうした援助物資は欧米からも贈られてくるが、セルビア人は言う。

<欧米諸国は「ギブ&テイク」の精神なので気が抜けないが、日本だけは「無償支援」で見返りを期待しないのが素晴らしい>

外務省の支援は、欧米のようなしたたかなギブ&テイクの精神がないので、感謝もされず、国益に貢献していない。そう批判され、私もそう思ってきた。

しかし、本当は「見返りを期待しない」精神の方が素晴らしい。しかし、そのことは日本人にしかわからない。だから、しっかりギブ&テイクを考えよと言ってきたが、実はそういう精神を持っている国民も多いということだ。

その証拠に東日本大震災が起こったとき、セルビア人は苦しい経済事情の中で「大好きな日本人のために」と小さな義捐金を積み上げ、送金額は2億円。小さな国なのに、なんと義捐金はヨーロッパで一番多かったという。

ボスニア・ヘルツェゴビナも同じだ。ボスニアの戦争で傷んだ国土再建のために、日本政府は日の丸がデザインされた赤いバスを寄付するなど、戦後復興支援に多大の支援金を拠出した。

ボスニア人はそのことを良く知っていて、現地に赴いた日本人は「日本ほど我々を支援してくれる国はない」と感謝されることが多いという。

本書の筆者の経験では目的地まで8時間もかかる満員のバスに乗ったとき、自分が日本人と知ると、座っていた若者が席を立って譲ってくれたという。長い道中なので何度か「交代しましょう」と言ったが、最後まで日本人の自分を立たせることはなかったという。

また、車を運転して田舎道でパンクし、困っていると、対向車線を走ってきた1台の車がピタリと路肩に止まった。3人の青年が降りてきて一言「日本人か?」と聞いた。「ハイ」と答えると、瞬く間にタイヤ交換を済ませ、お礼も受け取らずにさっそうと去って行った。

読んでいてODAの力、日本の先人の努力に感謝したい気持ちになってくる。世界は善意の応酬が生きているのだとも。

ただし、外務省はじめ日本政府は、日本の支援が具体的にその国の人々に知れ渡るよう相手政府に求めることは不可欠だろう。日本の支援内容が伝わらなければ、こうした感謝も親善交流も生まれない。中国のように、国民に日本の経済援助を教えないことが、反日感情をいたずらに助長させている。

かの国は反日政策のために意図的に日本の善意を知らせないようにしているのかも知れないが、くどいようでも、国民に伝えることを要求する努力は怠るべきではない。

そういう要求を「はしたない」と思うべきではない。伝えることで日本お善意がわかり、庶民レベルでの親善、友好の気持ちを育むからだ。

日本の援助の情報を衆知徹底しなければ、今後援助はしないと言うくらいでちょうどいい。






Last updated  2014.12.03 17:47:23
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2014.12.02
カテゴリ:政治・外交
 「日本人になりたいヨーロッパ人――ヨーロッパ27カ国から見た日本人」(片野優、須貝典子著、宝島社刊)という本がある。日本人を褒め称え、日本の文化や自然にあこがれているヨーロッパ人がいかに多いかを記し、その源流、歴史的背景を探ったものだ。

 日本人にとっては嬉しくも照れくさい著書で、リップサービスや外交辞令をそのまま書いた部分もあるかも知れない。だが、豊富なエピソードや史実がちりばめられており、誇張とは言えない。我々の祖祖父母の努力と誠意の賜物と感謝したい内容が少なくない。

 その一つにベルギーへの支援がある。第一次大戦下の1914年、ベルギーはドイツに攻め込まれた。

<ベルギーの苦しい戦況は連日日本でも報道され、ドイツと勇敢に戦うベルギーの国民を支援しようというキャンペーン運動にまで発展。義捐金といっしょに、日用品や薬品がベルギーに届けられた>

ベルギー人は大戦終了後もその恩を忘れず、1923年9月1日に関東大震災が勃発したとき、2日後の9月3日にその事実を知ると、電光石火の早業で翌々日に「日本人救済委員会」を立ち上げた。

このとき、第一次大戦の元兵士に向け、「ドイツ軍に攻め込まれ苦戦していた時、祖国を支援してくれた日本人のため、今こそその恩に報いよう」というメッセージを発信したという。

チャリティーコンサートやバザールなどが開催され、当時の金額で約7億円の義捐金が日本に贈られた。米、英に次ぐ3位で、小国ベルギーとしては桁外れだった。

「情けは人の為ならず」というが、見返りを求めない誠意ある支援が、後々に自分たちを助けてくれるということわざを絵に書いたようなエピソードである。

同様の話として、有名なトルコの支援があり、本書にも載っている。明治時代、来日したトルコの軍艦「エルトゥール号」が帰途、和歌山沖で嵐に遭遇し沈没したとき、地元の村人が全力を尽くして救助に向かい、69名を救った(死者・行方不明者は587名)。政府は生存者をトルコまで送り届けた。

これにトルコ人は深く感謝している。トルコの歴史的天敵であるロシアを日露戦争で日本が破ったこともあって、トルコは屈指の親日国。エルトゥール号の船員救助の話はトルコの教科書にまで載っている。

そのため、イラン・イラク戦争のとき、イラク在留の日本人が脱出する際、トルコは危険を顧みずに救援機をイラクに派遣、在留邦人を救出したのだ。

なぜ危険を顧みずに日本人を救ったのかというマスコミの質問に、当時のオザル大統領は「エルトゥール号事件の恩をトルコ人は忘れていない」と答えたという。

胸にじんと響く言葉である。国際親善、国際交流とはこういうものでなくてはならない、と改めて思う。

日本はこのトルコへの感謝もあって、1999年にトルコ北西部で発生した大地震では、世界に先駆けて国際緊急援助隊を派遣し、緊急物資・無償援助などを行なった。

それに対して、トルコは2011年3月11日の東日本大震災の時、福島原発の放射能汚染を恐れて、退避する外国人が多い中で、トルコは3週間という各国の救援隊の中でも屈指の長期間にわたり、宮城県などの被災地で活動を続けてくれた。

東日本大震災では台湾が200億円以上という破格の義捐金を贈ってくれた。
過去、台湾で災害が発生した際、日本は精一杯の支援をしてきた。それに対するお礼の意味があった。

恩に対してお互いに報いる。こうした国々との交流を大切にしたい。

これに対して、戦後、日本が様々な経済技術協力をしてきたのにもかかわらず、そのことに対しては一切、感謝せず、戦前戦中の恨みをいつまでも根にもって、親善の気持ちを表さない。そんな国も近隣にある。書かなくてもわかるだろうが、そういう国との付き合いは深入りせず、淡き交わりに徹する方が後々のためである。






Last updated  2014.12.03 07:29:04
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