よしながふみ 『きのう何食べた?』
きのう何食べた?(1) きのう何食べた?(2)友人の家のリビングにあったコミック。タイトルに聞き覚えがあって、貸してもらうことにしました。「コミックなんだけど、レシピ集みたいなの。だからキッチンのそばに置いてるのよ。」なるほど~!「…ゲイのカップルの話、なんだけどね」えっ!?「でも全然、大丈夫!」…読んでみますと。たしかに、友人の言うとおりでした。シロさんとケンジくん、という同居中のカップルの、毎日の食卓の話。同性愛のことに関しては、不安や期待を(?)裏切るようなあっさりとした描かれ方です。ストーリーの主役は、たくさんの料理なのです。それも、今日か明日、うちの食卓にものぼらせたくなるような家庭料理の数々!1巻には鮭とごぼうの炊き込みごはん/いわしの梅煮/たけのこ と がんも と こんにゃくの煮物/栗ごはん/トマトとツナのぶっかけそうめん/鶏肉のオーブン焼き/ナスとトマトと豚肉のピリ辛中華風煮込み/いちごジャムなど2巻には黒みつがけミルクかんてん/鮭のみそホイル焼き/セロリと牛肉のオイスターソースいため/グリーンアスパラのからしマヨあえ/しらたき入り肉じゃが/ほうれん草入りのラザニア/いんげんとちくわのサラダ/ぶり大根など登場します。描かれているのは、一つ一つの料理にまつわる、小さな思い出や、エピソード。そして、調理するシロさんの姿と、それを脳天気なまでに美味しそうに食べるケンジくんの笑顔。素晴らしいのは、シロさんが弁護士で40過ぎなのに太りもせずにイケメンで、ということばかりではなく、旬の素材を近所のスーパーで底値買いし、それを使い回して料理するところ。美味しい献立って、レシピ(と、ちょっとした腕)があれば作れるものだし、素材に凝ればいい味にもなろうというものです。でも、シロさんのやり方は、まるで普通の家庭人。スーパーでカゴを片手に、値札を睨みながらメニューを考えるわけです。しかも、料理を作りながら、<これをこうする間、あれをああして、その間にこっちを…>と手を動かす。この組み立て方がとても現実的で、しかも無駄がなくて見事~。使い残したセロリを冷蔵庫の中でダメにしてしまったときのシロさんの落ち込み方には、ふつうに台所を預かる人ならきっと共感を覚えるはず――たぶん私だけじゃないはず!そして、<好みのタイプじゃないんだけどな>なんて思いながらも、自分が料理に没頭している間、掃除をしたり洗濯物をたたんだり、そんな日常の家事を自然にこなしてくれる相手に安らぎを覚えるのも、同じはず。ゲイだということが繰り返して書かれているのに、ものすごく親しみや近さを感じてしまうのです。出来上がる料理の数々が食欲をそそるのはもちろんですが、調理や家事の手際に、とても触発されるものがあります。読み始めてから、「もう一品つくろう」と思うことが、億劫でなくなりました。「おいしい」と言ってもらえたり、ただ、話を聞いてもらうことも、今までに増して大切だと思うようになりました。4巻まで出ているのね~。買ってくれるように友人を唆そう♪